震災以降の家計の寄付金の動き
2011/06/04 12:00
先日第一生命経済研究所から発表されたレポート【急増する家計からの義捐金(PDF)】には昨今の東日本大地震絡みで興味深い話が2つほど指摘されていた。一つは義捐金(義援金)に該当する、総務省の「家計調査」における「寄付金」項目の動向、そしてもう一つは厚生労働省が5月から定期的に発表している被災地三県(岩手・宮城・福島)における雇用情勢動向である。今回はそのうち前者、「寄付金」項目についてグラフを再構築し、眺めてみることにする。
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データ取得元は総務省統計局の「家計調査」(e-Stat経由)。そこから「月次」データが唯一揃えてある「家計支出編・二人以上の世帯」から「月次」「日別支出」「6-16 品目分類による日別支出 二人以上の世帯・勤労者世帯」のファイル内の「953 寄付金」が該当する項目になる。ここからデータを抽出し、二人以上世帯における一日ごとの平均寄付金額推移を2011年3月以降4月末までの推移でグラフ化したのが次の図。
↑ 二人以上世帯の家計で支払われた寄付金推移(2011年3月-4月、円/日)
月末にややイレギュラーな値が出てしまっているが、東日本大地震の本震である3月11日にはゼロを記録し、それ以降はそれ以前と比べて高い値を示していること、1か月を過ぎたあたりでとび抜けた値は少なくなるものの(過熱感がやや醒めてきた)、本震以前と比べてれば高水準を継続維持しているのが分かる。
この動きを上のグラフ「二人以上世帯」と、そのうち「勤労者世帯」に限定したもので再構築したのが次のグラフ(4月30日はイレギュラーな値で、グラフ生成の上で見難くなるため、あえて除いた)。「二人以上世帯」は「勤労者世帯」と「非勤労者世帯(その多くは高齢年金生活者)」だから、このグラフの動きを見れば「高齢者世帯」の寄付行動の動向もすけて見えてくる。
↑ 二人以上世帯の家計で支払われた寄付金推移(2011年3月-4月29日、円/日)
4月の第2週目くらいまでは、押し並べて「二人以上」>>「うち勤労者」という構図になっている。つまり「二人以上」の非勤労者世帯、とりわけ高齢者世帯が多額の寄付金をしていたものと考察できる。これは興味深い動きと言える。
「興味深い」といえば、地域別の寄付金の違いも興味深い。2011年3月-4月における、県庁所在地別の二人以上世帯における寄付金額合計を集計し、4000円以上の地域をリストアップしたのが次のグラフ。
↑ 二人以上世帯の家計で支払われた寄付金推移(都道府県庁所在市別、2011年3-4月、4000円以上)
トップの東京都区部は企業が集中しており震災の影響を直接・間接に感じ得たことなどもあろうが、第二位にはかつて阪神・淡路大震災を経験した神戸市がついているのが目に留まる。支援活動報道の中でも「かつての恩返し」という言い回しを何度となく目にしたが、このデータにもそれが現れている。
また上位層を良く見ると、
・直接、あるいは身近に被災した地域……千葉市、盛岡市、長野市(※3月12日発生の「栄村大地震」)
などが確認できる。本震と何らかの形で一体感を覚えるような地域では、寄付行為も積極的になるということか。
元記事では昨年末の「タイガーマスク運動」をきっかけに「寄付行為」に対する機運の下地が出来ていたことや、その寄付行為を円滑に行うための制度構築の必要性、さらには寄付金が有効に支援先で使われるために、被災地域での持続的な購買力の構築、すなわち雇用問題の解決により「お金が回る」ことが必要だと指摘している。
↑ 二人以上世帯の家計で支払われた寄付金推移(2010年12月-4月、円/日)(タイガーマスク運動時は極端なデータが出てしまっているが、これは高齢者世帯によるところが大きい)
被災地の雇用情勢については別の記事で解説するが、昨今の雇用情勢もあり、状況は非常に悪い状態にある。県や地域レベルではなく、国レベルでの可及的速やかな対応が求められているのはいうまでもない。
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