「なぜ戻ったのか」津波に備えた避難後に、危険な場所に移動した人の心理

2011/09/15 06:09

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避難2011年9月8日にウェザーニューズは公式ウェブサイトにおいて、東日本大地震・震災による津波の被害に関する調査報告を発表した。無事に避難が出来て生存した人、さらには亡くなった人との間の行動・判断の違いを確認するためのものであり、減災対策・避難活動の計画立案などの観点から見ても、きわめて重要な資料に仕上がっている。今回はその中から、津波から逃れるために避難場所に避難した後に、危険な場所に移動した人の割合やその理由ににスポットライトを当てることにする(【発表リリース】)。



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今調査は2011年5月18日から6月21日にかけ、北海道・青森県・岩手県・宮城県・福島県・茨城県・千葉県の1道6県で被災の経験を持つ人を対象に、インターネット、さらには携帯電話経由で行われたもので、有効回答数は5296件。そのうち生存者自身の回答は3298件、命を落とした方に関する回答(関係者などによる証言)は1998件。亡くなられた方のデータは生存している関係者からの聞き取り・回答であり、不確かな部分も少なくなく、「分からない」の回答項目への回答が多めになってしまっている。に

今件調査では別項目で(津波被害で)亡くなった人に関して、「なぜ逃げきれなかったのか」というものがあり、その上位3項目は「避難経路に障害」「再び危険な場所に移動」「避難場所が安全では無かった」が挙がっている。このうち「再び危険な場所に移動した」について、生存者と亡くなった人にそれぞれ聞いた結果が次のグラフ。

↑ 一次避難場所から危険な場所に移動したか
↑ 一次避難場所から危険な場所に移動したか

亡くなった方の逃げきれなかった理由の上位項目は「再び危険な場所に移動した」で、今件項目は「一次避難場所から危険な場所に移動したか」であり、厳密には完全な一致では無い。「再び」が入る場合は、避難所に来る以前に居た場所(自宅や勤務先、学校など)を意味するが、単に「危険な場所」は「以前居た場所”以外”」も含まれるからだ。ただし常識的に考えれば自宅など自分の日常生活に関係する以外で、わざわざリスクの高い場所に足を運ぶ事は考えにくく(学校など、身内が留まっていると想定できるところ位だろうか)、「≒(セミイコール)」レベルのものと判断して良いだろう。

それが分かるのが、資料にある「亡くなった人が『一次避難所から危険な場所に移動した理由』」のグラフ。具体的数字が挙げられていないのでグラフ生成は略するが、上位項目を順に列挙すると、

・家族を探しに
・家や田畑などの様子を見に
・職場の様子を見に
・防災用品や食料を取りに
・ペットを探しに

などとなっている。いずれもが「危険なため避難してきた場所(自宅や職場など)では、もう津波の心配は要らない」という誤った判断(元資料では「危険を冒しても家族が心配だった」とも分析している)によるものであることが分かる。

地震や津波の関連記事で何度となく記述しているが、普段から家族それぞれの適切な避難先を互いに確認することが防災・減災には欠かせない。しっかりと覚えておくことで「一時期はばらばらになっても、危険な時点で互いを探しに移動し、リスクを負う」ことが無いようにすると共に、【津波の伝承・学習、それぞれ聞いた人のうち約半数は「役立った」】でも紹介した「津波てんでんこ」のような原則を守り、今回の調査結果から発覚した「リスクの積上げ」を減らすこともできるはずだ。



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