童話を四則演算で表してみる
2011/08/17 19:30
今回紹介するのは、あるおもちゃ屋系小売店のポスター用デザイン。概要的には記事題名にある通り、「童話を四則演算で表してみる」というシンプルなもの。多くの人が知っている素材を用い、その上で「なるほど」と思わせ新鮮味を覚えさせる内容を示している。お店の周知はもちろんだが、同時にそれをデザインした企業の力量も推し量れる、素直に感心できるデザインである(【ADS of the World】)。
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↑ シンデレラ
これはカナダのデザイン・コンサルタントを行う会社【revolve】による、やはりカナダのおもちゃを中心とした小売店「Brain Candy Toys」向け作品。おもちゃの世界の楽しさを、いわゆる「四則演算」(足し算引き算掛け算割り算)を用いて世界の童話のあらましを見せることで表現している。
↑ 少々拡大
今件は「シンデレラ」。一番上の行は「小間使いをさせられている質素な身なりの女の子に魔法使いのお婆さんを足すと、素敵なお姫様になる」。二行目は「素敵なお姫様とお城を足すと、お姫様は自分の足に履いていたガラスの靴を失ってしまう」。そして最後の行は「王子様と(お姫様が失っていた)ガラスの靴に、質素な身なりの女の子を足すと、正体が分かって二人はめでたしめでたし」という具合。かなりざっくばらんではあるが、「シンデレラ」の内容が非常に分かりやすい形で描かれているのが分かる。
今風の表現でなら「インフォ・グラフィック」的な、絵に多様な情報を盛り込んでぱっと見で多くの人に内容を、概算的に周知させる「見せ方」をしている。皆が知っている題材なだけに共感度も高く、印象の深さと記憶に残る度合いは極めて大きい。
さらにいえば「自分でもやってみようかナ」とすら思わせる、創造性の喚起すら与えてくれる。その創造性が、自分で具体的に童話の世界を手にとれるおもちゃ達への関心につながれば、「Brain Candy Toys」としては万々歳に違いない(欧米では色々なおとぎ話、空想、漫画の世界を再現できる「フィギュア」がメジャー。コレクション用としても、ボードゲームのコマ用としても、多数のものが販売されている)。
同社では他にもいくつかの童話をテーマに、同じような見せ方を用いたアピールを行っている。
↑ 上から「三匹の子豚」「ハンプティ・ダンプティ」「3匹の盲目なネズミ」
デザインの関係上、計算式部分だけを切り抜かせてもらったが、元絵はいずれも一番上のと同様に「単色の背景の中央に計算式」「下側におもちゃ屋さんの名前」が描かれている。日本では「ハンプティ・ダンプティ」「3匹の盲目なネズミ」の話はあまり知られていないが(「ハンプティ・ダンプティ」は、卵型のハンプティダンプティが塀の上から落っこちて大変なことになったが、王様の部下が総動員されても元に戻せなかったという話。「3匹の盲目なネズミ」は3匹の盲目なネズミが逃げ回り、農家のおばさんが尻尾を切り落としてしまい、それでも逃げ回り続けるというマザーグースの話)、海外では日本の「桃太郎」「浦島太郎」くらいにメジャーなお話。
既存の素材も「切り口」を変えるだけで、大いに注目・関心を集めるものが出来上がる。その観点でも注目したい作品といえる。同時に直上で例を挙げたが、日本の童話でも同じような表現方法が出来ないかと、頭に想い浮かべた人も多いのではないだろうか。
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