ネットを使いこなす技術の学び方・学べないハードル(2011年版情報通信白書より)
2011/08/30 06:37
総務省は2011年8月9日、2011年版の【情報通信白書】を公開した。その多くは以前【携帯電話とパソコンの所属世帯年収別利用率(2010年分データ反映版)】でも紹介した「通信利用動向調査」の結果を元にしている。一方で他にも色々な資料を元にした注目すべきデータを多数収録しており、非常に資料性の高い内容となっている。今回はその中から、インターネットを活用する技術をどのように身に付けたか、身につけられていない人は何故習得できないのか、その理由について、主に「デジタルデバイドの発生が懸念される」層を中心に見て行くことにする(【該当ページ:第2章 浮かび上がる課題への対応(3)ICT利活用上の課題分析】)。
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今件項目は一次的には総務省の「ICT利活用社会における安心・安全等に関する調査」(2011年)を参照にしている。これは日本国内のインターネット利用者を対象としたウェブ調査及び一般国民を対象とした郵送調査を行い、分析対象層別割り付けを行ったもの。直接対象としている項目は「2011年2月下旬実施」「ウェブアンケート調査及び郵送アンケート調査」「低所得者層299人・ひとり親層100人・単身者299人・高齢者200人」、それとは別に全体層として「ウェブアンケート形式で1800人」の条件で実施している。
インターネットを活用する技術は、最近では学校などでも教えてくれるようになったが、それとて十分なものではない。自ら向学心を持つ者は雑誌や専門書で習得したり、知人や家族から教わったり、あるいはネット上の仲間に教示を受けながら、経験を積み重ねていくことになる。
まずは全体的な傾向だが、もっとも多い回答は「家族に教えてくれる人がいる」。次いで「友人・知人の中に教えてくれる人がいる」と、リアルに教えてくれる人がいるというパターンが多い。
↑ インターネット活用技術の習得手段(複数回答)
また「職場の社員向け研修で習得した」という回答もそれなりにあり、研修があながち無駄では無いことを裏付けている。
これらはいずれも第三者の手助けによるものだが、一方では「参考になるウェブコンテンツを知っている」「参考となる書籍などを知っている」と、独学の上、ネット上の情報や書籍から知恵を得ようという人も多い。一度検索のコツさえつかんでしまえば、ネット上での情報収集は気軽に、しかもほとんど無料で行えるため、「ウェブ上の情報」の回答の方が高めの値を示している(ただし間違い、古い情報、さらにはクセが強いものもあるため、良い教材を選ばないと痛い目に会う事も)。
ところが、個人の状況が「デジタルデバイドの発生が懸念される」層になると色々と事情が異なってくる。
↑ インターネット活用技術の習得手段(複数回答)(状況別)
・ひとり親層…ウェブサイトなどが多い。
・単身層…友人・知人、ウェブサイト、書籍が多い
・高齢層…家族、友人・知人が多い
可処分所得の上で難儀しそうな層では、主にウェブサイトで習得していく。一方で単身者はそれ以外に書籍を買い求めたり、リアルな友人・知人に訪ねたりもしている。
高齢者は事情がかなり複雑。高齢者全体では「友人・知人」以外に「家族」に尋ねる人も多く、言葉通り手取り足取り教わっている感がある。しかしこれをインターネット未利用者と利用者で区分すると、高齢者のネット利用率が低い理由の一端が見えてくる。
↑ インターネット活用技術の習得手段(複数回答)(高齢者限定)
ネット利用の高齢者は周囲のリアルな人達との積極的な接触で習得しているが、そうでない、つまりネット非利用者は「機会が無い」「習得に関心が無いが多い」である場合が多い。言い換えると高齢者でネット離れをしている人は、
・インターネットへのアクセスそのものに興味関心が無い
(何が出来るを知っているか否かは別)
のいずれかの状態にある人が多数なのが分かる。特に後者「ネットへのアクセスには関心が無い」という意見は6割近くに達しており、今流行りの言い回しで表現するなら「シニアのインターネット離れ」が起きているのが分かる。
今後ますます増加するシニア層には、デジタルデバイドの問題が必ず付きまとう。人口比の上でも、消費性向・経済動向の観点でも、そして社会福祉の上でも、シニア層へのネット浸透・利用は急務といえる。そして今件データのうち「関心が無い」事例でも「インターネットで何が出来るかを十分に理解していない」可能性もあるが、積極性はあまり望めない。むしろ優先順位としては4割強の「習得する機会が無い」という、潜在的シニアネット層の掘り起こしに注力するべきだろう。
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