「全世代の負担増」が多数意見、だが…年金や育児などの社会保障の負担の今後
2011/10/16 12:00
厚生労働省は2011年8月23日、社会保障に関するアンケートの調査結果を発表した。「2011年版厚生労働白書」の資料素材として用いるデータ収集の一環で、先日【5割強は「負担増でも社会保障維持拡大」、「負担維持で保証引き下げ容認」は2割】などで伝えた同省発表による「2009年時点での社会保障における公的・私的サービスに関する意識調査」と類するテーマを対象にしている。今回はこの調査結果の中から、「社会保障(医療や健康保険、年金、介護、妊娠・出産・育児支援、雇用などで受けられるサービス)の負担の増加が余儀なくされるが、その場合どの世代の負担を容認すべきか」について確認していくことにする(【発表リリース】)。
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今調査は2011年2月10日から2月22日かけて居住地・年齢・性別による構成比に応じて2300人を無作為抽出し、郵送配布・郵送回収によって実施したもので、有効回答数は1342票。男女比は46対54、年齢階層比は20代146人・30代217人・40代230人・50代234人・60代297人・70代218人。
高齢化・少子化社会の進行で、社会保障の負担は年々増加の一途をたどっている。それのサービスを提供するのにもリソースは必要なため、当然国の負担≒国民一人ひとりの負担も増加することになる。この時に、どの世代への負担を積み増していくべきかを聞いた結果が次のグラフ。「社会保障負担」となると一番注目されている年金・金銭的な面だけでなく、多種多様な方面も全部合わせた、総論的な話であることに注意しておく必要がある。
↑ 社会保障負担について今後目指すべき方向性
全体では6割近くは「高齢者も現役も揃って負担増」となっている。そして2割近くが「高齢者の負担は維持」「現役世代の負担増を容認」、1割強が「高齢者の負担増を容認」「現役世代の負担は維持」。やや現役世代に負担の上で不利な結果が出ているが、これは後述するように多分に「現役世代のみの負担増を求める高齢者層の回答者そのものが多い」からに他ならない。一方男女別では女性の方が「現役世代のみ負担増」の回答率が高いが、同時に「分からない」層も多く、判断が付きかねる状態にあることが分かる。
これを世代別にみると、多少のばらつきがあるものの、やはり「自分が所属する世帯の負担が重くならない」回答が多くなっているのが分かる。
↑ 社会保障負担について今後目指すべき方向性(世代別)
定年退職間近-直後の60代前半で一番「全世代で負担増」が増えるが、全般的には「若年層ほど高齢者のみ負担増」「高齢者ほど若年層のみ負担増」の割合がやや大きくなるのが確認できる。一方若年層は「分からない」の回答率も高めで、状況の判断に迷っているようすがうかがえる。
なお「世代別」の負担区分では無く、「全体で」「社会保障そのものを増やすか減らすか」については、冒頭で例示した別調査の【5割強は「負担増でも社会保障維持拡大」、「負担維持で保証引き下げ容認」は2割】で語られている。こちらでは全般的に「負担増やむ無し5割強」「負担維持で保証引き下げ容認2割」という結果が出ており、負担の増加を容認する意見が多数派を占めている(今調査でも同様の調査項目があるが、ほぼ同じ結果が出ているので精査は省略する)。
↑ 社会保障給付と負担のあり方について(再録)
今件の調査結果と合わせて考えると、「負担増は仕方なし、皆で負担増が多数派」「現役世代と高齢者世代の負担については多少ながらも『自らの負担増は避けたい』とする動きも見られる」という流れが見えてこよう。
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