【更新】アニメや特撮ファンの消費行動パターン
2011/08/14 12:00


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今調査は2011年1月29日から30日にかけて全国の15-69歳の男女に対してインターネット経由で行われたもので、有効回答数は4000サンプル。全国7エリアを人口構成比及び性・年代で割り付けしてあるため、地域・性・年代による偏りは最小限に留まっていると考えて良い。
また、コンテンツファンの行動・レポート内用語として
「利用」……過去一年に、鑑賞・閲読・観戦・購入などの商品やサービスを利用したことがある(無料での利用含む)
「ファン」……特定の作品に対してファンである(作品名を対象者が自由回答で記入)(世間一般的な「ファン」という言葉の認識に該当していると自認している)
「支出」……過去一年に、そのジャンルの商品やサービスに実際にお金を使ったことがある
と定義している。例えば特定コンテンツに対して「ファン」ではあるが「支出」していない(特定テレビドラマのファンで、テレビ視聴のみ)、逆に「ファン」では無いが「支出」している場合(ゲームのファンではないが好きなタレントグループが出演しているので購入する)もありうる。
今回スポットライトを当てるのは「アニメ・特撮ファン」。まずは「利用層」が関連する項目において、支出をしているか否かで区分したグラフを生成する。「利用層」には「支出層」と「そうでない層(利用しているが対価を支払った経験がこの1年では無い)」の2種類が存在する。

↑ アニメ・特撮利用層における各利用・支出項目の推定人数(万人)(複数回答)
地上波テレビを見ている「アニメ・特撮ファン」は2144万人存在するが、そこから直接支出、つまり市場形成は生まれない。地上波テレビ視聴は無料なのだから当然。パソコン経由の動画視聴は1000万人を超えているものの、支出層は200万人強。一方でDVDやブルーレイのレンタル利用者もほぼ同数だが、支出層は900万人に達している。
その他全般的な傾向としては、「テレビや携帯電話、動画などでのメディア利用における支出層は(利用層と比べると)少なめ」「具体的に自らが行動するもの、姿形が残るものには積極的に支出する」という二つの傾向が見て取れる。両者を組み合わせると、「メディア利用で作品を知り支出行動に駆りたてられ、具体的商品やサービスに手が届く」ビジネスモデルと見ることができる。
この傾向がよく把握できるのが次のグラフ。これは「利用層のうち、どの位の割合で支出層がいるのか」を算出したものだが、当然「地上波テレビ放送」はゼロ%となる。

↑ アニメ・特撮利用層における各利用・支出項目の推定人数(複数回答)(各項目利用層に占める支出層比率)
「地上波テレビ」以外でも「PC動画配信」「BSやCSなどでの視聴」「携帯電話視聴」は比較的支出層が低く、その他の項目は支出層が6-8割を維持している(「ファンクラブ利用」はやや特異な事例)。メディアからの配信で視聴者のハートをつかみ、各種関連商品・サービスで具体的(金銭面での)市場を形成する構造が良く分かる。また同時に、「地上波テレビ放送」には及ばないものの、「パソコン経由での動画配信」が、その「対象作品の公知メディア」として無視できない規模に成長しているのが確認できよう。
ところで「支出」と表現しても対象となるもので千差万別。先日から開催されているコミックマーケットをはじめとするイベントでは、交通費や会場での「薄くて高い本」などの買い物をはじめ多種多様な消費が行われ、数万円単位の支出が行われることもよくある話。一方でDVDやブルーレイのレンタルは各種サービスを活用すれば、1作品あたり数百円で事が足りてしまう。映画視聴にしても同じ映画を数回繰り返して観る機会はめったになく、1つの対象作品に対して年複数回の映画が放映されるのは稀であることを考えれば、年ベースの支出は三千円程度で収まると試算できる。
それら「支出層の各項目ごとの年間平均支出額」が次のグラフ。

↑ アニメ・特撮ジャンルにおける、該当項目での支出層の一人当たり平均支出額(円/年)
テレビ視聴オンリーの場合は支出がゼロなのは当然。「関連書籍」は平均で年間4000円強。ファンブックや設定資料集を合わせれば、大体それくらいになるだろうか。「雑誌・専門誌」は6400円程度だが、12で割れば500円強。月刊誌を毎月1冊購入し、特定の作品を追いかけていれば、勘定は合う。

各項目における「支出層人数」と「支出層における平均支出額」が出ているので、その二つを掛け合わせれば「各項目の市場規模」を概算できる。それが次のグラフ。例えば「キャラクターグッズ関連商品」が538億円とあるので、「アニメ・特撮ジャンル」において支出層が1年間に購入する「キャラクターグッズ関連商品」は538億円という次第だ。

↑ アニメ・特撮ジャンルにおける、該当項目の推定市場規模(億円/年)
もっとも大きい市場規模を誇るのは「DVD・ブルーレイの購入」で900億円強。昨今の新盤アニメ番組が、DVDの売れ行きに非常に敏感で、売れ行き次第で次回作の是非が決まるという(噂)話も、あながち冗談レベルではないことが理解できる。同時に「キャラクターグッズ関連商品」市場も500億円強と大きめで、グッズ化しやすいアイテムが多数登場するアニメを、スポンサー側が好むのも納得がいく。
「コミケ・その他イベント関連消費」は市場規模としては400億円強と大きめだが、制作側に直接還流される機会は少なめであることを考えると、コントロール可能なイベント以外では、やや扱いが難しいかもしれない。
意外なのが「BS・CS・ケーブルテレビなどでの視聴」。推定人数比率からは「無料利用層」が多数で、地上波テレビ同様に「公知・啓蒙」の領域メディアにも関わらず、市場規模は無視できない額となっている。
今件データはあくまでも汎用的、かつ調査母体内での調査結果を元にした推測値であり、すべての「アニメ・特撮ジャンル」に合致するとは限らない。作品の細かいジャンルやファン層などで、少なからぬ違いは出てくるだろう。また、「コミケ-」などの解説で触れたように、市場規模そのものは大きくとも、制作側に直接反映されにくい分野もあり、一概に「市場規模の大きな項目に注力すれば良い」という話では無い。
一方で、「地上波テレビ」をはじめとする「PC動画配信」「BSやCSなどでの視聴」「携帯電話視聴」など、無料視聴率が高いメディアは、作品の公知啓蒙、支出層・ファンの獲得の役割が強いとする観点は多くの作品に当てはまる。その点では未だに「地上波テレビ」の立ち位置は強固なものであり、同時に「PC動画配信」(有料・無料を問わずの公知メディアとしての)の可能性も十分に理解できるというものだ。
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