幼稚園か保育園か…小学校に上がる前の子供の状況
2011/12/29 06:34
2011年12月21日に厚生労働省が発表した2009年度版の「全国家庭児童調査結果の概要」は、全国の家庭内児童やその世帯の状況を把握し、児童福祉行政の推進向けの資料取得のため、5年周期で行われているものである。現時点では1999年度以降今回発表分もあわせて、3回分の記録を取得できる。今回はその中から、「未就学児童(小学校に上がる前の子供)の状況」について見ていくことにする(【発表リリース】)。
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調査要件については先の2011年12月25日の記事【父の単身赴任増加中? 子供がいる世帯の父母同居状況】にて説明済み。そちらで確認してほしい。
子供が乳児から幼児に成長するにつれ、義務教育の小学校に上がる前においても、保育園や幼稚園に通わせる世帯は多い。子供には集団社会における経験を積ませ常識を覚えさせたり、同世代の子供達とのコミュニケーションの場の提供という点でプラスとなり、保護者は働きに出たり家事に専念するなどの時間的余裕を得られるからだ。
まずは調査回毎の状況推移だが、図にもあるように保育所・幼稚園の利用比率が高まり、その他(事業所内保育施設、認可外保育施設、親、ベビーシッター、親類、知り合いなど)は減少する傾向にある。任せられる親族や知人の減少、保育施設を有する事業所での就労機会の減少などが起因と考えられる。
↑ 未就学児童の状況の構成変移
直近では1/3が保育所、3割が幼稚園、残りはその他多種多彩な場所へ預けられたり世話を受けていることになる。
これを直近の2009年分について、児童の年齢別で仕切り直したのが次のグラフ。
↑ 未就学児童の状況の構成変移(2009年、児童年齢別)
乳児の時点ではほとんどすべてが父母、祖父母などの肉親が含まれる「その他」。1歳あたりから保育所の利用が増えるが、幼稚園入園の法定年齢である3歳がピークでその後は漸減。「その他」を浸食する形で幼稚園利用者が増え、6歳の時点で保育所4割足らず・幼稚園6割強という構図が出来上がる。
別調査(厚生労働省の「国民生活基礎調査の概要」。当然調査母体は異なる)ではもう少し細かい区分に仕切られており(【仕事を持ち乳幼児がいる母親、日中は誰に育児を任せる? (2010年分反映版)】)、それと比較すると「幼稚園と保育所の使い分け」「親族による育児」の状況が一層よく理解できるというものだ。
↑ 末子の乳幼児の年齢別にみた、「仕事あり」の母の世帯における日中の保育の状況の割合(複数回答)(再録)
厚生労働省の「出生動向基本調査」など各種調査結果でも、子供を持てない・持たない事由(≒少子化の遠因)として、(特に乳幼児期の)育児問題がクローズアップされている。以前のように三世代世帯が当たり前で、母親の就労も比率的に低いのなら問題視されなかった話で、母親の就労そのものの原因や、幼稚園・保育園・認可外保育施設、そして待機児童の話と合わせ、状況は複雑に絡み合っている。
保育所・幼稚園の利用が増えてきたのは上記にあるように、任せられる親族や知人の減少(コミュニティの疎遠化)、保育施設を有する事業所での就労機会の減少(企業の経費削減圧力、非正規雇用の増大)などが起因と考えられる。
乳幼児の保育はどのような状態がベストで、それに向けてどのようなかじ取りをすべきなのか。周辺環境の変化を見極めた上で、専門家、政策担当、そして現場の人たち、そしてもちろん当事者自身が意見を通わせて模索していかねばなるまい。
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