「今の情報を一次ソースで」のポリシーが良く分かる広告
2011/07/08 19:30
日本では複数の大手報道機関がアンケート結果を共有して別々の分析を出したり、噂話や科学的検証もしない話を「インパクトがあるから」「手にとってもらえるような印象があるから」とばかりに大々的に伝えるなど、本来の強みであるはずの「スピーディー」「一次情報」という特性を敬遠し、タブロイド紙的な雰囲気が日に日に強くなっている感は否めない。この傾向は何も日本に限った話ではないが、一方で日本以上に「報道」としての危機感を覚えている欧米では、それぞれの機関が創意工夫を重ねて自分達の「本来の強み」を懸命にアピールし、それを実践すべく努力している。今回紹介する広告もその類で、アメリカのケーブルテレビ向けニュース専門放送局、CNNが展開したものである(【ADS of the World】)。
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↑ フランスのエッフェル塔からの中継だけど……?
やや曇りがかった広場、後ろに映るのはフランス名物のエッフェル塔。この場がフランスであることがひと目で分かる。そして手前にはCNNのプレートを付けたマイクを持つレポーター……なのだが、その顔はどこかで見たような。
そう、あえて文面で明記はしていないが、フランスのニコラ・サルコジ大統領が自らマイクを持ち、フランスから実況中継をしている場面を描写している。「大統領筋が語るところによると」「大統領報道官の弁によれば」「地元紙の伝えるところでは」などといった伝聞、二次的情報ではなく、大統領自らが・現地で・リアルタイムで語る場面を描くことにより、情報の正確さとスピード感を見事に表している。
もちろん実際にCNNが、サルコジ大統領にマイクを持たせてエッフェル塔の前からレポートさせるということはあり得ない。しかしこのような状況描写で、CNNがどのような報道を求めているのか、その意気込みは十分に伝わってくる。右上のコピー「Live from the source.(リアルタイムに、一次情報を)」もその気合いの入れようを後押しする。
CNNでは同じコンセプトで、他の国々のトップにご登場願っている。
↑ 上からロシア、アメリカ合衆国、そしてドイツ
ドイツは「象徴的な建物」がやや分かりにくいかな、という感はあるが、ともあれ「現地からライブで一次ソースの情報」という、CNNが語りかけたいポリシーがじわじわと伝わってくる。
本人にこれらの広告を再現してもらうのは流石にムリだが、「そっくりさんを雇って、このシーンを真似てもらうのはありかも」と思えてくる。それほどまでに、ユーモアのセンスも持ち合わせた、しびれる広告といえよう。
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