若年層に見られる「直接話すよりデジタルの方が楽で気軽」の気配(2011年版情報通信白書より)
2011/08/25 07:08
総務省が2011年8月9日に発表した2011年版の【情報通信白書】は、その中身の多くを、以前【携帯電話とパソコンの所属世帯年収別利用率(2010年分データ反映版)】でも分析した「通信利用動向調査」の結果を元にしている。だが一方で、他にも色々な資料を元に興味をそそられるデータを多数収録している。今回はその中から、世代間に生じつつあるコミュニケーション意識の変化を、一側面から眺めてみることにする(【該当ページ:第1章 ICTにより国民生活はどう変わったか(3)閲覧・発信に係る志向性の傾向】)。
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今件ではコミュニケーションに関する事例・状況の例示に対し「そう思う」「まあそう思う」「あまりそう思わない」「そう思わない」の4つの選択肢から選んでもらい、前者2つを「ポジティブ意識」、後者二つを「ネガティブ意識」として再集計した上でグラフ化したもの。
まずは「人と会って話すよりも、パソコンや携帯電話を操作しているのが楽しい」。やや漠然とした設問だが、全体では9割以上が「いいえ」の意識。つまり人と同じ位楽しいか、会って話している方が楽しいと考えている。
↑ 人と会って話しているときより、パソコンや携帯電話をいじっているときのほうが楽しい
ところが若年層、具体的には10代-30代はやや肯定意見が大きめで、特に10代は5分の1近くが「人と話すより、ケータイやパソコンの方が楽しい」と答えている。
似たような傾向は「人と会って話すより、メールでやりとりする方が気軽だ」の設問にも現れている。しかもこちらの方が全般的に肯定率が高い。つまり「メールの方が気軽でいいネ」と考えている人が多いことになる。
↑ 人と会って話すより、メールでやりとりする方が気軽だ
「楽だ」ではなく「気軽だ」という点から、他人との直接の出会いにおける心理的な面での面倒くささ、プレッシャーなど苦手意識を、特に若年層は抱いていることになる。
しかしだからといって、孤独を望んでいるわけでなければ、一人でいるのが好きなわけでもない。「人と一緒にいるのが好き」「いつも友人・知人とつながっているという感覚が好き」という設問では、全体的に高く、特に若年層は中堅層以降よりも高回答率を示している。
↑ 人と一緒にいるのが好きである
↑ いつも友人・知人とつながっているという感覚が好き
「いつも集団の中にいる」「常に誰かと意思疎通をしている」のを好む傾向が若年層において強い傾向を示しているのと、上記の「パソコンや携帯を-」「メールで-」と合わせて考えると、【携帯時代は「さみしんぼう時代」!? 半数が「1日着信・メールがないと寂しい」】や【ケータイ使ったプライベートの会話、直接話す? それともメール??】、【女子高生 ケータイ利用は 一日2時間 寝る間も惜しんで メールで やりとり】あたりの話も十分理解できるというもの。少なくとも自分の書込みに返事がある、メールの返事が着信すれば、「自分が一人ぼっち」という感覚からは逃れることができるからだ。
特に10代の値が飛びぬけて高い値を示している点については、元々若年層が持っていた性質(生物学的に「群れを成していた方が生存確率が高くなる」という点にはじまり、義務教育上集団生活時間が長い事、行動力が小さく判断力にも劣るため、集団行動を取りやすくなるなど)を起因としているものと思われる。さらにはそれがソーシャルメディアの今世代での拡大要因にもつながり、その際には便利なことこの上ない「機動力が高くいつでも『つながり』を実体験できる携帯電話」の利用を推し進めた要因と考えられよう。
同時に、ややシャイな面(他人と「直接」合うのが少々苦手)が出ているのも、「深入りし過ぎて傷つきたくない」という自己防衛本能が働いているがためのもの。まとめると「浅く広く付き合って、深入りせずに、しかもいつも『一人では無い』ことを確認したい」という心理面から、若年層、特に10代の行動性向が説明できる。
あるいは単に、10代(そして20代くらいまで)は、生まれた時からパソコンや携帯電話という「新しい意思疎通デバイス」に囲まれて育っているため、使い分けがそれより上の層と比べて上手なのかもしれないが。
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