ラジオを聴く人は約1割、平日は前世紀から半減近く(最新)

2021/06/08 05:23

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2021-0528映像も配信できるテレビには情報量の面で太刀打ちできないものの、ラジオもまた利用ハードルが低く、ながら聴取ができる電波メディアとして多くの人に愛されている。さらに先の震災ではその機動力が十分に発揮され、多くの人から新たな信頼を勝ち取ることもできた。今回はNHK放送文化研究所か2021年5月14日に発表した2020年国民生活時間調査の報告書を基に、ラジオの聴取動向の現状や推移について確認していくことにする(【発表リリース:「2020年 国民生活時間調査」結果概要】)。


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今調査の調査要項は先行記事【大きく減ったテレビを見る人、しかし高齢者は相変わらずほとんどの人が見ている(最新)】で記載済みなのでそちらを確認のこと。

次に示すのは調査各年における、ラジオの行為者率。「行為者」とは指定された行動(今件ならばラジオを聴くこと)を実際に15分以上連続して行った人のこと、「行為者率」は指定された時間に該当行動を15分以上した人が、属性対象人数に対しどれほどいたのか、その割合を意味する。また今件のラジオには物理的なラジオ機器以外に、カーラジオはもちろん、らじる★らじる、radiko(ラジコ)経由からの聴取も該当する。

今調査によればラジオの行為者率は直近年の2020年では10%近く。4マスのうち受動的メディアとして並べられることの多いテレビと比べれば随分と低い値にとどまっている。一方、ラジオもテレビ同様に、時代の経過とともに行為者率の減少傾向を見せている。

↑ ラジオの行為者率
↑ ラジオの行為者率

年齢階層別に動向を確認すると、いくつかの属性でぶれが生じてはいるが、どの年齢階層でも押しなべて時代の流れとともに行為者率が減る傾向が見て取れる。破線矢印は特定世代の20年におけるシフトを示したもの。

↑ ラジオ行為者率(平日、男性、年齢階層別・調査年別)
↑ ラジオ行為者率(平日、男性、年齢階層別・調査年別)

↑ ラジオ行為者率(平日、女性、年齢階層別・調査年別)
↑ ラジオ行為者率(平日、女性、年齢階層別・調査年別)

高齢者部分にややばらつきがあり、70歳以上になると減少する調査年もあるが、大勢としては「年を取るに連れてラジオ行為者率が増加する」「時の流れとともに行為者率そのものが減少している」との解釈で間違いない。

これらの流れを見るとラジオ行為者率の変化は、若年-中年層で特に大きく起きているのが見て取れる。理由はいくつか考えられるが、例えば「ラジオコンテンツの若年層のニーズとの剥離」「テレビのながら視聴の増加で、ラジオがその座を奪われてしまった」「若年層が時間を費やすメディアが多様化し、ラジオの優先順位が下がった」などが挙げられよう。

また、グラフ中矢印でいくつか動きをトレースしているが、年齢階層ではなく世代で動きをトレースすると、「同じ世代の人が年を取ると、ラジオを聴かない人が増える」ようすが分かる。例えば男性20代・2000年の行為者率は12.5%。10年経過すると2010年では30代になるわけだが、もし同じようにラジオを聴取し続けていれば「男性30代・2010年の行為者率は12.5%」でなければならない。しかし実際には10.0%と、2.5%ポイントも減少している。

テレビの行為率の時に行った手法同様、直近年の年齢階層を基準として、10年単位で過去にシフトした際の同一「世代」の値を取得してグラフに収めたのが次の図。

↑ 直近年の各年齢階層における過去のラジオ行為者率との比較(男性、平日)(2020年)
↑ 直近年の各年齢階層における過去のラジオ行為者率との比較(男性、平日)(2020年)

↑ 直近年の各年齢階層における過去のラジオ行為者率との比較(女性、平日)(2020年)
↑ 直近年の各年齢階層における過去のラジオ行為者率との比較(女性、平日)(2020年)

上記折れ線グラフの破線矢印における傾斜度合いからもある程度推測はできるのだが、男性ではおおよそ一様に年を取ることによるラジオ行為者率は継続されず、現在に近づくにつれて減少していく(破線矢印の傾斜度合いが急)。ところが女性では多数の世代において、行為者率がある程度維持される動きが生じている、言い換えれば下落が最小限にとどまっているようすがうかがえる。男性よりも女性の方が、長きにわたりラジオを愛聴しているようだ。



東日本大地震により4マスの中ではメディア単位との観点において、ラジオが大きく見直されるようになった。地震をきっかけにラジオを押入れや物置から引っ張り出して聴き入り、そのまま習慣化してしまった人も少なくあるまい。また「有益性」との点でも「ラジオは頼りになる」との認識を覚えた人も多いだろう。2020年に限れば一部属性で2015年と比較して行為者率が増加する動きを示しているが(世代における年齢経過でも2010年から2020年への動きにおいて、例えば女性の40-50代で)、新型コロナウイルス流行による巣ごもり化現象が、ラジオ聴取に影響した結果が数字となって表れた可能性はある。

余談ではあるが。年齢階層ではなく職業別で区分をした、行為者の視聴時間を示したのが次のグラフ。

↑ ラジオ行為者率(平日、職業別)(2020年)
↑ ラジオ行為者率(平日、職業別)(2020年)

↑ ラジオ聴取時間(行為者限定、平日、職業別、時間:分)(2020年)
↑ ラジオ聴取時間(行為者限定、平日、職業別、時間:分)(2020年)

就業していない人は自由な時間が多く取れるので行為者率が高いのは当然だが、就業中でもある程度自由な行動が取れる職業ほど行為者率が高い傾向ある。農林漁業者が一番高い値を示すのは、ラジオを聴きながら農作業などをするスタイルの人が多いのだろう。またラジオを聴いている自営業者や主婦は、長時間聴き続けていることがうかがえる。逆に学生は短時間しか聴いていない。興味深い実情には違いない。


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