労働時間短縮1割、自宅待機など8%強…震災後のワーキングプア層の生活様式変化
2011/07/28 06:46
連合(日本労働組合総連合会)は2011年7月22日、ワーキングプア(年収200万円以下の正社員・正社員並みの働きをしている人、あるいはその世帯)に関する調査結果を発表した。それによるとワーキングプア層から構成される調査母体においては、2011年3月11日に発生した東日本大地震、及びそれに連動して発生した各種震災以降、全体的に生活が苦しくなったと認識している人は2割近くに達していた。また時短(労働時間の短縮)を受けた人は1割、自宅待機や出勤停止にされた人が8%強に達したことも分かった(【発表リリース、PDF】)。
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今調査は2011年6月28日から7月8日にかけて、携帯電話を利用したインターネット経由で行われたもので、有効回答数は1000人。個人年収が200万円以下で、家計の1割以上を負担している20-59歳の男女を対象としている。調査母体の平均勤務日数は週4.8日、平均労働時間は7.0時間/実働日。調査実施機関はネットエイジア。なお総務省の最新データによれば年収200万円未満の携帯電話保有率は53.7%(全体平均では73.6%)で、該当年収層のカバー率も同程度であることを認識した上でデータを読む必要がある。
3月11日に発生した東日本大地震は地震そのものによる影響だけでなく、津波や原発事故など多種多様な「震災」「人災」をもたらし、その多くは未だに尾を引き、復旧の歩みを遅らせている。さらに通常なら本震レベルの規模の余震も続いており、揺れへの備えは余談を許さない状況にある。人の生活活動の源となり活力となり血流となる経済活動もまた、回復の兆しは見えているものの、長い道のりを歩む必要に迫られている。
震災でこれまで以上に厳しくなった経済状況下において、より一層しわ寄せを受ける感のある今件調査母体層だが、その実態はどのようなものだろうか。気になる動向について選択肢を挙げ、該当する項目に答えてもらったのが次のグラフ。
↑ 東日本大地震・震災以降、生活や仕事にどのような影響があったか(複数回答形式)
特に影響を感じなかった人は約2/3に達している。一方で「全体的に生活が苦しくなった」という回答が2割近く。ただしこの回答は具体的な事例を挙げてのものではないため、その体感が震災を起因するものか否かがはっきりせず、一様に数字のまま受け止めるには問題がある(元々苦しさには変わりなく、「言われてみればそんな気もする」というレベルでの可能性も十分に考えられる)。また他項目、例えば「時短により実入りが減った」「賃金を下げられた」「休暇が取りにくくなった」など複数項目を同時に体感し、結果として印象的に「全体的に生活が苦しくなった」とする回答も多分にあると思われる。
具体的な項目としてトップについているのは「労働時間を短くされた」で10.3%。単純に勤め先企業の経営悪化以外に、例えば流通の混乱や部品調達の難儀さなどから工場の稼働率が下がり、それに伴い必要なマンパワーが減ったことによる時短の可能性は十分にある。また逆に、人員の削減で一人当たりの負担が増え、「各種休暇が取りにくくなった」場合も納得がいく。
時短・休暇の取得困難ならまだ救われている範囲かもしれない。「自宅待機・出勤停止にされた」という回答も8.4%と1割近くに達している。これと「解雇された」の1.4%を合わせると、実質約1割が「収入源を(一時的に)断たれた」ことになる。前者の場合は(労基法の定めにより、会社側の指示での待機であれば)6割以上の手当てが受け取れ、後者の場合は失業手当が期待できる。とはいえ、元々手取りが少ない今件調査母体層では、生活が相当厳しくなることに変わりは無い。
約1割という数が多いか少ないかは、個々の判断に委ねることにしよう。
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