「本震」から半年、緊急時のマスメディアへの信頼性はどのように変化したか
2011/11/02 12:10
博報堂DYメディアパートナーズ メディア環境研究所は2011年10月31日、震災の影響による生活者のメディア接触状況変化に関する調査結果を発表した。それによると調査母体においては、東日本大地震・震災(以後「本震」「震災」と表記)以降、本震直後と比べて「大規模災害発生時のマスメディアの情報への信頼性」が低下する傾向が確認された。また真偽の分からない情報に対し、自ら積極的に関連する情報にアクセスする人が増加する傾向にあることが分かった。本震直後は3割強だった積極調査派が、約半年経過した9月時点では5割近くまで増加している(【発表リリース】)。
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今調査は2011年3月25日-29日と同年9月13日-16日にかけて、首都圏在住者を対象にインターネット経由で15-69歳の男女に対して行われたもので、有効回答数は前者が913人・後者が400人。集計結果には2010年3月31日時点での該当エリア内の人口構成比に基づき、ウェイトバックが行われている。
調査概要としては「本震後半年が経過し、メディアの利用状況は本震前の通常スタイルにほぼ戻りつつある」「一方で、通常の経年変化も混じっているが、本震をきっかけに変化スピードが加速をつけた可能性のあるメディアも確認できる」などが挙げられる。ただし「本震からの環境復帰による回復」「通常の状況変化に伴う変移」「本震のインパクトを起因とする変化」のいずれの要素によるものか(あるいは各要素の影響比率)までは断定できていない。
さて今調査では、本震直後と、それから半年が経過した9月時点での、メディア・情報との接し方に対する姿勢についても質問している。一つは「大規模災害発生時にはマスメディアの情報が信頼できるか否か」、もう一つは「(災害も含め全般的に)真偽の分からない情報に関して、自ら積極的に関連情報にアクセス(して確認)するか否か」である。
↑ 大規模災害発生時にはマスメディアの情報が信頼できる
↑ 真偽の分からない情報に関しては自ら積極的に関連する情報にアクセスした
まず「大規模災害発生時にはマスメディアの情報が信頼できる」だが、本震直後には6割以上の人が「信頼できる」とし、3割強が「どちらともいえない(懐疑派)」。否定派は6.4%に過ぎなかった。半年経過した9月の時点ではほぼ10ポイント減少したものの、それでもまだ過半数の人は信頼を寄せている。一方で否定派は9.6%と3.2%の増加に留まり、多くの人が「信頼派から懐疑派に移行した」ことが分かる。
今調査がインターネット経由で行われたことを考えれば、社会全般ではもう少し信頼派の方が上乗せされることが予想できる。しかしそれを差し引いても、懐疑派の増加は注目に値する。
もう一つ、災害周りに限らず一般的に、真偽が分からない情報については自分から確かめようとするか否かについて。こちらは本震直後の時点で4割近い人が「調べる」としていたが、半年経過した9月の時点では半数近くにまで増加している。「どちらともいえない」派の割合に変化はほとんど無く、否定派が肯定派の増加分とほぼ同じ割合で減っていることから、全体的な流れとして「疑問に思ったことは自ら情報の真偽を確かめよう」とする風潮が高まりを見せていることが推測される。
「マスメディアの信頼性」はメディアそのものの構造としてよりは、その関係者(≒メディアの重要構成要素)の資質によるところが大きい。資質が劣化し、生成物の出来映えが悪くなったと視聴者が判断すれば、必然的にそこから離れ、あるいは真偽を確かめる行動に出る人も増える。もちろん「信頼できないかもしれないが、自分で調べるのは面倒だ」とする人も多くいる(特に4マスに頼り切る人に、その傾向は大きい)。
とはいえ、その内容が視聴者に悪影響を及ぼすものである場合や、自ら調べるツールのハードルが下がれば、必然的に「疑いの目を向け、自分で確認する」人は増加していくことになる。今回の二つの設問の回答傾向の流れは、これを象徴する一つの例といえよう。
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