独身者が想う「結婚の利点」って何だろう(最新)
2016/10/14 05:16
【日本の「恋愛結婚」「見合い結婚」の推移】を皮切りに、国立社会保障・人口問題研究所が2016年9月15日に発表した、日本国の結婚や夫婦の出生力の動向などを長期的に調査・計量している「出生動向基本調査」の最新版となる「第15回出生動向基本調査」を基に、結婚に関する考え方や、さらにはそれに連なる少子化との関連性についてグラフによる視覚化を行い、世情動向の確認をしている。今回は公開値の中から「未婚者が”結婚することの利点”と考えている事柄」の確認をしていくことにする(発表リリース:【第15回出生動向基本調査(結婚と出産に関する全国調査)】)。
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今調査に関する調査対象母集団や集計様式に関しては、出生動向基本調査に関わる先行記事の【日本の「恋愛結婚」「見合い結婚」の推移】を参照のこと。
年齢によって多少の差異はあれど、最新の調査結果では独身者の8-9割の人が(タイミング・意思の強さの度合いを別にすれば)結婚をしたいと考えている。
↑ 未婚男性の結婚意思(結婚意欲詳細版、2015年)(再録)
↑ 未婚女性の結婚意思(結婚意欲詳細版、2015年)(再録)
それでは結婚することのメリットとして、独身諸氏はどのような事柄を見出しているだろうか。想定しうる選択肢を挙げ、最大で2つまで結婚の利点として合致するものを選択してもらった結果が次のグラフ。グラフ内の具体的数字は直近年調査となる2015年分のものである。なお項目序列は男性の直近分の値をベースとし、男女で縦軸の区切りを同じとして比較をしやすいようにしている。
↑ 調査別にみた、結婚することの利点(未婚者、上位二つまで選択)(男性)
↑ 調査別にみた、結婚することの利点(未婚者、上位二つまで選択)(女性)
まず男女ともに「子供や家族」「精神的安らぎ」「愛情を感じている相手と暮らせる」など、内面的事柄が上位を占めているのが分かる。外面的な話よりもまずは自分自身の気持ち・安らぎの面で、大きなメリットと感じていることになる。
逆に外面的要素は本人自身に対する項目よりも低めで、特に女性は「親や周囲の期待」以外は誤差の範囲内でしかないのが確認できる。そして「外面的要素」は「親や周囲の期待」以外、近年ますます低下する動きにある。
内面的要素のうち「子供や家族を持てる」は増加傾向を続けており、女性は直近ではついに5割に迫る形となった。「家族を持つこと」への大切さ・喜びを価値の高いものとして認識し、それを得るための結婚もまた魅力あるものとして考える人が増えているのだろう。
他に気になる動向をいくつか、箇条書きで記しておく。
・女性は「経済的余裕」を結婚の利点としてとらえる動きが出ている。特に直近分では大きな上昇を見せ、2割を超えた。
・「親や周囲の期待」は前世紀まで減少していたが、今世紀に入ってから再び増加傾向に。
・「精神的安らぎ」は男女ともに減少の傾向。
・「社会的信用や対等な関係」は男性では今世紀に入ってから横ばいに推移しているが、女性はわずかながら増加の動き。
男性はほとんど動きが無い(直近年では有意に上げているが)のにも関わらず、女性は「経済的余裕が持てる」の項目が確実に増加している。この動きは報告書にも特記事項として「女性では「経済的に余裕がもてる」が増加傾向にあり、今回初めて2割を超えた」と記載されるほど。ソロバン勘定が上手になりつつあるとの判断もできるし、結婚に対する価値観の変化の表れの一端であるとの認識も可能となる。「配偶者との同居」を長所として挙げる人の減少スピートは女性の方が大きいことから、女性の結婚観がドライに傾いている、との見向きもできよう。
男女とも自分自身のメリットに重点を置き、周囲の人の意見にはあまり耳を貸さない部分は、【男性66%・女性74%が「個人の自由だから結婚なんてしてもしなくても良い」】にもある「個人の自由だから結婚はしてもしなくても良い」の裏返しともいえる。つまり「結婚のする・しないは自分の自由意思で決める。周囲のことは(あまり)気にしない」。ただし最近では周囲の目(主に期待の目)も多少ながらも気にし始めているようである。
また、男性は元々「(自分の)精神的安らぎが得られる」事を一義的に考えていたのに、昨今では「(自分自身以外の人間である)子供や家族を持てる」を結婚の長所と考える人が増加し、順位が逆転してしまっている。この動きは男性の結婚観が「自分中心」から、「自分と、自分を含むもっとも身近な人たち中心」に変わりつつあると読めよう。
一方女性は「子供や家族を持てる」との家族形成に強い憧れを抱くと同時に、「経済的余裕」への魅力も増すなど、人間関係・金銭関係双方を求める動きが強くなりつつある。全体的な回答率は女性の方が上なことも合わせて考えると、「独身者の結婚への憧れは女性の方が強く、そして心理的・経済的双方の充足をも考えた、現実的な結婚観を抱いていており、昨今ではその傾向が強まりを見せている」と解釈できるのだろう。
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