【更新】保育園と幼稚園の利用度合いの変化…子育て支援利用の動向
2011/09/26 06:54
厚生労働省は2011年8月25日、2009年時点での社会保障における公的・私的サービスに関する意識調査結果を発表した。中身としては保育サービスや少子化・子育て、個人年金、民間の医療保険、社会保障の希望など、社会全体が注目している社会保障の意見の現状が集約された形となっている。今回はその中から、認可保育所や幼稚園のような、子育てと補助サービスの項目に注目していくことにする(【発表リリース】)。
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今調査は2009年7月16日に実施されたもので、調査方法は「調査員が配布した調査票に、調査対象となった世帯員(20歳以上の「一人ひとり」に配布。例えば子供無しの夫婦ともに20歳以上なら2枚。ただし子供の直接の育児周りの話は「その子供の主たる保護者」(ほとんどは母親)のみが回答している)が自ら記入し、後日調査員が回収する」留置自計方式。集計客対数は1万0645人、
先に、同じく厚生労働省の「国民生活基礎調査の概要」を元に、「末子が乳幼児の母親で仕事を持つ場合、日中誰がその子供を保育しているかの状況」について考察した(【仕事を持ち乳幼児がいる母親、日中は誰に育児を任せる? (2010年分反映版)】)。
↑ 末子の乳幼児の年齢別にみた、「仕事あり」の母の世帯における日中の保育の状況の割合(複数回答)(再録)
末子が乳幼児の場合の保育状況としてはメインが「父母自身」「認可保育所」「幼稚園」で、他に「祖父母」「認可外保育施設」などが使われているという具合だった。
今回は調査母体のうち、小学生以下の子供がいる世帯に対し、その子供の現在の年齢別に、「子供自身がゼロ歳の時に」どのような子育て支援サービスを用いたかについて、スポットライトを当てている。つまり「現在の」子供の年齢が上になるほど「昔の状態」を、子供の年齢が若いほど「今に近い状態」(調査年月は2009年7月なので、それでも2年ほど前だが)を示していることになる。また、あくまでも「(公的・私的)支援サービス」なので、父母自身やその祖父母などは項目に含まれていないことを留意しなければならない。
↑ 子供の「現在の」年齢階層別に見た、その子供がゼロ歳の時に子育てに利用したサービスの利用状況(複数回答)(小学生以下の子供がいる世帯対象)
まずぱっと見で分かるのは、左に行くほど回答率が増えている事。0歳、つまり直近ではやや減ってはいるが、この10年ほどで回答率合計が2倍ほどに増加している。つまりそれだけ子育て支援サービスを使う人が増えたことを意味している。
項目別に見ると「認可保育所・園」が昔も今も高い値を示しているが、それとは別に「認可外保育施設」も一定率を維持していること、そして直近に近づくにつれて「地域育児支援」(東京都なら[赤ちゃん・ふらっと事業]や【とうきょう子育て応援Naviの内容】)が増加している。自治体毎の支援サービスが積極的に活用されはじめている状況が確認できる。
これがもう少し大きくなり、3歳から小学校に入学する時期になると、「幼稚園」「保育所」の2施設に大別されることになる。
↑ 子供の「現在の」年齢階層別に見た、その子供が3歳-小学校入学前の時に子育てに利用したサービスの利用状況(複数回答)(小学生以下の子供がいる世帯対象)
現在の年齢が3歳未満は条件に合致しないので、項目上には存在しない。メインは「幼稚園」サブは「認可保育所」という構造に違いは無いが、直近に近づくにつれて「幼稚園利用者が減少」「保育所が増加」という動きが確認できる。保育時間について基本は「幼稚園は午前9時-午後2・3時位(最近は「預かり保育」として夕方まで保育する所も増加している)」「保育所は午前7時半から9時くらい-午後6時半前後」となっており、保育所の方が保育時間が長い(管轄行政機関や保育方針の違いによる)。
両者の数の問題や教育方針に対する社会的な価値観の変化などもあるが、幼稚園と保育所の利用率の変化は、共働きをする母親側の事情の移り変わりによるところが大きいと考えてよい。つまり「長時間働く必要が生じているため、早めに退園させる幼稚園では、保育の時間に合間ができてしまう(お昼時から夕方)」ためである。
それを裏付けるのが、上記グラフを「母親の就労状況別」に区切り直したもの。
↑ 母親の現在の就業状況別、子育てに利用したサービスの利用状況(複数回答)(3歳-小学生以下の子供がいる世帯対象)
就労時間が短時間の「パート・アルバイト」は「幼稚園」の利用率が高いが、長時間となる「正規職員・従業員」「派遣・契約社員」は「認可保育所」の利用率が高い。特に「正規職員・従業員」では3/4が「認可保育所」を利用しているのが確認できる。
今件はあくまでも「利用している子育て支援サービス」を示したもの。また、複数回答となっているが、該当する子供が二人以上いる場合はそれぞれを計上しているため、やや数字が上乗せされ得る。その一方、母親が就労していない場合は父母など保護者自身が保育を行い、関連サービスを使わない場合も十分に考えられる。これらを考慮すると今件は、現在の保育と子育て支援の傾向を示す、一つの指針的グラフ程度でしかないが、それでも現状を認識するには十分過ぎる内容となっている。
調査目的には「公的サービスと私的サービスの利用状況の現状を把握」「今後の厚生労働行政施策の企画・立案のための基礎資料を得ること」とある。今件の動向をしっかりと把握し、有効に活用し、現状の改善に活用されることを、節に願いたいものだ。
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