教養娯楽が減り、食費や交通・通信費が増加…二人以上世帯のお金の使い道の変化(最新)
2021/09/03 03:06
総務省統計局は2021年5月18日までに【2019年全国家計構造調査】の主要調査結果を発表した。二人以上の世帯(住居や生計をともにしている二人以上の集まり)の日常生活をお金の観点から推し量ることができる、貴重な資料・データが多数盛り込まれている。今回はこの公開値を基に、「二人以上の世帯が消費するお金の使い道の移り変わり」に関して精査を行う。要は【一人暮らしをする若者のお金の使い道の変化をグラフ化してみる】の二人以上世帯版な次第である。
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食費で1/4、娯楽は1割…二人以上世帯のお財布事情
今調査に関する調査要目は先行記事【食費の割合が減り、家賃負担が増加…一人暮らしをする若者のお金の使い道の実情(最新)】を参照のこと。
今回支出について確認するのは「二人以上の世帯」。勤労者世帯の他に、年金生活をしている世帯も含まれることに注意。その世帯を対象に、1か月の消費支出(税金や社会保険料(=非消費支出)をのぞいた「世帯を維持していくために必要な支出」)が具体的にどのような項目に割り振られているのかを示したもの。現時点で取得可能値は1979年以降のものであることから、それ以降のものをすべて用いる。また個々の額が少数のため、「その他消費支出」独自の項目以外に「家具・家事用品」「光熱・水道」「保健医療」「教育」もまとめて「その他消費支出」に合算している。
各値を再計算した上でグラフ化したのが次の図。
↑ 二人以上世帯における平均消費支出の費用構成
まずは全般的な傾向について。現在に近づくにつれて「食料」が減り「住居」が増えていたが、2004年が底となり、それ以降は増加しているのが分かる。先の【エンゲル係数の推移(家計調査報告(家計収支編))(最新)】でも言及しているが、食の多様化や中食の多用化に伴う食費の純粋な増加に加え、元々エンゲル係数が高めな高齢層の、全体に占める構成比率の増加が、全体値を底上げしていることが、改めて確認できる。
「交通・通信」の増加(直近では前回比で減少しているが)は公共機関やガソリン代の値上げの他、今世紀に入ってからは【消費支出の4.35%・じわりと増加する携帯電話代負担…電話料金と家計支出に占める割合(最新)】や【電話料金と家計支出に占める割合を詳しく検証(最新)】でも解説しているように携帯電話の使用料金によるところが少なくない。子供がいればそれだけ携帯電話の負担も増えることになる。【保護者が肩代わりする携帯電話使用料、小学生2200円・中学生5000円】などにもあるが、子供が小遣いから融通する(≒家計の上で消費支出にはカウントされない)ことはあまりない。また子供の小遣いが低迷、漸減している主要因は、保護者が携帯電話料金を負担する分があるからに他ならない。
一方、「住居」の割合が漸増しているのも確認できる。一般に「家賃は収入の2割から3割がバランス的に優れている」とされている。今グラフの割合は「消費支出」であり、「収入」ではない(収入は今件消費支出以外に、税金などの非消費支出や貯蓄などにも割り振られる)ことを合わせて考えると、「住居」の負担は決して小さくない。ただし「二人以上で生活すれば家賃の負担は減らせる」と世間一般に知られている通り、一人暮らしの若年層と比べれば、家賃負担は随分と小さい実情も見て取れる。
↑ 若年勤労単身世帯の1か月平均消費支出の費目構成(男性)(再録)
若年層ではあるが、男性単身世帯の場合は実に1/4ほどが住居費用。無論これは賃貸住宅住まいのケースが多いのも一因だが、そろばん勘定の上で大きな負担であることに違いはない。
電話通信料と食費と
全体的な流れで気になるポイントを2つほど抽出し、詳細を見ていくことにする。
まずは「交通・通信」。昨今携帯電話関連の料金で世の中が色々と騒がしいが、その実情をかいま見る結果が出ている。次に示すのは「交通」「自動車など関連費」「通信」に細分化した上で、世帯主の年齢階層別に区分した、消費支出に対する費用比率。収入や所得に対する比率ではないことに注意。とはいえ、各属性における負担の度合いは十分推し量れる。
↑ 消費支出の費用比率(二人以上世帯、一部、世帯主年齢階層別)(2019年)
自動車関連の負担は年齢階層でさほど変わらない。29歳以下と70歳以上でやや落ちているが、これは保有世帯そのものが少ないのが主要因。また、交通費も負担度合いに大きな変わりはない。
年齢階層で違いが見えるのは「通信」。50代まではほぼ同じ割合で高い値が示されている。その中でも29歳以下はさらに高め。これは携帯電話(特にスマートフォン)の保有率が現役世代では高いのに加え、若年層ほど収入、さらには消費支出が低いからに他ならない。定年退職後の世帯も消費支出は抑えられるが、携帯電話の保有率は低く、また料金負担の軽い従来型携帯電話を使っているケースが多いため、「通信」の比率が底上げされることはない。
次いで「食料」、つまり食費。最近になってエンゲル係数が上昇していることについて、主に元々値が高い高齢層の構成比率が上昇したと説明した。実のところどの年齢階層でも「食料」の比率は増加している。
↑ 消費支出の費用比率(二人以上世帯、食料、世帯主年齢階層別)
詳しくは別途解説するが、上記でも触れている通り、食料品価格の引上げよりもむしろ、食の多様化による支出増加の結果といえる。内食比率が減り、中食が大きく増えているのがその裏付けとなっている。
各データから分かることを箇条書きにまとめなおすと、
・食料は減少から増加に転じる。
・住居費の割合は漸次増加。
・交通、通信や教養娯楽は漸次増加。
などとなる。「教養娯楽」が減り「交通・通信」が増えているのは、携帯電話の利用が多分に娯楽要素もあることから、実質的には娯楽としての支出が通信費にカウントされている面もあるのだろう。「食料」の増加への転換とあわせ、ライフスタイルの変化、多様化の実情が見て取れる。
上に若年単身男性の事例を再録値として掲載したが、特に住居費の割合が大きく、それが他の項目(特に「その他消費支出」)を圧迫しているのが分かる。二人以上の世帯となるとそれだけ食べる量が増えるため、食費割合にはあまり変化がないが、共用できる住居費は「消費支出全体に占める」比率を大きく減らせる次第である。
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【貯蓄率減少は本当なの? 家計の貯蓄率(単身勤労者世帯版)(最新)】
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