震災以降の家計の寄付金の動き(2011年7月末まで反映版)
2011/09/22 12:10
今年(2011年)3月11日に発生した東日本大地震・震災から半年も経過し、少なくとも時間の流れの視点からは一つの区切りを数えたことになる。今回はそれに合わせる形で、以前に震災以降の家計の寄付金の動きをグラフ化して精査した記事で用いた、総務省統計局の「家計調査」のデータで確認された、家計内における寄付金項目の増加がどのような変移を遂げているのかについて、直近のデータを反映させる形で後追い記事を展開していくことにする。
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データ取得元は総務省統計局の「家計調査」(e-Stat経由)。そこから「月次」データが唯一揃えてある「家計支出編・二人以上の世帯」、そして「月次」「日別支出」「6-16 品目分類による日別支出 二人以上の世帯・勤労者世帯」のファイルをダウンロード。その内の「953 寄付金」が該当する項目になる。ここからデータを抽出し、二人以上世帯における一日ごとの平均寄付金額推移を2011年3月以降7月末まで(前回は4月末)の推移でグラフ化したのが次の図。前回記事のグラフ同様に月末にややイレギュラーな値が出てしまっているが、これは月末処理でまとめて寄付金を贈呈しているものと推定される。
↑ 二人以上世帯の家計で支払われた寄付金推移(2011年3月-7月、円/日)
東日本大地震の本震である3月11日にはゼロを記録し、それ以降はそれ以前と比べて高い値を示していること、1か月を過ぎたあたりでとび抜けた値は少なくなるものの(過熱感がやや醒めてきた)、本震以前と比べてれば高水準を継続維持しているのが分かる。
しかしながら増加傾向も5月末くらいまでのように見える。少なくとも一日単位の変移を示すグラフでは、差異はほとんど見られない。
そこで過去2年、2009年までさかのぼり、月単位での寄付金動向を確認したのが次のグラフ。
↑ 二人以上世帯の家計で支払われた寄付金推移(2009年-2011年、円/月)
ややイレギュラーな動きを見せる月もあるが、特徴としては
・この数年では寄付金は漸増する傾向。
の2点が確認できる(2009年10月にもやや大きな動きがあるが、これは2009年9月30日に発生したスマトラ沖地震に伴うものと推測される)。また、今回主要テーマの「東日本大地震・震災」関連では、2011年3月から5月までの三か月間で特異な動きは終息し、ほぼ通常の寄付額に戻ってしまったのが見て取れる。
勤労者世帯のみで限定したデータでグラフを再構築しても、結果はほぼ同じ。
↑ 二人以上世帯の家計で支払われた寄付金推移(2009年-2011年、円/月)(勤労者世帯のみ)
むしろ以前の記事でも指摘した「タイガーマスク運動時は高齢者世帯によるところが大きい」という推定を裏付ける値が出てしまっている(勤労者世帯の寄付金動向では、「タイガーマスク運動」時期のイレギュラー値が発生していない。つまりこの時期の大きな寄付金増加は、勤労者世帯では行われていない傾向がある)。
【国税庁、義援金の税制上の特例「所得控除」について改めて発表】などをはじめ、寄付金絡みの制度に関する改善も手掛けられ、また抜本的な改善(例えば税制法上などで寄付をしやすくする仕組みの構築)の声も以前と比べて、随分と高まりを見せている。一方で【寄付先の選択理由のトップは「募金が確実に支援に使われている」こと】などで指摘されているような問題点もあらためて持ちあがっており、こちらもまた解決しなければならない課題といえる。
ともあれ、統計上では今般震災に関連する、家計上の寄付金の増加傾向は、事実上三か月で終わっている。しかしこれがそのまま、震災の忘却を意味するものでないことは、改めて明記しておく。
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