女性10代は平日ゼロ…新聞購読率は全年齢階層で減少中(最新)
2021/06/10 04:05
従来型の4マスメディアの中でも、文化形成の象徴であると自認し、昨今では消費税に絡んだ軽減税率の話の中で大いにその意義を再認識させることとなったのが、メディアとしての「新聞」。雑誌同様にデジタルツールの普及浸透に伴い、紙媒体の弱点が露呈される形となり、利用者の減少とともに業界規模は縮小し、売上も低迷している。今回はNHK放送文化研究所か2021年5月21日に発表した2020年国民生活時間調査の報告書を基に、新聞の購読状況の現状と、過去からの推移を確認していくことにする(【発表リリース:「2020年 国民生活時間調査」結果概要】)。
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男性10代の新聞購読率は平日4.3%、70歳以上では64.5%
今調査の調査要項は先行記事【大きく減ったテレビを見る人、しかし高齢者は相変わらずほとんどの人が見ている(最新)】で記載済みなのでそちらを確認のこと。また今件における新聞行為者率(≒新聞購読率)は、該当日に15分以上新聞を読んだ人の割合を意味する。この新聞は自らが購入したものに限らず(その意味では閲読率との表現の方が正しいかもしれない)、一般紙の朝刊だけでなく夕刊、さらには業界関係紙、広報紙、そしてチラシや電子版までをも含む。紙媒体としての新聞は購読していないが、電子版を読んでいる人も、今件の新聞行為者に該当する。要は回答者が定義の説明を受けた上で新聞を読んでいると自認し、それを15分以上継続した人の割合である。
まずは直近となる2020年の新聞行為者の実情。年齢階層別・曜日別の実態と、平日の男女別は次の通りとなる。
↑ 新聞行為者率(男性、曜日別)(2020年)
↑ 新聞行為者率(女性、曜日別)(2020年)
まず曜日別だが、男性の生徒・学生や就業者は平日では多忙で新聞を読み機会を得にくく、土日によく読むイメージがある。通勤・通学の際の時間つぶしのツールは、すでに新聞から携帯電話、スマートフォンにシフトしてしまっている。実際にはおおよそそのイメージ通りで、就業者は低めで40代までは低く、50代ぐらいから新聞行為者率は増えてくる。しかし50代までは平日よりむしろ土曜の方が値が低いため、単に通勤・通学の際の時間つぶしのツールとして新聞が読まれなくなったのではなく、新聞を読む習慣そのものが薄れている感は強い。逆に60代以降は土曜の方が高い値となり、日曜は平日とさほど変わらないため、まだ新聞を読む習慣そのものが残っており、単に通勤などの時に読んでいないのかもしれない。
男性ではかつて、平日でも土日と同じ程度の新聞行為者率を示していた。恐らくは新聞を読む習慣が根強く浸透しており、通勤・通学においても、自宅でも読んでいたのが値に反映されたのだろう。取得可能なもっとも古い1995年における男性の新聞行為者率は次の通り。
↑ 新聞行為者率(男性、曜日別)(1995年)
しかし携帯電話、特にスマートフォンの普及に伴い、その立ち位置を奪われてしまった、さらには新聞を読む習慣そのものが薄れてしまった感はある。
直近2020年の動向に戻るが、女性の場合は元々男性と比べて新聞行為者率が低いのだが、40-50代に限れば逆に女性の方が高い結果が出ている。直近年分の男女別の新聞行為者率を見たのが次のグラフ。
↑ 新聞行為者率(平日、男女別)(2020年)
家事などでのすき間時間に読む機会を設けているのだろうか。パートタイムの出勤時に新聞を読むことはあまり考えにくいのだが(女性の兼業としてのパートタイムは大抵において徒歩や自転車などでの通勤可能範囲内。あるいは自家用車を用いるにしても新聞を読みながらという状況は想定し難い)。
もっとも40-50代(さらには60代)での男女差はごくわずかなものに過ぎない。むしろ女性で10代はゼロ%、20代でも0.6%しか平日に新聞を読んでいないという実態の方が驚きではある。
新聞行為者率は漸減中
続いて経年変化。まずは男女年齢階層を問わず、全体の値の推移。
↑ 新聞行為者率(曜日別)
かつては通勤の友だった新聞の実情を表すように、平日の方が行為者率は高かった。それが2005年の時点では土曜の方が上となり(2000年の時点ではまだわずかに平日の方が上)、以降その状態が続いている。通勤時に欠かせない存在としての新聞のトップポジションは2005年あたりから揺らぎ始めたと見てよいだろう。
他方、土曜が平日よりも上回るなどの順位変動はあれど、各曜日における行為者率の経年による減少ぶりにはあまり変化が無い。ほぼ一様に減っている。そして2010年から2015年にかけての減少度合いは、これまでとは異なり、より大きな割合での減少であることが分かる。スマートフォンの普及とインターネット上における情報配信の侵透はまさにこのタイミングで起きており、シェアを奪われた結果が数字となって表れている。
さらに2015年から2020年においては、日曜における値が急激に減っているのが確認できるが、日曜出勤というケースはあまり考えにくいことから、自宅で新聞を読む機会が大きく減った、つまり世帯単位で新聞を定期購読する人が大きく減ったという推定が成り立つ。
続いて年齢階層別の経年動向。
↑ 新聞行為者率(平日、男性、年齢階層別)
↑ 新聞行為者率(平日、女性、年齢階層別)
まず男性だが、50代までは一様に下げ傾向で推移し、その傾向が2020年まで継続している。中年層までの新聞離れは前世紀から起きていたことになる。60代以降は2010年まではほぼ横ばいで、70歳以上に限れば増加する気配すら見せていたものの、2015年ではともに大きく下落。2020年も60代は下落を続け、減少傾向は50代までではなく60代までと表現できる形となった。70歳以降は2020年がほぼ横ばいなので様子見だが、長期的に見れば漸減とも解釈できる動き(もっともそれより下の年齢階層の動きと比べれば誤差の範囲)。
他方女性は中年層以降で「高年齢層ほど高い新聞行為者率」が当てはまらず、むしろ50代や60代の方がよく新聞を読む傾向があったものの、2005年以降は50代が40代以下同様に下落の動きに転じる形となる。60代と70歳以上は横ばいで高い値を推移していたが、2015年では60代が大きく下げ、それより下の年齢階層同様に下落の動きを示している。ただし男性の高齢層ほど大きな下げではない。2020年では60代までは一様に下げ続け、70歳以上が横ばいで維持し、結果として男性同様に「高年齢層ほど高い新聞行為者率」となった。70歳以上に限れば長期的にはむしろ微増とも解釈できる、稀有な動きではある。
軸の取り方を変え、調査年別の動向を見ると、全体として新聞行為者率がどのように落ちているのかがよくわかる。
↑ 新聞行為者率(平日、男性、調査年別)
↑ 新聞行為者率(平日、女性、調査年別)
高年齢階層でいくぶんクロスが生じているが、ほぼきれいな形で直近に近づくに連れ、各年齢階層とも同じような比率で行為者率が落ちていく(2020年において新型コロナウイルス流行という特殊事情下で、急激な下落あるいはこれまでの傾向とは反しての増加が無かったのは意外)。また、2010年と2015年の間の幅が大きく、特に男性において開いており、この5年間で大きな減少が起きたのが分かる。グラフ化は略するが、年齢階層ではなく世代の動向を見ても、多くの世代でじわりと下げ、そして2015年には大幅な下落が起きているのが確認できる。
一方で高齢層では各年の棒グラフの幅が狭く、他年齢階層と比べると減少度合いが小さいことも確認できる。若年層・中年層と比べ、高齢層が新聞にこだわるようすがうかがえよう。
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