5割強は「負担増でも社会保障維持拡大」、「負担維持で保証引き下げ容認」は2割
2011/10/04 12:10
厚生労働省は2011年8月25日、2009年時点での社会保障における公的・私的サービスに関する意識調査結果を発表した。保育サービスや少子化・子育て、個人年金、民間の医療保険、社会保障の希望など、社会全体が注目している社会保障の現状に関する意見が集約された内容であり、各種要件が具体的数字で示された貴重な資料といえる。今回はその中から「今後の社会保証の維持充実と、個々の負担の増減問題」について着目してみる(【発表リリース】)。
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今調査は2009年7月16日に実施されたもので、調査方法は「調査員が配布した調査票に、調査対象となった世帯員(20歳以上の「一人ひとり」に配布。例えば子供無しの夫婦ともに20歳以上なら2枚)が自ら記入し、後日調査員が回収する」留置自計方式。集計客対数は1万0645人。
これまで【「今重要なのは年金と介護問題」「失業対策は若年層のみ問題視」…世代別の「重要と考える社会保障制度」】などで、年金や雇用、介護、医療など多種多様な社会保障に関する現状認識、今後の要望について確認を入れてきた。
↑ 現在重要/現在不十分のため今後充実希望の社会保障分野(3つまで複数回答)(その他、不詳は除く)(再録)
上記は昨今の社会保障問題を如実に表したグラフでもある。一方、これらの需要に応え、社会保障を維持拡大するには「予算」が必要。ところが今後少子高齢化が進めば「給付者増加」「負担者減少」となり、現状の保障を維持するとしてもこれまで以上の負担が必要なことが予想される(【50年前16.5人、今3.5人・高齢化社会を表す一つの数値】)。
そこでその「保障給付」と「予算=負担」との関係を尋ねたのが今回の項目。今後の両者の関係において、どのような選択をすべきかを尋ねたのが次のグラフ。「保障を引き上げるために負担を大きく増やすべき」「保障を現状維持できるまで負担を増やすべき」「負担は現状維持、社会保障がその分引き下げられても仕方なし」「社会保障を大きく引き下げても良いので、今まで以上に引き下げるべき」。この4つの選択肢のうち一つを選んでもらった。任意回答項目として「その他」もあるが、統計上はまとめられていない・未公開のため「その他・不詳」でひとまとめにしてある。
↑ 社会保障給付と負担のあり方について
全体としては「負担を大きく増やしても良いので社会保障を引き上げるべき」が1割強、「社会保障は現状維持、多少の負担増は止む無し」が4割強。合わせて5割強は「社会保障の水準を現状維持(以上)にするための負担増は許容する」という考え方。
一方で「社会保障水準が引きさがっても、負担はこれ以上増やせない」とする意見が2割、「社会保障が大きく削られても、個別の負担を今より減らすべき」とする意見が1割足らず。合わせて3割足らずは「社会保障を今より減らしても、個人の負担をこれ以上増やすべきではない」という意見になる。
世代別では多くの社会保障において「負担側」から「受給側」に移る50代でやや「社会保障を充実させるべき」の意見が強くなるが、大勢は変わらず、上記比率が維持されている。
「社会保障の引き下げ」による「個人負担増」は、インフラレベルのものをのぞけば「自己責任の度合いの引き上げ」をも意味する。「自己責任」と「公共支援」のどちらを優先すべきかは個々の考え方にもよるが、少なくとも今件の調査では社会福祉においては、「公共支援を優先すべき」という意見が優勢のようだ。
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