親の目と子供の目、同じものでも…な広告
2011/12/06 05:27


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↑ 戸棚の薬品類。視点を変えると違ったものに見えてくる
これはオランダで行われた路上広告。オランダでは毎年7000件以上もの家庭用化学製品(洗剤や石けん、消臭スプレーなど)の誤飲事故が発生し、その多くは5歳以下の乳幼児によるもの。そこで同国の消費者安全協会(The Consumer Safety Institute)は、子供を持つ親に向けて啓蒙を図るため、今広告を実施することになった。
路上の立て看板に描かれているのは、一見すると単なる家庭用薬品の集まり(左側)。背景部分を見るに、洗面所の下の戸棚内の情景だろう。各種洗剤、石けん、防虫剤のようなスプレーも見える。

そして看板下のキャッチコピーには「子供には(あなたとは)違ったように見える」と描いている。要は「あなたがごく普通に使って片づけている洗剤や石けんは、子供の視線からはこのように素敵なおもちゃやお菓子に見えてしまうものなのです。隠れて遊んでいるうちに誤飲してしまうかもしれません。手の届かないように置くなど、注意して下さいね」と警告を発している次第。
パッと見では単なる家庭内の戸棚を再現しただけの、ごく平凡な啓蒙広告に見る。しかし立ち位置を変えて「子供の視線」版を見るにつけ、「なるほど、子供からはこのように見えるのね」と実体験をし、キャッチコピーの重さが胸に突き刺さる。そして人によっては「そういえば……大丈夫かしら」と自宅への歩みを早める人も出てくるに違いない。「レンチキュラー」の仕組みを上手く使った、非常に優れた広告といえよう。
やや余談になるが、今件の啓蒙内容は日本でも有効だと思われる。厚生労働省が発表している現時点で最新のデータ【平成21年度 家庭用品等に係る健康被害病院モニター報告について】によれば、2009年度における家庭用品などの吸引事故などの述べ報告件数は次の通り。殺虫剤がトップで、次に洗浄剤。芳香剤、漂白剤など、今件の広告対象として挙げられているものがずらりと並ぶ(タバコや電池、硬貨などは別口(誤飲)のため、今件には含まれていないことに注意。単純な小児の誤飲事故ではタバコがトップ)。

↑ 2009年度における家庭用品などの吸引事故など述べ報告件数(上位10品目、日本中毒情報センターからの提供事例)
また、世代別に見ると圧倒的に0-9歳児の数が多い。

↑ 2009年度における家庭用品などの吸引事故など述べ報告件数(世代別、日本中毒情報センターからの提供事例)
日本でも同様の問題が発生しうる、そして実際相当数起きていることを考えれば、今件と同じような手法の広告展開もアリかもしれない。
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