エコバッグの功罪…万引きと「バッグ」の関連性
2011/07/12 06:30
2011年6月21日に愛知県警では同県内における万引きに関する調査結果を発表したが、これは万引き被疑者自身だけでなく、万引き被害者(販売店管理者など)をも対象としており、愛知県警管轄内の事象に限定されているものの、有意義、そして最新のデータが盛り込まれたものとして注目すべき内容といえる。今回はその中から、被疑者(万引き実行者)の犯行と、エコバッグ・マイバッグなどの利用状況のデータを確認することにした(【該当リリース、PDF】)。
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調査対象母集団の内訳については先行する記事【4割強は「交友関係ほとんどナシ」…万引き被疑者のプロフィール】にて記した通り。
【マイバックを持ってる人は約6割、有料化には半数が賛成-環境省調査】などでも紹介しているが、買い物時の「マイバッグ」とはいわゆる「買い物袋」「買い物かご」のことを指す。2007年以降の金融不況の際に起きた資源価格高騰で、小売店の買い物を入れるレジ袋のコスト高が問題になった際、「お客が自前で買い物袋を用意しよう」という流れからブームとなった(「買い物かご」などそのものは以前から存在している)。
本来は「マイバッグ」は自分のバッグ(登校用のバッグなども含む)、「エコバッグ」は「環境に配慮したバッグ」のことで、買い物の際のバッグを指す場合は、ほぼ同意。今件では「エコバッグ」は「環境への配慮」を重点において創生された買い物専用の「マイバッグ」を指すと考えて良い。
さて「エコバッグ」は環境負荷の軽減に一役買うという話もあるが、一方で中に入っている商品が清算済みか否かの判別がつきにくいため、万引きの温床になりやすいとの指摘もある。今件調査結果でも、被疑者の約半数が「マイバッグ」「エコバッグ」を使ったと答えており、この説があながち間違いではないことを裏付けている。
↑ 犯行時の「バッグ」使用の有無
特に少年は半数以上が「マイバッグ」を利用して犯行に及んだと回答している。【高齢者は2/3がスーパー、少年は3割が量販店で…万引きの実態・状況】にもある通り、少年の目的物の多くは小物であるため、(学生かばんやスポーツバッグなどの)マイバッグに隠しやすいのも一因と考えて良い。少年に限って言えば、レジ袋削減運動で流行りとなった「エコバッグ」はほとんど関係が無いといえる。
一方で中間層・高齢層は約1割がエコバッグを利用して犯行に及んだとしている。元々万引きをするためにエコバッグ持参で店に足を運んだのか、普通に買い物をするためにエコバッグで来店して出来心で犯行に及んだのかまでは不明だが(犯行計画性は中間層が18.6%・高齢者が10.3%で「あり」としているが、エコバッグとの直接連動性に関するデータは無い)、万引き被疑者の1割がエコバッグを使用しているのは事実であり、「きっかけ」以上の働きをしたことは否定できない。
最近ではマイバッグ・エコバッグによる万引き被害防止のため、店内の買い物の際には店側が用意した買い物かごを利用してもらい、レジ精算時に「別の色の」店側用意のかごに移し替え、そのかごからマイバッグ・エコバッグに清算を終えた商品を入れてもらう仕組みを導入する店舗が増えている。
↑ 店内での買い物時と清算後のエコバッグへの移し替えの際に、別のカゴを用意する事例。これならエコバッグの利用を促進できると共に、万引き被害を防止できる
エコバッグ運動で求められているのは「店から自宅までの移動過程で必要になるレジ袋を減らせるか」であり、「店内での買い物にエコバッグを利用する」では無い。上記のような仕組みを使う事で、店側も(カゴの整理の負担は増えるが)万引きとバッグ絡みの負担が減り、衝動に駆られて過ちを犯してしまう人の悲劇も減らせるに違いない。
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【買い物かごの話】
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