空き家数の移り変わり(最新)
2019/09/05 05:05
昨今話題を集めている住宅関連の問題の一つに挙げられるのが「空き家」。この「空き家」問題については先日、「住宅・土地統計調査」の速報集計結果を基に考察を行った。今回はそれとは別の視点で、前回の「住宅・土地統計調査」の公開時(2013年分データ)に行った検証を継続する形で、もう少し詳しく各種動向を眺めていくことにする(【発表ページ:平成30年住宅・土地統計調査】)。
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今調査の調査要項は先行掲載した記事【住宅の空き家率は13.6%で過去最高に】を参考のこと。まずは直近2018年時点も含めた経年における、住宅の「居住世帯がいる・いない別の構成比」。直近では住宅全体の8割台は居住者あり。残りの1割強が何らかの形で居住世帯が無い状態。40年の間に居住世帯が無い住宅の比率は6%ポイント増加している。
↑ 居住世帯の有無別住宅数比率
2018年では0.3%が確認できる「一時現在者のみ」とは、同調査の「用語の解説」によると「昼間だけ使用しているとか、何人かの人が交代で寝泊まりしているなど、そこに『ふだん』居住している者が一人もいない住宅」のことを意味する。世帯が日常生活用に住まう場所としては使用していないことになる。そして2018年では空き家が13.6%。建築中が0.1%。
元資料では1963年以降についてデータが収録されているが、空き家の項目は未調査部分が多く、ある程度まとまった値が掲載されているのは1978年以降。そこで上記では1978年以降について、居住世帯のあるなし別で比率動向を記したわけだが、次に空き家そのものの細分種類別に「戸数」そして「住宅全体に占める割合」をグラフ化し、動向を確認する。
↑ 空き家数(1978-1998年の賃貸用には売却用も含む、目的別、万戸)
↑ 空き家数(1978-1998年の賃貸用には売却用も含む、目的別、全住宅戸数比)
「二次的住宅」とは平面の住宅では無く、「別荘」や「残業などでの寝泊まりだけの住宅」を意味する。また「その他」は多様な事例(世帯主が転勤や入院で長期間不在の場合、建て替えのために取り壊す予定の住宅、建て壊し・撤去費用が捻出できずに放置されている事例や、税金対策のために放置されている住宅、さらには区分が困難な事例)を合わせたもの。
目的別に確認すると、「二次的」「売却用」空き家は横ばいから漸減にかじ取りをしているが「賃貸用」は漸増、そして「その他」が急カーブを描いて増加している。空き家の全体としての数はほぼ一定数・一定比率で増加を続けているが、昨今の上昇ぶりは「その他」の増加が大きく貢献していることが分かる。
地域別の詳細データを確認すると(グラフ化は省略)、大都市圏よりも地方圏の方が全住宅に占める空き家率が高い。例えば単純な空き家率では山梨県がトップの21.3%、次いで和歌山県が20.3%、長野県が19.5%を示している。
そしてこの「その他」の空き家上昇の理由であるが、先行記事で解説した通り、税制上の問題から半ばやむなく放棄されている廃墟的空き家の増加によるところが大きい。持ち主としては何らかの対応(例えば解体して更地化、新築住宅への建て替え)をしたいのはやまやまだが、経費のねん出ができず、また更地にすると固定資産税が跳ね上がるので、結局そのまま放置するしかないといった八方ふさがり状態によるものである。
無論防犯・防災上好ましい状態とはいえず、税制上、社会通念的にも健全な状態とは言い難いため、適正化を促す法案が立案され、成立した(空家等対策の推進に関する特別措置法)。しかしながらこの法に基づいた行政の対応も、状況には対応しきれていないのが現状のようだ。
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