投資から貯蓄へ…二人以上世帯の貯蓄種類の変化(最新)
2021/09/06 03:19
総務省統計局は2021年5月18日までに【2019年全国家計構造調査】の主要調査結果を発表した。二人以上の世帯(住居や生計をともにしている二人以上の集まり)の日常生活を金銭面から推し量ることができる、貴重な資料・データが多数盛り込まれている。今回はそのデータ群の中から「個々の世帯はどのような形で貯蓄をしてきたのか、その構成比の推移」について検証を行うことにした。
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預貯金だけで6割超
今調査の調査要目は先行記事【食費の割合が減り、家賃負担が増加…一人暮らしをする若者のお金の使い道の実情(最新)】を参照のこと。
今回確認するのは、各世帯における貯蓄(ここでは金融資産を意味する)の具体的な種類における、その構成比の推移。1969年以降5年おき(つまり調査毎)の、二人以上世帯における貯蓄残高に関して、どのような形で貯蓄しているのかの割合を示している。単純に二人以上世帯全体で、勤労者世帯以外に年金生活者世帯も含まれていることに注意。
↑ 貯蓄の種類別構成比(二人以上世帯)
【日米家計資産推移】で言及している通り、預貯金がもっとも多く(通貨性・定期性合わせて)過半数に達している。それどころか今世紀に入ってからは6割台を維持している。
直近2019年時点で貯蓄残高は1449万7000円。そのうち35.6%の515万9000円が定期性預貯金(期限を定めて行う預貯金。通常は一定期間自由な引き出しができない)、28.2%の408万1000円が通貨性預貯金(いつでも自由に引き出せる代わりに、利子率は「定期性預貯金」より低い)となっている。定期性預貯金の割合は1999年をピークにやや減少しつつあるが、それ以上に通貨性預貯金は増加の一途をたどっており、調査開始以来最高水準を記録している。2019年では3割に届きそうである。
バブル時代の1989年には株価の上昇(=手持ち有価証券の価値上昇)もあり、「有価証券」の比率が最高値を記録したものの、その後は株価低迷に加え、投資そのものからの忌避もあり、値は減少気味。直近の2019年ではやや持ち直しているものの、「日米家計資産推移」の推移の限りでは、預貯金への強い信頼ぶりは今現在でも変わっていないことが予想される(ちなみに2009年時点では株価が軟調だったこともあり「「投資から貯蓄へ」の動きが進むことは容易に想像ができる(株価がそれまでに大きく戻していれば話は別だが)」としたが、実際には「投資も貯蓄も進んだ」に落ち着いたことになる)。
貯蓄額そのものは消費者物価指数との絡みなどがあるため(1969年の100万円と2019年の100万円では、額面が同じでも価値は異なる。また該当年前後の所得との兼ね合わせも考えねばならない)一概に比較はできない。そこで代わりに「いかに預貯金比率が増減しているか」が分かりやすいように、「通貨性預貯金」「定期性預貯金」のみを足してグラフ化を行った。
↑ 貯蓄の種類別構成比(二人以上世帯、預貯金のみ)
バブルが弾けた後は漸次預貯金率は上昇を続けており、2019年では前回の2014年からさらに増加、計測以来最高値を更新している。同時に「貯蓄」全体における「通貨性預貯金率」(のみの割合)は過去最大、「預貯金全体」に占める割合も最高水準を記録している。
この動きの理由はいくつか考えられるが、【公定歩合推移(日銀)】にもあるように、通貨性預貯金と定期性預貯金の金利差がほとんど無くなり、定期性預貯金にしておく必要性が薄くなったのに加え、クレジットカードなどの引き落とし口座として通貨性預貯金を使う人が増えているからだと思われる。
「日米家計資産推移」にもあるように、アメリカ合衆国などと比べると日本では預貯金で貯蓄する傾向が強い。昨今の市場動向を見るに、そして今回のグラフから動向を察するに、今後ますますその傾向は強まるに違いない。
年齢別の貯蓄性向
よい機会でもあるので、世帯主の年齢階層別における貯蓄性向を見ていく。
↑ 貯蓄の種類別構成比(二人以上世帯、世帯主年齢階層別)(2019年)
若年層世帯では可処分所得も貯蓄に回せる余力も少なく、状況に応じて引き出す必要が生じる可能性も高い。よって、柔軟性・流動性が高い通貨性預貯金の比率が高くなる。クレジットカードの利用が多いのも、通貨性預貯金の比率が高い一因だろう。また余剰資金の少なさもあり、有価証券への割り振りも少なめ。歳を経るに連れて定期性預貯金比率は増え、有価証券も増加していく。
30代までの通貨性預貯金の比率の高さに、全体値の低さへの疑問を持つ人もいるかもしれない。これはひとえに人口構成比によるもの。ウェイトバックをかけたあとの今調査における世帯主年齢別構成比率は次の通りで、30代以下は1割強でしかなく、60代以上で半数強。
↑ 二人以上世帯の世帯主年齢階層別世帯数構成比率(2019年)
今件に限った話ではないが、世代別回答数が均等割り当てでなく人口比率などとなっている場合には、全体値の動向を見る際には注意が必要に違いない。
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