想定外だった震災の企業への影響、トップは「計画停電」

2011/07/30 06:45

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想定外の出来事NTTデータ経営研究所は2011年7月19日、東日本大震災を受けた企業の事業継続に関する意識調査結果を発表した。それによると調査母体の企業において、今般震災でもっとも想定外の事象は「電力施設の機能低下による計画停電」だった。4割強の人が同意している。次いで「交通インフラ機能低下による帰宅・出勤困難の発生」「過度な自粛ムードによる消費・購買力の停滞」が3割強で続いている。規模の大きい企業ほど停電や交通インフラ、小さい企業ほど自粛ムードの影響が想定外だったと強く感じていることも確認できる(【発表リリース】)。



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今調査は2011年6月10日から14日にかけてインターネット経由で行われたもので、有効回答数は1020人。対象地域は関東が52.7%・近畿18.8%・中部11.8%など。所属する企業規模は従業員99人以下が33.8%・100-499人22.8%・500-999人7.1%・1000-4999人16.5%・5000人以上19.8%。回答者の役職は経営者・役員クラス16.8%・事業部長や部長クラス29.2%・課長クラス54.0%(今調査では回答者が属する企業に関する回答となる)。

2011年3月11日に発生した東日本大地震及びそれに連なる各種震災・人災は、未だに多方面へ多くの傷跡を残し続けている。本震のマグニチュード9.0という規模は日本国内での観測史上初の大きさであり、通常の各種天災に対する備えの範囲を超えて被害を受けてしまったところも少なくない。

今調査母体の企業において、各種震災の影響で想定をはるかに超えた影響を実感した事柄について、複数回答で聞いた結果が次のグラフ。電力をはじめとするエネルギー系インフラのトラブルに対する値が、全般的に多いのがうかがえる。

↑ 想定外だった震災後における状況
↑ 想定外だった震災後における状況

【電力不足による経済の動き、需要よりも供給が縮小との見通し】にもあるが、電力は血流に他ならず、「エネルギー(電力)なくしての産業活動はない。電力不足=産業停滞と捉えるべき」。だからこそその電力が「ごく当たり前のように供給されない」事態は、「ありえない非日常」だったに違いない。

今調査は6月上旬以降に行われている。本震から2か月経過した調査時点でも電力需給問題の根本的な解消がなされていないことも、「想定外」を認識させるのに十分な状況といえよう。

一方で各項目の中でも、企業規模で想定しえたもの、想定できなかったものの範ちゅうが微妙に異なるものもある。次のグラフは上位3項目を企業規模(従業員数で区分)別に再構築したものだが、冒頭で触れたように「電力・交通インフラなどの基軸インフラの機能低下」は大企業ほど、自粛ムードによる顧客の消費低下は中小企業ほど「事前に予想できなかった」としている。

↑ 想定外だった震災後における状況(従業員数別、上位3位について)
↑ 想定外だった震災後における状況(従業員数別、上位3位について)

大企業ほど大規模施設を用いる関係で電力の消費も大きく、従業員も多くなるのでその人達に対する帰宅・出勤管理をまかなう必要があることから、それらを支えるシステムが大きな支障を受けるという想定はしにかったのかもしれない(多少の想定はあっただろうが、ここまでの規模は想定が難しい)。

あるいは「想定外」が「想定の範ちゅうを超えたもの」のみととらえ、「想定すらしてなかった」「考えそのものがそこまで廻らなかった」を意味するものを含めていない可能性もある。小規模企業でインフラ周りの回答率が比較的低く、直接売買に関連する自粛ムードの値が高いのは、「インフラ周りまで考える余裕など元々ない」というのが実情と考えた方が道理は通る。



想定の幅を広くすればするほど、あらかじめ用意しておかねばならない準備、いわゆる保険的な要件も増えてくる。そして想定された事象の可能性が低くなるほど、その保険が実働しない場面は増加する。実働しなかった場合、その備えを「無駄だった、損をした」と見るのか、「役に立たなくてよかったネ」とするのは当事者の考え(とリスク・コスト計算の結果)次第。

一方で「備えているのは、保険的なものは無駄だから、切り捨てるべき」と論じ、もう一方で「備えていなかったのは想定が甘すぎる」と非難するのは、いわゆる「矛盾」の典型的な事例でしかない。論理的・理性にのっとった考え方で状況を判断し、正しく適切な「想定」の元に備えをしていきたいものだ。



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