「シニア層のネット離れ」を少し深く突っ込んでみる(2011年版情報通信白書より)
2011/09/01 06:26
2011年8月9日に総務省が発表した、2011年版【情報通信白書】では、その多くは【携帯電話とパソコンの所属世帯年収別利用率(2010年分データ反映版)】などでも紹介した「通信利用動向調査」の内容をベースにしている。しかし一方で、他にも色々な資料を元にした注目すべきデータを収録しており、資料性の高い内容ではある。今回はその中から、インターネットを利用する・活用する際の課題と、その課題を解消するために求められている事柄のうち高齢者事情を、インターネットを利用していない層の動向も合わせて眺めて行くことにする(【該当ページ:第2章 浮かび上がる課題への対応(3)ICT利活用上の課題分析】)。
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今件項目は一次的には総務省が発表した「ICT利活用社会における安心・安全等に関する調査」(2011年)を参照にしている。この調査は日本国内のインターネット利用者を対象としたウェブ調査、そして一般国民を対象とした郵送調査を行い、分析対象層別割り付けを行ったもの。直接対象項目は「2011年2月下旬実施」「ウェブアンケート調査及び郵送アンケート調査」「低所得者層299人・ひとり親層100人・単身者299人・高齢者200人」、それとは別に全体層として「ウェブアンケート形式で1800人」の条件で実施している。
【お金と難しさ…インターネット利用上の課題と解決糸口】でも解説したが、デジタルデバイドが生じやすい層において、インターネット利用のためのハードルは「金銭面」によるところが大きく、自らが思う解消法も、その面からのものが多数に及ぶ。一方で高齢者はそれに加え、操作周りの難しさをあげており、それが打開できるような状況の改善を望む面もある。
↑ インターネット利活用の課題(再録)
↑ インターネット利活用における課題を解決するために求められていること(再録)
それでは今後焦点に挙げられることが多くなることが確実の高齢層において、もう少し掘り下げてみようというのが今回のテーマ。高齢層を全体と、インターネット未利用者に区分し、まずは「インターネット利活用の課題」についてグラフを再構築したのが次のグラフ。
↑ インターネット利活用の課題(状況別)(高齢者)
高齢者全般としてはやはり二大ハードル「金銭面」「操作の難しさ」が上位についている。一方で「現在インターネットを利用していない」高齢者に限定すると、それらの項目以上に「世の中のサービスがインターネット中心になってきているが、ついていけない」「端末の使い方が分からない」への同意率が非常に高いのが分かる。お金よりも何よりも、まずは「難し過ぎて分からない」「世の中の仕組みが難しくなってきて、ついていけない」という問題が立ちはだかっており、それがシニア層のネット利用をさまたげているのが分かる。
「難しいから分からない」という不満を持つインターネット未利用の高齢層にとって、ネット利用のためのハードルを超える手段は、当然ながら「難しさ」をクリアしてくれるための「手ほどき」ということになる。何しろ、自分自身だけで解決できるものなら、とうの昔に解決できているはずなのだから。
↑ インターネット利活用における課題を解決するために求められていること(状況別)(高齢者)
一般の高齢層は「接続料金の値下げ」「負担の支援制度」「公的機関での無料ネット開放」などの点において高い値を示している。ところがネット未利用層になるとそれと同等、あるいはそれ以上に「分かりやすい端末の開発」「地域社会で使い方をサポートしてくれる仕組みの構築」を求めているのが分かる。
今件と「お金と難しさ…インターネット利用上の課題と解決糸口」で確認できるのは、いわゆる「ソーシャルデバイド」「デジタルデバイド」を解消、特に発生しやすい層での打開のためには、個々の事情にあった施策が必要なことである。概論としては「経済的問題」「難易度問題」の2点に絞られ、前者は「お金」後者は「人手」と「端末」への注視が求められる。
「情報通信白書」でも言及されているが、「今後、利用者本位でこれら異なるニーズにきめ細やかに対応していくことが、デジタル・ディバイドを解消していく上で重要であると」言えよう。
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