【更新】テーマ曲CDに原画集にゲームに…ジャンルは増えても単価は減らない、コンテンツ利用者の支出傾向
2011/08/01 06:34
博報堂DYメディアパートナーズなどは2011年7月12日、エンタテインメントやスポーツなど、主要9ジャンルのコンテンツに対する生活者の消費行動実態を把握する「コンテンツファン消費行動調査」の概要を発表した。そこには単純なファン層・利用層の数などの他に、各コンテンツへ対価を支払ったか、あるいは無料で楽しんでいるかなど、お金周りとしての「市場」を推し量る上で貴重な試算データが盛り込まれている。今回はこの公開資料の中から、コンテンツに対して消費行動を取る人達の、支出傾向の部分にチェックを入れてみることにした([発表リリース、PDF])。
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今調査は2011年1月29日から30日にかけて全国の15-69歳の男女に対してインターネット経由で行われたもので、有効回答数は4000サンプル。全国7エリアを人口構成比及び性・年代で割り付けしてあるため、地域・性・年代による偏りは最小限に留まっていると考えて良い。
また、コンテンツファンの行動・レポート内用語として
「利用」……過去一年に、鑑賞・閲読・観戦・購入などの商品やサービスを利用したことがある(無料での利用含む)
「ファン」……特定の作品に対してファンである(作品名を対象者が自由回答で記入)(世間一般的な「ファン」という言葉の認識に該当していると自認している)
「支出」……過去一年に、そのジャンルの商品やサービスに実際にお金を使ったことがある
と定義している。例えば特定コンテンツに対して「ファン」ではあるが「支出」していない(例えば特定テレビドラマのファンで、テレビ視聴のみ)、逆に「ファン」では無いが「支出」している場合(ゲームのファンではないが好きなタレントグループが出演しているので購入する)もありうる。
今調査では代表的な9つのコンテンツジャンル、具体的には「ドラマ・バラエティ」「アニメ・特撮」「マンガ・小説」「映画」「音楽」「ゲーム」「美術展・博覧会」「野球(プロ野球)」「サッカー(Jリーグ)」「タレント・人物」を定義。それらに対する「利用」数を尋ねている。結果としては、一つも該当しない人は19.1%、一つ以上の利用者は80.9%。平均で4.2ジャンルのコンテンツを利用している計算となった(利用者ベースでの一人当たり合計支出金額は7万4502円)。
↑ 9つのコンテンツジャンルへの利用数(択一)
「利用」には無料のサービス利用、例えば該当ジャンルのテレビ番組視聴も含まれるのだが、2割近い人が利用を自覚していないのは、少々意外な気がする。
さて「利用」層の多くが同時に「支出」層となりうるが(【無料で楽しむファン、ファンではないが支出する人…エンタメとお金との関係】でも示したような、「ファン」層と「支出」層との違いでは無い事に注意。「支出」層は全員「利用」層でもある)、「利用」数が増えても1ジャンルにかける支出額には大きな変移が見られないことが明らかになっている。
↑ 利用ジャンル数別コンテンツ総支出額/1ジャンルあたり平均支出額(利用層ベース)
「9個」が飛びぬけているのは可処分所得の大きい人達によるものか、あるいは高額支出(「ドラマ・バラエティ」ならロケ地旅行、「アニメ・特撮」ならコミケなどのイベント消費)が影響しているものと思われる。ともあれ、利用コンテンツが増えても、1ジャンルあたりの支出額がそれに伴い減る傾向は見られない。記事題名にあるように、「アニメ・特撮」において、テーマ曲CDを買ったり、原画集を手に入れたり、アニメを題材にしたゲームをプレイするなど、一つのファン行動による支出が、他のジャンルに波及する(またがる)可能性は十分にある(いわゆる「メディアミックス」)。
また、まったく別個のもの(アイドルグループのファンでイベントに参加したり音楽CDを買うが、同時に漫画好きで特定作品の掲載雑誌購入は欠かせない)に対する利用・支出においても、総額が頭打ちとなり、ジャンル数が増えるにつれて一つひとつのジャンルの支出額が減る傾向は確認できない。「これが欲しいからこれは我慢」という総額規制的な動きは見られない。
一部ジャンルの消費行動において、「マニア(オタク)は金使いが荒い」「マニア層のお財布を当て込んだ商売だよね」と揶揄する表現を見受けることがある。しかし【販売ビデオを支えるコア層・ビデオソフトの販売実態】などにも表れているように、個々において「本当に好きなモノ」に対する惜しみない支出行為は、どのような場面でも見られるものであり、蔑視されるものはそれがコア層・マニア層・オタク層であるに過ぎない。
「お金を出す価値があると判断したから、お金を払って購入する」。当たり前の話だが、その言葉の中にある「価値」とは、個々の「好き嫌い」で決まる場合が多い。そして「好き嫌い」が何であるかを考えれば、強い熱意を持ったコア層、ファンの人達が意欲的に消費を行うのも十分に理解できるはずだ。
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