被災三県の勤務状況、85%は前職維持・増える残業減る給与、高まる事業存続への不安

2011/11/21 07:09

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仕事と時間連合は2011年11月7日、東日本大地震・震災における被災3県(岩手県・宮城県・福島県)での意識調査結果を発表した。それによると調査母体では、震災前同様の職についている人は84.8%であることが分かった。派遣社員や契約社員、アルバイトやパートはやや低めの値で、震災前と別の勤務先についている人が多めとなっている。また震災前後で同じ勤務先に働いている人においては、仕事量が増える一方で、給与が減る傾向が見受けられる。勤務先の事業存続への不安も高まっており、労働環境が悪化している状況が確認できる(【発表リリース、PDF】)。



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今調査は2011年10月12日から17日にかけて携帯電話を使ったインターネット経由で、東日本大地震・震災前に有職者(パート・アルバイト含む)の立場にあり、岩手県・宮城県・福島県に居住していた20-60代の男女に対して行われたもので、有効回答数は3000人。男女比は1680対1320。

回答者に対して現職は震災前と同じか否か(つまり転職や失業、離職はしていないか)を尋ねたところ、84.8%は同じ勤務先に勤めていると回答した。

↑ 現在の勤務先・職業(単一回答、一部)
↑ 現在の勤務先・職業(単一回答、一部)

全般的には正社員など手堅い・法的な立場保証の強い職種にいる人ほど、職を維持している傾向がある。逆に契約・派遣社員やアルバイト・パートは転職した傾向が強く、さらには無職の割合も高い。

勤務先を維持できても、勤務状況に大きな変化が生じているのが把握できるのが次のグラフ。震災前と同じ勤務先で働いている人に限定し、震災前後の状況を尋ねたもの。

↑ 震災前後の状況変化(震災前と同じ勤務先で働いている人限定)
↑ 震災前後の状況変化(震災前と同じ勤務先で働いている人限定)

被災地域での調査なだけに、震災関連の動きは顕著。節電・防災意識は軒並み高い値を示し、防災グッズの備えもかなり充実している。一方、さまざまな障壁・障害で、いまだに直接の震災による被害からの復旧(ここでは状況整理と最低限の再稼働を意味する。「復興」の前の段階)すらままならぬ場も多く、同地域での作業量は全般的に増しているのが分かる。当然個々の負担も増えるため、残業なども増加していく。

ざっとまとめると、震災前後で同じ勤務先にて働いている人達の仕事周りの状況は、冒頭にもある通り「仕事量が増え」「給与が減り」「事業存続への不安が増える」など、状態の悪化が見て取れる。復旧作業のさなかにあるのならば作業量の増加は仕方ない面もあるが、同時に給与減退、さらには事業存続への不安が積み増しされており、いわゆる「震災特需」的なもの(被災地の復旧・復興を加速化させる源の一つ)が生じにくい・発生していない状態にあることが分かる。

このような状況下の場合、被災地「外」からのリソースを大量に投入すると同時に、明確な見通しが立つ健全な指針(計画そのものの促進意欲と、現場での「夢」による士気向上が期待できる)と、責任を伴う強力な指導力が必要になる。しかし現状では用意されたリソースは十分とはいえず、それらですら有効活用はあまり成されていない。「知らなかったから」「経験が無いから」で済むような事態では無いことは、今件の調査結果からも明らかなのだが。



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