アメリカの子供間で生じるデジタルギャップ

2011/11/06 19:30

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携帯電話を使う子供子供やその世帯の生活改善を目指すため、メディアや技術分野における信頼できる教育や情報などを提供している非営利団体【Common Sense Media】は2011年10月25日、アメリカの現在の子供におけるデジタルメディアを中心としたメディアとの関わり合いに関する調査報告書【Zero to Eight: Children's Media Use in America(アメリカにおける0-8歳児のメディア利用状況)】を発表した。そこからは誕生時から多様なメディアに囲まれて成長している子供の実情を、かいま見ることができる。今回はその中から、子供の基本的なデジタルツールとの接触状況や、世帯収入で生じる差異にスポットライトを当てることにする。



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今調査はアメリカ国内に住む0-8歳児の子供を持つ親1384人に対して、2011年5月27日から6月15日にかけて行われたもので、アフリカ系・ヒスパニック系の親子も調査対象に含んでいる。調査方式はインターネットによるものだが、調査母体対象となる世帯はランダムで選ばれており、その世帯がネット環境を有していなかった場合、回答用ツールとしてノートパソコンとアクセス用のダイヤルアップによるインターネット回線が貸与されている(パソコン周りの設問の際には、この貸与機器は考慮外で回答する)。調査の文面は英語及びスペイン語の両方で提供されている。また「デジタルメディア」とはビデオゲーム、パソコン、携帯電話、携帯ゲーム機、iPod、iPadなどのモバイル機を指し示している。

さてまずは全般的な子供達のパソコン(デスクトップやノートパソコン。スマートフォンやタブレット機は該当せず)・新タイプのモバイル端末(スマートフォンやiPod(動画再生機能付き)、iPadやその類。一般携帯電話は含まず)の利用状況だが、次の通りとなっている。

↑ 5-8歳時におけるパソコンの利用率(アメリカ、5-8歳児)
↑ 5-8歳時におけるパソコンの利用率(アメリカ、5-8歳児)

↑ 新タイプのモバイル端末でゲームをしたり動画を見るなどの経験あり(アメリカ、0-8歳児)
↑ 新タイプのモバイル端末でゲームをしたり動画を見るなどの経験あり(アメリカ、0-8歳児)

5-8歳児の2/3以上が「週一以上でパソコンを利用率する」、2割強が「毎日パソコンを利用する」など、一昔前ならあり得ないような数字が並ぶ。また、以前【新世代の子供達...iPadを楽しむ2歳の男の子】などでも触れたが、生まれた時からデジタルツールに囲まれている子供達は、それが当たり前という認識で育っており、4歳までの時点で4割近くがゲームや動画視聴の経験を有している。

一方デジタル系アイテムは書籍や文房具などと比べて購入・利用コストが高くなる。当然世帯収入による「デジタルギャップ」の発生が予想される。今調査でもそれを裏付けるデータがいくつか出ている。

例えば世帯のパソコン保有率。自宅に無ければ子供がパソコンに触れる機会はかなり低くなる(図書館や学校でその機会があれば良いが、保有世帯と比べて機会・時間は少なくなる)。年収7.5万ドル以上の世帯は9割を超えているのに対し、3万ドル未満では5割を切っている。単純計算で、2倍近い機会の差が生まれることになる。

↑ 自宅にパソコンやノートパソコンがあるか(アメリカ、0-8歳児がいる世帯)
↑ 自宅にパソコンやノートパソコンがあるか(アメリカ、0-8歳児がいる世帯)

当然各種モバイル端末の保有率も年収によって差が出る。価格が高額なタブレット機では差異は極めて大きく、年収区分差が8倍ほどに達している。

↑ 自宅にモバイル端末があるか(アメリカ、0-8歳児がいる世帯)
↑ 自宅にモバイル端末があるか(アメリカ、0-8歳児がいる世帯)

個人が携帯して使うモバイル機は自前の所有で無いと使う機会は得られないため、物理的にハードが無ければ、利用率がそのまま保有率にも反映されてしまう。保護者によるモバイル端末での「子供向けの」アプリダウンロード率は3倍強、子供自身のゲーム系での利用は2.5倍もの差が、年収区分差として生じている。

↑ モバイル端末と子供の関係(アメリカ、0-8歳児がいる世帯)
↑ モバイル端末と子供の関係(アメリカ、0-8歳児がいる世帯)

環境整備の費用的ハードルが高くなることで、メディア接触に関して子供の頃から大きな違いが生じてしまう。学校や公共機関で少しでも補完出来れば良いのだが、子供の好奇心を充足させるような使い方は、そのような場所ではあまり好まれていないのが実情。

デジタルメディアへの「慣れ」が社会生活において欠かせない昨今、そして将来のことを考えると、この格差が社会問題化するのは明らか。いかに拡大を防ぐか、さまざまな対策が求められよう。



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