被災地復興とお金、被災地内外の意識の違い

2011/09/17 06:54

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税金NHK放送文化研究所が2011年9月5日に発表した、東日本大地震・震災から半年経過した時点での被災地域(具体的には岩手県・宮城県・福島県に限定)、そしてそれ以外の地域の心境調査結果は、ほぼ同じ設問を両地域に対して実施していることから、被災地域内外での心境の違い知ることができる。今回はその中から、被災地復興の際に必要となる「お金」に深く関連した項目を抽出し、その結果を見て行くことにする(【発表リリース(PDF):震災半年調査 単純集計結果】)。



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今調査は2011年9月2日から4日にかけてRDD追跡法による電話法によって20歳以上の男女に対して行われたもので、有効回答数は被災地域1226人・それ以外の地域1175人。

まずは復興に際し行政(この場合は自治体では無く国レベルを指すと見てよい)がどこまで責任を持つか・負担をするかという問題。復興に深く行政が関与することで、それだけ経費がかかり、それは国民全体の負担につながる。お金は空から降ってくるわけではない。それを前提として説明した上で、どこまで行政が関与すべきか、責任をもって取り組むべきかを聞いた結果が次のグラフ。

↑ 復興についてどこまで行政が責任を持つべきか(行政関与度で国民の負担増の可能性も述べた上で)
↑ 復興についてどこまで行政が責任を持つべきか(行政関与度で国民の負担増の可能性も述べた上で)

概要的には「震災以前以上が1割」「震災前同水準が3割」「震災前ほどではないが生活が可能なところまでが5割」というところ。被災地回答の方がやや要望水準が高い結果が出ているが、それでも約半数は「震災前ほどではないが生活が可能なところ」と答えている。特別区指定でも無い限り、負担増は結局自らの身にもかかってくるから、あるいは「とにかく自分達で立ち上がれるところまでで良いから助けてくれ」という願いが込められているのかもしれない。

上記は「復興」という社会全般に対する話だが、個人ベースではどのような判断が下されるだろうか。被災で自宅を失ったり破損したり、あるいは財産を無くしてしまった人への支援については、半数が「国や自治体が手厚く支援」・4割が「一部支援」と回答している。

↑ 被災による自宅破損、財産喪失者に対する資金面での支援について
↑ 被災による自宅破損、財産喪失者に対する資金面での支援について

保険の適用で一部カバーできる場面があったとしても、全体的な回復は事実上困難。あとは国や自治体に期待するしかないのだが、手厚いサポートを望む声の方がやや大きい。見方を変えれば、支援度合いは別にして、何らかの手助けをするべきいう意見が9割を超えていることになる。

最後は一つ目と二つ目を合わせた、あるいは深い関係がある話。これらのアクションを成すためにも必要な財源として、所得税や法人税などの臨時増税が検討されている。これら臨時増税に対する意見だが、興味深い動きが確認できる。

↑ 震災復興費用確保のために検討されている所得税や法人税などの臨時増税について
↑ 震災復興費用確保のために検討されている所得税や法人税などの臨時増税について

被災地内外でいずれも賛成が反対を上回っていることに違いないのだが、賛成意見は被災地以外が、反対意見は被災地自身の方が高い結果が出ている。繰り返しになるが、増税の場合は特別措置の無い限り自らの負担も増えてしまうこと、あるいは気兼ねの類があるのかもしれない。

また、「どちらともいえない」とする意見が1/3強あるのも注目に値する。これは設問で具体的な値が出ていないのが主要因だろう。税金周りは単純に増税と称して税率を上げれば良いのでは無く、さまざまな変数を元に考慮しなければ、望む効果(今件の場合は財源の確保)は得られない。それどころか中期的にはマイナスの結果を生み出しかねない。単純に「臨時増税」と聞かれても答えにくいのは致し方あるまい。



同調査別項目でも解説しているが、被災地では各種社会インフラや生産施設など、「経済」≒「地域社会」という生き物を活かし続けるのに欠かせない「血液」、つまりお金の流れがほとんど止まってしまっている。まずは「輸血」(大量の資金投入)で血流を送りこみ(お金の巡りを創り血圧を戻し)、同時に地域社会内で血を創生するための仕組み・流れ(産業の再構築と創生による就業の供給提供、それに伴う価値の創生と現地の人達への資金浸透)を早急に再構築する必要がある。

資金の投入はもちろんだが、逆に被災地にお金が流れやすい仕組み(工場誘致の際の特別減税の実施など)の工夫も求められよう。



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