世界の音楽メディア市場動向
2012/01/05 07:00
昨年末に【世界主要国のテレビ視聴時間】で解説したが、イギリスの情報通信庁は2011年12月14日に【レポートページ】内にて、世界の通信業界やメディアの動向を整理したレポート【International Communications Market Report 2011(PDF)】を発表した。ヨーロッパ、中でもイギリス中心の内容ではあるが、有意義なデータが盛り込まれており、注目すべき内容といえる。今回はその中から「音楽メディア市場の動向」について見て行くことにする。
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「音楽メディア市場」という表現を用いているが、具体的には「CDやダウンロード販売など、記録された音楽を販売する市場」のことを指す。日本の場合は例えば【不景気にはデジタル化も勝てず…音楽CDなどの売れ行きと有料音楽配信の売上(2010年版)】にある通り、デジタルのシェアが増加する一方、販売・売上全体は縮小傾向にある。不景気なのと単価の減退、そして「音楽」そのものの取得スタイルが変化を遂げているのが原因。
↑ 音楽ソフト・有料音楽配信の売上推移(1990年-)(再録)
デジタルへの移行具合は国それぞれだが、日本は世界全体から見れば早くもなく遅くも無く、中間くらいの立ち位置にあることが分かる。主要国ではまだ1ケタ台の国もあれば、アメリカのようにデジタル・アナログがほぼ均衡、さらには韓国のようにデジタルがアナログを追い越した国すら存在する(1月5日修正)。
↑ 音楽メディア市場動向(2010年)
↑ 音楽メディア小売市場規模(単位:億ポンド)
先日の【ネット広告がテレビを抜いた国も…主要国のメディア別広告費構成率】での広告費同様、アメリカ、そして日本の市場規模がいかに巨大であるかが一目瞭然で確認(ユーロ圏の場合は一部為替によるところもあるが)(※全世界規模では151.2億ポンドです)。
またデジタル・物理メディア(アナログ)比のグラフを見ると、特に韓国のデジタルシェアが大きいのが目立つ。レポートではこの傾向について「デジタル音楽系の著作権に関するルールが寄与している」と説明している。そして韓国に限らず世界各国、特に東南アジア諸国ではアナログからデジタルへの市場シェア移行が著しいものの、日本の情勢同様に「デジタルの成長分以上にアナログが減退し、市場規模全体としては縮小傾向にある」ことにも触れている。
その一端が分かるのが次のデータ。2010年における市場変移。
↑ 音楽メディア市場変移前年比(2010年)
主要国ではプラスなのは3か国のみ。あとはすべてマイナス。市場規模を考慮すれば、アメリカや日本のマイナスは世界市場全体に対して大きなインパクトを与えているのが把握できるというものだ。
日本の音楽市場動向については先の記事の通り、日本レコード協会から毎年4月に発表されるレポート「日本のレコード産業」を元に情勢を確認している。デジタルのシェア拡大、全体的な市場規模の縮小が顕著に見えているが、その動きは日本だけのものでは無いことが分かる。2012年4月に発表される2011年分のデータがどのような結果を見せるのか、今から気になるところだ。
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