失業対策が第一、少子化対策が次点…現在不十分で今後力を入れるべき社会福祉とは
2011/10/03 06:50
厚生労働省は2011年8月25日、2009年時点での社会保障における公的・私的サービスに関する意識調査結果を発表した。保育サービスや少子化・子育て、個人年金、民間の医療保険、社会保障の希望など、社会全体が注目している社会保障の現状に関する意見が集約された内容であり、各種要件が具体的数字で示された貴重な資料といえる。今回はその中から「どのような分野の社会保障が現在は不十分と判断され、今後さらに充実すべきと考えられているか」について着目してみる(【発表リリース】)。
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今調査は2009年7月16日に実施されたもので、調査方法は「調査員が配布した調査票に、調査対象となった世帯員(20歳以上の「一人ひとり」に配布。例えば子供無しの夫婦ともに20歳以上なら2枚)が自ら記入し、後日調査員が回収する」留置自計方式。集計客対数は1万0645人。
先に【「今重要なのは年金と介護問題」「失業対策は若年層のみ問題視」…世代別の「重要と考える社会保障制度」】で解説したように、社会保障で(現在、単純に)どの分野が重要かという認識に関しては、「年金・老後所得保障」がもっとも重要視される結果が出ている。次いで「老人医療・介護」「医療保険・医療供給体制」「少子化対策・子育て支援」の順。
↑ 現在重要と考える社会保障分野(複数回答)(その他、不詳は除く)(再録)
それでは重要度もさることながら、現時点で不十分なので今後さらに充実すべきだと考えられているのは、どの社会保障なのだろうか。「3つまで」の複数回答のため、優先順位の高いものが選ばれることになる。
↑ 現在不十分のため、今後さらに充実させるべき社会保障分野(3つまでの複数回答)(その他、不詳は除く)
項目の並びは以前の【「今重要なのは年金と介護問題」「失業対策は若年層のみ問題視」…世代別の「重要と考える社会保障制度」】と同じままにしてあるが、一番右の「雇用確保や失業対策」が最多回答率を見せることになった。総数では4割強の人が「今現在、雇用・失業問題が立ち遅れているので、改善に尽力すべき」と考えていることになる。
次いで「少子化対策・子育て支援」。そして「老人医療・介護」「医療保険・医療救急体制」と続く。いずれも各報道などで現状の厳しさ、関連する事件や騒動が伝えられるものばかり。どの項目も社会福祉分野では重要で改善を図るべき内容なのだが、やはり切迫度の大きいもの、よく語られるものの方が、改善を求める声も大きくなる。
これを世代別に見ると、個々の世代の事情や思惑が見えてくる。
↑ 現在不十分のため、今後さらに充実させるべき社会保障分野(3つまでの複数回答)(その他、不詳は除く)(世代別)
「現在」ではなく「今後」であることから、回答者の立場で将来的に自分が該当しそうな項目に、他世代よりも多くの同意意見が集まっているのが分かる。「年金・老後所得保障」「老人医療・介護」、そして「健康の保持促進」が顕著な例。「まずは自分」と考えるのは人の「さが」ではあるが、逆に考えれば「自分の立場で求めるからこそ、切実に、そして的確な要請も容易になる」という解釈もできるというものだ。
最後に、今件の「現在不十分で将来充実を望む」と、以前の「現在重要」を併記したのが次のグラフ。
↑ 現在重要/現在不十分のため今後充実希望の社会保障分野(3つまで複数回答)(その他、不詳は除く)
単純に優先順位で考えれば「年金、介護は非常に重要」「雇用失業、少子化対策は不足している」という認識が社会福祉に関する大勢の意見となる。現実問題としていずれかに集中し他を切り捨てるわけにはいかないが、施策の優先順位はこれらに配慮した、あるいは追随する形となるのだろう。
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