津波避難時の持出品、「現金」「通帳などの貴重品」「携帯電話」
2011/05/08 06:53
サーベイリサーチセンターは2011年4月28日、東日本大地震に関する宮城県沿岸部における被災地アンケートの調査結果を発表した。それによると本震発生後に(津波から逃れるために)避難した際の持ちものとしては「現金」「通帳などの貴重品」「携帯電話」がほぼ同数でそれぞれ4割近くに達していた。次いで「保険証」が多く1/4を占めている。一方、避難時の移動手段としては「自分で歩いて」「自分で自動車」が3割強ずつに達しており、「自動車に乗せてもらった」が2割足らずで続いている(発表リリース)。
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今調査は2011年4月15日から17日にかけて、宮城県沿岸部(8市町18避難所)(南三陸町、女川町、石巻市、多賀城市、仙台市若林区、名取市、亘理町、山元町)を対象に、避難所に避難中の20歳以上の男女に対し、質問紙を用いた調査員による個別面接調査法で行われたもので、有効回答数は451人分。
今調査母体では6割近くの人が本震後に大津波警報を認識し、3割の人が「すぐに避難しなければ」と判断している。
↑ 大津波警報への対応・判断(全員比)(再録)
一方で余裕時間の見通しについては(場所や警報認識の有無にもよるが)人によってまちまちで、何も持たずに逃げ出さねばならないくらいの判断をしている人が1/4ほどいる一方、余裕がある、あるいは来ることすら予想していなかった人もかなりの数に登っている。
↑ 津波到達までの余裕時間の見通し(再録)
余裕時間の見通しや実際に避難を始めるまでの時間によって多分に差異が生じるのだが、今調査では避難時の持ちものとして「何も持たず」という回答者が3割ほど確認できる。
↑ 避難時の持ち物(複数回答)
「何も持たず」の30.2%は、「津波到達までの余裕時間の見通し」の「すぐに逃げないと間に合わないくらい早く来る」の25.3%と大体一致する。一部には「避難はするがどうせ到達はしないだろうから、何も持たなくて良い」と判断した人もいるだろうが、多くは緊急避難の必要性を感じ、何も持つ余裕すら無かったことが分かる。
一方、持ちだした荷物としては冒頭でも触れたように、「現金」「預金通帳・財布等の貴重品」「携帯電話」がほぼ横並びで4割近くずつの回答率を得ている。「何も持たず」が3割であることから逆算すると、「何かを持ちだした人の約半数は現金・預金通帳などの貴重品・携帯を、それぞれ持ちだしている」ことになる。特に印象的なのは「携帯電話」。回線さえ復旧すればさまざまな情報ツールとなりうるだけに、多くの人がその有益性を認識していたことになる。同時に、だからこそ【iLab Factory、被災地避難所に直接モバイル充電機器を提供へ】のような、携帯電話の充電用機材の支援物資は、非常に有益なものであることが改めて分かる。
次に多いのが「保険証」、そしてずっと下がって「薬」「懐中電灯・電池」などが続く。少なくとも今調査母体では「アルバムなど思い出の品」を持ちだした・持ちだせた人は皆無となっている。
避難する際にはどのような手段が用いられたのだろうか。本震発生時に出先の場合は手段も限定されるが、(これもまた場所にも左右されるものの)自宅に居た時は複数の方法が選択肢として挙げられうる。
↑ 避難時の移動手段
1/3は徒歩で、3割は自分で自動車を運転し、そして2割は自動車に乗せてもらっての移動。自分で運転するか否かを別にすれば、ほぼ半数が自動車で移動したことが分かる。足腰が弱っている人や、近場に高台がない場合には自動車での移動手段が最良の選択肢となりうるが、場所によっては混雑に巻き込まれて避難が間に合わなくなる可能性がある。咄嗟の判断は難しく、ましてや本震で揺れ、警報を聞いたあとで軽いパニックに陥っているかもしれない。日頃の訓練や準備が欠かせまい。
本文でも触れたが、「アルバムなど思い出の品」を持ちだした・持ちだせた人は今調査では皆無という結果が出ている。場合によってはこれらの品が失われ、あるいは見つけられなくなった人も少なくあるまい。アメリカでは先日発生した巨大竜巻で似たような環境に追いやられた人たちに対し、流されたり飛ばされた写真や書類の持ち主を探し出すというキャンペーンがFacebook上で展開されている(【遺失物探しとFacebook】、【該当Facebookページ「Pictures and Documents found after the April 27, 2011 Tornadoes」】)。
↑ Pictures and Documents found after the April 27, 2011 Tornadoes
日本ではFacebookの浸透度はいま一つで、ましてや高齢者へは認知度ですら低い状態のため、同じようなことをFacebookで実施しても成果は得られないだろう。しかしアイディアは活かせるはず。お金では決して買えない、手に入らない品々が、少しでも所有者に戻るような仕組みの構築を望みたいところだ。
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【東日本大地震での津波「来るかも」と「どれくらいの時間で来る」との関係】
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