お値打ち・長持ち・安全、そして新たな視点は「こんなこともあろうかと」と「社会のために」…震災後の商品ニーズとは

2011/08/03 06:36

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長持ち保存食ノルド社会環境研究所は2011年7月21日、東日本大地震発生後4か月ほどが経過した状況下における、生活者の意識・行動変化に関する調査結果を発表した。それによると調査母体においては、商品やサービスを選ぶ際にもっとも多くの人が重視している要件は「手頃な価格」であることだった。ほぼ同率で「長持ちする」「安全性が高い」が続いている。また、震災後に重視するようになった項目としては、「いざという時に役立つ」「購入が社会貢献につながる」など、「将来において役立つ」「皆のために役立つ」項目に、特に留意されていることが分かる(【発表リリース、PDF】)。



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今調査は2011年7月1日から5日にかけて全国の20-60代の男女に対してインターネット経由で行われたもので、有効回答数は1000人。男女比・年齢階層比(10歳区切り)で均等割り当て。

社会生活上の必然性や現状における規制など周辺環境によって差異はあるものの、震災を経て多くの人がエネルギー消費に対し、より深い注意を払う傾向が確認できる。

↑ 震災後の家庭でのガソリンの節約状況(自動車保有者対象)
↑ 震災後の家庭でのガソリン・ガス・電気の節約状況(それぞれ保有・利用者対象)(再録)

それでは商品やサービスの選択性向にはどのような変化が見られるのだろうか、という点が今回スポットライトを当てるテーマ。商品・サービスの選択時にどのような点に重視しているかについて、「震災前から重視していた」「震災後に重視するようになった」それぞれ複数回答で聞いた答えが次のグラフ。

↑ 商品やサービスを選ぶ際の重視点(震災後4か月経過時点)
↑ 商品やサービスを選ぶ際の重視点(震災後4か月経過時点)

各項目とも「震災前から」と「震災後に」を足した値が、「現在の重視点」。例えばトップの「手頃な値段」は「77.5%」+「11.7%」で「89.2%」の人が「現在」商品・サービス選択時に重視しているという計算になる。

元々トップ3、すなわち「手頃な値段」「長持ち」「高安全性」は上位についていたが、それぞれの間にはそれなりの差異がみられた。ところが震災を経て、値段よりも長期保存性、そして高安全性への注目度が高まり、新たに重視する人がそれぞれ注目度に比する形で増加。結果としてトップ3項目の差異がほとんど無い状態となった。

元々商品やサービスの選択には「手頃な値段」が最上位に来ることが多いのだが、汎用的な設問で「長持ち」「高安全性」が「手頃な値段」とほぼ同列に並ぶという話は、あまり見たことがない。これは震災の経験から多くの人が「長期保存性」と「高安全性」についての考えをあらため、一層注力するようになった結果によるものと思われる。

人と人同様に『いざという時に役立つ』、そして「環境負荷が低い」「購入が社会貢献に繋がる」つまり『皆のために役立つ』という2つの観点で、大きな注目が集まり、商品ニーズにも反映されたのが分かる。この2観点・3項目は「いざという時」という時系列的な方向性と、「皆にとって」という集団社会的方向性という形で、向かうベクトル・次元は異なるものの、いずれも「今の自分」ではなく、それを起点として向かう先への「差し伸べる手」と表現できる共通点がある。もっとシンプルにすれば「自分の足元だけではなく、周囲を、未来を見渡して考えている」ということだ。



震災を境にして商品に「安全性」「長期保存性」を求める声が強くなったのは、他のアンケート調査結果や商品紹介記事に対するリアクションから、有る程度つかみとれるところはあった(【震災と長期保存食品の話】)。今回の調査結果はそれを裏付ける形のもので、その視点からは貴重なものといえる。同時に「今の自分」のためだけでなく、「将来への備え」と「自分以外の人のため、社会全体のため」という意識が強く付加されたのは注目に値する。

この動きが持続性を持ち、新たな習慣として浸透するのか、あるいは時の流れと共に薄れ、また以前のような状況に戻るのか、現時点では判断は難しい。しかし一つの指針として、注視しておくべきなのは間違いあるまい。


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