3/4は「お金を使いたくない」…万引きの動機

2011/07/15 12:00

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おサイフ愛知県警は2011年6月21日、同県内における万引きに関する調査結果を発表した。万引き被疑者自身と、万引き被害者(販売店管理者など)を対象としたもので、愛知県警管轄内の事象に限定されているものの、サンプル数も多く、以前【4人に3人は「お金持ってるけど、でも」… 万引きした人の所持金と心理的背景】などで解説した警視庁発の報告書と同じく有意義、そして最新のデータが盛り込まれたものとしてチェックの価値がある内容となっている。今回はその中から、被疑者(万引き実行者)の犯行動機を中心に確認することにした(【該当リリース、PDF】)。



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今調査は被疑者は2010年6月-9月・11月-12月、被害者は2010年7月-12月に対して行われたもので、有効回答数は被疑者1000人。被害者522店舗。区分は被疑者は少年(14-19歳)276人・中間層(20-64歳)490人・高齢者(65歳以上)234人、男女比は6対4(19歳未満は便宜上「少年」と評しているが、実際には少年少女を意味する)。被害者はコンビニ100店舗・書店99店舗・百貨店104店舗・スーパー69店舗など。

被疑者に対して犯行の動機を複数回答で聞いたところ、全体では「お金を使いたくなかった」とする回答がもっとも多く、人数では759人、回答者比では76.2%となり、3/4を超える結果となった。

↑ 犯行動機(複数回答)
↑ 犯行動機(複数回答)

次いで多いのは「孤独感から」が8.9%、「むしゃくしゃしてやった」が6.0%。しかしいずれも1割未満で、「お金を使いたくない」とする意見が圧倒的多数であることが改めて分かる。

なお「その他」がやや多めに見えるが、リリースによれば主要回答として「所持金無し」「お金が足りない」「レジに並ぶのが面倒」が挙げられる。前者二つは「お金が物理的に(足り)無い」のを意味し、「(お金はあるが)お金を使いたくなかった」項目とは別の回答。逆にいえば、「お金を使いたくなかった」は「お金が無い・足りない」ではないことが確認できる。

これを世代別に見ると、「お金を使いたくなかった」がトップという大勢に違いはないが、他の項目で世代間の差異が見て取れる。

↑ 犯行動機(複数回答)(世代別)
↑ 犯行動機(複数回答)(世代別)

「お金を使いたくない」はどの世代でも極めて高い。一方で「むしゃくしゃして」は中間層がもっとも高く、「生き甲斐が無い」「孤独」は高齢者ほど高い値が出ている。また、少年は「ゲーム感覚」とする回答が8.4%に達している。このあたりの心境は、以前の警視庁のデータ「4人に3人は「お金持ってるけど、でも」… 万引きした人の所持金と心理的背景」と変わらない(むしろ中間層でも1.2%に「認知症」を動機として挙げているのが気になる)。

先の警視庁のデータでは該当項目が無かった、「お金を使いたくなかった」理由の詳細が次のグラフ。単に「使いたくなかった」だけでは「将来が不安で、半ば仕方なくなのかな……」という想像もできたものだが、少なくとも今調査ではその考えを起因とするのはごく少数派。全体では7割が単純に「もったいない」とする回答となっている。

↑ 「お金を使いたくなかった」内訳(同項目回答者限定、単一)
↑ 「お金を使いたくなかった」内訳(同項目回答者限定、単一)

中間層では「お金を使いたくなかった」との回答者の4割近くが「生活が苦しい」としており、(あくまで本人の判断であり、本当に苦しいか否かは別として)生活苦を起因として犯行に及んだことが分かる。高齢者は1/4。

一方少年は9割以上が「もったいない」との回答で、「お金はあるけど、使うのがもったいないし、上手く行けば使わずに済むので、盗ってしまった」と答えていることになる。「商品は対価を支払って手に入れる」という、社会の基本を軽視した回答率が若年層に多いという事実は、(被疑者を調査母体とした結果であっても)大いに問題視されねばなるまい。


■関連記事:
【未成年者と高齢者の万引き推移(2010年分反映版)】



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