「気持ちの文字での発信」「言葉より絵や映像での意思表示」いずれも若年層が好む傾向に(2011年版情報通信白書より)
2011/08/26 06:42


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今件ではコミュニケーションに関する事例・状況の例示に対し「そう思う」「まあそう思う」「あまりそう思わない」「そう思わない」の4つの選択肢から選んでもらい、前者2つを「ポジティブ意識」、後者二つを「ネガティブ意識」として再集計した上でグラフ化している。
まずは「自分の意見や気持ちを文字で発信することに喜びを感じる」という考えに対する反応だが、多くの人はネガティブ、つまり否定的な意見を抱いている。

↑ 自分の意見や気持ちを文字で発信することに喜びを感じる
もちろんこれは「自分の意見・気持ちを外に向けて発信することが、一般的に嫌われている」ことを意味しない。直接口頭、身振り手振り、あるいは黙って行動するなど、他にも意見や気持ちを表現する方法はあるからだ。単純に文章書きが苦手な人もいるだろう。さらに「文字にする」ことが好きでも、それを「(第三者に向けて)発信する」ことを好まない場合もある(自分の想いをつづった、他人に見せない日記を書くのが好きな人も少なくない)。
そして当然、気持ちや意見を表す手段として文字を用い、それを第三者に伝えるのが好きな人、喜びを覚える人もいる。そのような人は昔から作文をはじめとした文章の創作活動に励んでいるし、「誰もが不特定多数に情報を公開できる」ネット時代の到来を「夢の時代がやってきた」と喜び勇んだことだろう。一方でそのような環境が当たり前の中で育ってきた「ネット世代」においては、「文字表現の楽しさ」の気持ちが育成されやすいともいえる。多くの人から思いもよらぬ反応が得られるとあればなおさらだ。10代・20代でポジティブ意識が他世代と比べて10ポイントほど高いのは、それら「ネット世代」の素直な反応と思われる。
さらにこの「ネット世代」では、文字に限らず絵や映像など(チープな表現ではあるが)「マルチメディアな手法で気持ちを表現する」ことを好む傾向がある。

↑ ことばより、絵や映像の方が自分の気持ちをうまく表現できる
これも、絵や映像を気楽に送れるようになった環境下で過ごす時間が長く、それを当たり前と認識しているがゆえの結果といえる。浸る時間が長ければ長いほど、それに慣れ、親しみを覚え、得意とする人が出てくるのもごく自然の流れ。
さらに若年層ほど、「自分がこれまで過ごしてきた(生きている)時間」における「文字による意思表示が気軽に出来る時間」や「絵や映像を容易に意思表示に使える時間」が長いのだから、影響を受けやすい、感受されやすいのも理解できる。【減る「テレビ」「新聞」、増える「ネット」……メディアへの接触時間推移(2011年発表版)】の終わりで解説した、”新世代メディアに触れている時間が「全人生時間比」で長い若年層ほど、「慣れ」「信頼し」て当然”のと理屈は同じ。

↑ 新世代メディアの展開を10年と仮定した時の、各年齢における「自分の人生全体」に対する「新世代メディアとの接触年数」の割合(概念図)(再構築の上再録)
上の概念図で説明すると、「誰もが不特定多数に情報を公開できる」「マルチメディアな手法で気持ちを表現できる」時代が到来してから10年経過しており、20歳の人は人生の半分をその環境下で過ごしている。この世代の人のうち多くが慣れ親しみ、常識として刷り込まれていてもおかしくはない(さらに「幼少期の経験が一生を大きく左右する」というアドバンテージまである)。
ところが中堅層以降になると同じ「新時代」の年数を過ごしていても、人生全体に占める比率が小さいため、気持ちの切り替え、慣れ親しむまでに時間がかかる、あるいは切り替えが出来ない可能性が高くなるということだ(さらには一度「マインドセット」された心情の切り替えは、容易にできるものではない)。
「情報通信白書」ではこのような若年層における意識傾向を確認した上で、「(意思・情報)発信の中でも、絵文字や写真などを利用した発信方法を使う傾向」にも見られる意識と説明している。それらの手法を幼いころから使え、慣れ親しめる環境下で育っているのだから、好む意識が芽生える機会も増える。結果としてポジティブ意識の回答者が増えるのも、至極当然といえよう。
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