店選択も時間も「理由なし」が最多…万引きの場所と時間の選択事情
2011/07/18 06:34
愛知県警は2011年6月21日、同県内における万引きに関する調査結果を発表した。万引き被疑者自身と、万引き被害者(販売店管理者など)を対象としたもので、愛知県警管轄内の事象に限定されているものの、サンプル数も多く、以前【4人に3人は「お金持ってるけど、でも」… 万引きした人の所持金と心理的背景】などで解説した警視庁発の報告書と同じく有意義、そして最新のデータが盛り込まれたものとしてチェックの価値がある内容となっている。今回はその中から、被疑者(万引き実行者)の犯行時間と場所の選択について確認をすることにした(【該当リリース、PDF】)。
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今調査は被疑者は2010年6月-9月・11月-12月、被害者は2010年7月-12月に対して行われたもので、有効回答数は被疑者1000人。被害者522店舗。区分は被疑者は少年(14-19歳)276人・中間層(20-64歳)490人・高齢者(65歳以上)234人、男女比は6対4(19歳未満は便宜上「少年」と評しているが、実際には少年少女を意味する)。被害者はコンビニ100店舗・書店99店舗・百貨店104店舗・スーパー69店舗など。
万引きの犯行場所は(被疑者回答によれば)スーパーや量販店が多く、時間帯としては少年は夕方以降、中間層以降は夕方までが多い傾向がある(【高齢者は2/3がスーパー、少年は3割が量販店で…万引きの実態・状況】から)。
↑ 犯行場所(再録)
↑ 犯行時間帯(再録)
それでは被疑者たちがそれらの場所や時間を選んだ理由は、いったいいかなるものだろうか。まずは犯行場所だが、これは約2/3が「特に理由なし」としている。次いで多いのは「店員・警備員が少ない」だが、全体では6%強でしか無い(「その他」は「自宅に近い」がもっとも多いそうだが、内訳は明記されていないので特記はしない)。
↑ 犯行店舗の選択理由
高齢者ほど「特に理由なし」が多いが、これは【計画性は子供が3割近く・高齢者1割、目的はほぼ…万引きの計画性と目的】で記した「犯行計画性」とも浅からぬ関係がある。特に計画性が無いからこそ、場所も特に理由を持たずに選んだと考えれば納得がいく。良く使われる言い回し「どこでも良かった」「何でも良かった」の類。
↑ 犯行計画性(再録)
一方で歳が若い層ほど「店員・警備員少なし」「死角少なし」などの「自分が見つかりにくい店を選ぶ」傾向が確認できる。これも計画性との連動と考えれば理解は容易い。リスクが低くなるような場を探しているわけだ。
気になるのは防犯カメラ周りの項目。今データを見る限り、防犯カメラはほとんど抑止力として働いていないことが分かる。ダミーのカメラが多いことや、カメラで常時チェックするほど人員を避くのは難しいことを知っているのかもしれない。
犯行時間帯の選択理由は、計画性と関連のある部分・無い部分が色々と混在している。
↑ 犯行時間帯の選択理由
「店員多忙時」「店員・警備員が少数時」「客雑多時」はいずれも被疑者自身が見つかりにくい状態であり、自分のリスクを減らすためにその時間帯を選んでいることになる。これは強い計画性の表れともいえる。この3項目は少年・中間層が高めで、高齢者が低め。
「自分の買い物時間帯」「理由なし」は計画性はほぼ皆無(少なくとも自分のリスクを減らすという、悪質な意味でのリスク回避ではない)であることを考えると、歳を経るほど双方の項目の合計値が高くなる=計画性の低い方が多くなるのも納得できる。さらにいえば高齢者の2割強が「自分の買い物時間帯」を選んでおり、深い考えなしに、自分の日常生活のルーチンの中で犯行に及んでしまう場合が多い事を示唆している。
店舗の選択理由に「-が少ない、無い」が多ければ、逆にそれらが「多い、有る」のならば選ばれにくい。小売店側の防犯対策としては店員・警備員を増やすか、死角を出来る限り減らすのが善策といえる。前者は予算を考えると難しいが、後者は工夫次第でそれなりの改善はできる。
もっともそれらを駆使したとしても、精々1-2割程度の「被疑者予備軍」へ「犯行場所としての選択を留まらせる」可能性が生じるに過ぎない。他方、(今回は精査を略するが)「どうしたら万引きを断念したか」という問いには7割近くが「店員からの声かけがあれば」、2割近くが「警備員の巡回があれば」と回答しているものの、前者は昨今においては誤認のリスクを考えると難しいとの意見も多く、後者は予算・店内事情の点で困難を伴うのは前述の通り。
個々の店の事情にあわせ、少しでも可能性を潰していくことが、店側にも、被疑者予備軍にもプラスとなるはずではあるのだが、実践はなかなか難しいようだ。
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