書籍やコミックの読書量動向
2011/11/17 12:10
日本書籍出版協会が総務省の「新ICT利活用サービス創出支援事業(電子出版の環境整備)」に提出して採択され、公知されている【「次世代書誌情報の共通化に向けた環境整備」プロジェクト】の公開情報には、出版市場の現状を探る多様なデータや調査結果が盛り込まれている。今回はその中から、書籍やコミックの読書量について調べた項目を抽出し、眺めてみることにした。
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今調査は2011年1月24日-28日までインターネット経由による事前調査(本調査の調査母体を「読者をする人」のみとするための対象者スクリーニング)、31日-2月2日まで本調査が行われ、事前調査の有効回答数は5480人・本調査での有効回答数は2000人。本調査の男女比は1対1、年齢階層比は10代と20代・30代・40代・50代・60歳以上で均等割り当て。
まずは「書籍」を読む量だが、これは事前調査のデータが残っているため、そちらを元にグラフを生成する。これによると「書籍を一か月あたり1冊も読まない人」は24.6%と1/4近くに達し、1冊未満が22.3%。合わせると半数近くが「書籍をまったく読まないか、読んでも月1冊未満」ということになる。
↑ 一か月の読書量(書籍(コミック、学校の教科書や雑誌は除く))
今項目ではコミックや学校の教科書、雑誌などを除いている。本を買う事・手に取る事はあってもそれらはコミックや雑誌ばかりで、「書籍」を買う習慣がほとんど無い人も多いだろう。一方で読書が好きな人は積極的に書籍も買う事になるので、ある程度両極端な結果が出るのも当然の話。ちなみに加重平均で算出すると、大体1.6冊/月という形になる。また、世代別・性別の差異はほとんどなく、どの世代・性別でも大体この比率を維持している。
次にコミック。こちらは本調査、つまり「月に1冊でも読書をする人」限定としたもの。ただしその「読書」の対象がコミックとは限らないため、当然「コミックの」「読書」量が月にゼロという事例は十分ありうる。
↑ 一か月の読書量(コミック(書籍、学校の教科書や雑誌は除く))
中には月13冊以上というハードなコミック読者もいるが、これはあくまでも「読む」であり、「購読」「購入して読む」では無い事に注意してほしい(設問も「読む」とだけある)。一方で調査母体が幅広い年齢層に渡っていることからか「読まない」という回答層が多く、半数近くに達してる。読む人も大勢は3冊/月くらいまでで、それ以上は合わせて1割前後。男性より女性方がコミック読書数は少ない感がある。
これを世代別に仕切り直して集計すると、明らかに「若年層のコミック好み」「壮齢層のコミック離れ」が見て取れる。
↑ 一か月の読書量(コミック(書籍、学校の教科書や雑誌は除く))(世代別)
趣味趣向は人それぞれだが、少数でも60歳以上の世代で月13冊以上のコミックを読む人がいる(同世代内で0.5%)のは少々驚き。しかし少数であることに違いは無く、10-20代では1/4にも満たない「コミックを読まない層」が、60歳以上になると3/4を超えているのが現実。趣味趣向に合う作品が無い、周囲の目を気にしてしまう、「大人はコミックを読まないもの」という固定概念に縛られているのが要因だろう。
もっとも世代区分を良く見ると、30-40代では「読まない層」率に差異はほとんど無く、50代以降は急激に増加する動きを見せている。40代-50代の間に、コミックに対する姿勢の「壁」「ハードル」が出来ている可能性はある。
最後に直上のグラフを元に加重平均計算を行い、各性別・各世代の平均コミック読書数を算出したものが次のグラフ。「読まない」人も計算に含めていることを念頭に、各値を確認して欲しい。
↑ 一か月の読書量(コミック(書籍、学校の教科書や雑誌は除く))(平均値)
やはり若年層のコミック購読意欲は旺盛。全体平均の2倍近い値に目を通していることになる。
今件はあくまでも「紙媒体の本」を対象としており、電子書籍・電子雑誌は含まれていない。また、特に若年層がコミックと共に目を通す機会が多いであろう雑誌についても、今調査結果では調査項目に挙げられておらず、実態を知ることはかなわない。
それでも少なくとも「書籍は読まないか、ほとんど読まない人が約半数」「毎月5冊以上書籍を読む人も1割強」「コミックは(何らかの読書をする人の中では)平均1.5冊/月」「女性より男性、壮齢者より若年層がコミックを多く読む。最大5倍以上の差異が生じる」などの傾向がつかみとれよう。
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