生徒・学生の平均通学時間は1日往復53分・高校生は長めの傾向(最新)
2021/06/09 04:22
大人が就職先に毎日通勤するのと同様に、子供は学校に毎日登校し就学を果たすことになる。小中学時代は義務教育のためにおおよそ居住地域近辺の公的学校への通学となるが、高校では義務教育課程からは外れるため、自宅から距離のある学校へ通う人も出てくる。中には一人暮らしをはじめて通学する人もいるだろう。今回はNHK放送文化研究所か2021年5月21日に発表した2020年国民生活時間調査の報告書を基に、学生の通学時間に関する項目にスポットライトを当て、その実情と過去からの推移を確認していくことにする(【発表リリース:「2020年 国民生活時間調査」結果概要】)。
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少しずつだが伸びていた通学時間
今調査の調査要項は先行記事【大きく減ったテレビを見る人、しかし高齢者は相変わらずほとんどの人が見ている(最新)】で記載済みなのでそちらを確認のこと。また、今件における時間表記は「時間:分」となる。例えば3時間45分なら「3:45」。
学生時分は「学校が自宅の隣にあれば遅刻もしなくて済む。より長く寝ていられる」との妄想を抱いた人も少なくあるまい。しかし現実にはそのような夢の環境で生活している人はごく少数で、大抵は少なからぬ通学時間をかけて学校へ通学することになる。今調査では直近年における生徒・学生全体(小学生から大学生まで)の平均通学時間は往復53分。片道26分強をかけての通学との計算になる。なお大学生は高校生までのように平日の通学が事実上義務化されているわけではないので、値をグラフに反映させていない。
↑ 通学時間(平日、行為者平均時間、学校種類別、時間:分)
2015年まではいくつかのイレギュラーが見られるが、おおよそ通学時間は伸びているように見える。それだけ遠くの学校に通うようになっていたのか、交通機関が複雑化しているのか。
他方2020年ではどの学校種類でも通学時間は大きな減少を示している。特に生徒・学生全体の減少度合いが著しいが、これはグラフでは反映されていない大学生の値が大きく縮んだからに他ならない。2020年で大幅な通学時間の短縮が生じたのは、自宅から学校までの距離が縮んだ、交通機関が整備されたなどではなく、新型コロナウイルス流行により長距離通学者を中心に休学や在宅学習となったからではないかと思われる(今件値は行為者の平均時間で、通学をしなかった人はゼロとして計算されるわけではない)。
直近分について回答者の属性別に見ると、いくつかの特徴が確認できる。
↑ 通学時間(平日、行為者平均時間、属性別、時間:分)(2020年)
小中学生と比べて高校生の通学時間が長いのは、公立小中学校の場合は学区単位での通学となり、自宅近辺での就学が原則となるからに他ならない。高校ではそのような取り決めが無いため、遠場の学校への就学率も高くなり、当然通学時間も伸びる。電車で通学する高校生も多いだろう。
また都市規模別では東京圏より大阪圏の方が通学時間が長い。大阪圏の方が(主に高校における)就学先学校に強いこだわりを持っているのだろうか。他方、一般都市区分では5万人未満の市町村で長めの傾向が出ている。新型コロナウイルス流行という特殊事情をかんがみれば、地方の場合は学校が休校なり在宅学習とはならなかった割合が多いのかもしれない。
登校タイミングは変化をしているのか
経年ではわずかずつではあるが、通学時間が伸びていたことが確認できた。それでは通学のタイミングには変化が生じているのだろうか。通学行為者における、通学行為率の動向を、平日の15分区切りで確認したのが次のグラフ。朝時間帯の登校時と、夕方時間帯の下校時に分けている。なお通学行動は「自宅と学校の往復」と定義されているため、部活動などで授業の終業後も学校に残っている場合もあることから、遅めの時間も行為者率が生じている。あるいは学校から自宅に戻らずそのまま塾に足を運び、その後に帰宅する人も想定される。
↑ 通学行為者率(平日、朝時間帯、生徒・学生、調査年別)
↑ 通学行為者率(平日、夕方時間帯、生徒・学生、調査年別)
まず登校時だが、ピークは7時45分から8時。ピーク時の登校率は前回調査分の2015年に至るに連れて少しずつ上昇し、それ以前の時間帯もおおよそ増加を示していた。一方、ピーク時以降は逆に、昔の方が高い値を示しており、登校時間が少しずつ早まっていたようすが分かる。
そして直近の2020年では明らかにこれまでは大きなずれが生じ、ピークは7時30分から7時45分となり、ピーク前の通学行為者数が増え、それ以降が大きく減っている。通勤・通学ラッシュに巻き込まれることによる感染リスクを避けるため、意図的に登校時間を早めた結果が出た可能性がある。
他方下校ではピーク時間はおおよそ16時台で変化はなかったものの、それ以降はいくぶん直近につれてやや通学行為者率が落ちていたようにも見える。ただし登校時のように、法則を特定付けるまでの動きとは言い切れない。他方2020年では明らかにピーク時間が早まり、ピーク時間前の通学行為者率が増え、ピーク時間後が減るという、登校時と同じパターンが確認できる。これも通勤・通学ラッシュを避けるため、そしてあるいは学校における部活動が停止されて授業が終わった後は自宅に直帰できる人が多くなったからかもしれない。
あまりに長い通学時間は生活、学業上の負担となるが、学生生活においては通学時間もまた、貴重で楽しい時間ともいえる。電車やバスの通学における、朝のラッシュ時はさすがに体力・精神ともに消耗してしまうが。無理をせずに自分自身のライフスタイルに合わせ、有意義な時間として活用してほしいものだ。
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