津波からの避難は警報や揺れの大きさがきっかけ。でも逃げ始めるタイミングは……
2011/05/06 07:33
サーベイリサーチセンターは2011年4月28日、東日本大地震に関する宮城県沿岸部における被災地アンケートの調査結果を発表した。それによると本震発生後に避難したきっかけとしては「大津波の警報を聞いたから」とした人がもっとも多く約1/4にのぼっていることが分かった。次いで「地震の揺れ具合から津波がくると思った」「近所の人が避難するように言った」などが上位を占めている。一方で避難するタイミングとしては、本震の揺れが収まった直後の人が2割近くいるが、それ以上の人が「揺れの30分以上後」と答えている(発表リリース)。
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今調査は2011年4月15日から17日にかけて、宮城県沿岸部(8市町18避難所)(南三陸町、女川町、石巻市、多賀城市、仙台市若林区、名取市、亘理町、山元町)を対象に、避難所に避難中の20歳以上の男女に対し、質問紙を用いた調査員による個別面接調査法で行われたもので、有効回答数は451人分。
今調査母体では6割近くの人が本震後に大津波警報を認識し、3割の人が「すぐに避難しなければ」と判断している。
↑ 大津波警報への対応・判断(全員比)(再録)
判断をした3割のうち約8割に該当する24.2%(全体比)の人が、実際に避難した時のきっかけに「大津波の警報を聞いたので」と回答している。
↑ 避難のきっかけ(複数回答)
また警報を確認したか否かは不明だが、地震の揺れ具合から津波の襲来を予見した人や、近所の警告で避難を決めた人も多く、それぞれ約2割に達している。
他方、「実際に津波が来るのが見えたので」(=津波が見えてから初めて避難を決めた)、「役場や消防団の人が来て説得されたので」(=説得が無ければ避難することは無かった)など、かなり危ういパターンも少なからぬいることが分かる。特に前者は最初「津波が見えたがよもや自分のところまでは」とたかをくくっていたものの、状況の異様さに気が付き慌てて……という場合もあったものと思われる(動画共有サイトに投稿されている関連動画には、そのような事例が多数確認できる)。
それでは避難を開始したのはどのタイミングだったのか。本震からの経過時間で区分した結果が次のグラフ。
↑ 避難開始のタイミング
揺れている最中での避難開始は(移動時の転倒や周囲からの落下物などのリスクを考えると)あまり勧められたものではないが、揺れの収まった直後に避難を始めた人が2割近く確認できる。本震直後には大津波警報は発令されていないはずだから(NHKテレビでは発生直後に「念のため津波に注意して下さい」のテロップが表示されたが、大津波警報の画面が出たのは4分近く経過してからである)、警報より前に避難行動を開始した(出来た)人が2割強いる計算になる。
他方、本震発生30分以上経過してからようやく逃げ始めた人も2割近くに達している。【東日本大地震での津波「来るかも」と「どれくらいの時間で来る」との関係】でも触れているように(地域の特性にもよるのだろうが)、余裕を持っている人、あるいは津波そのものが来るとは考えておらずに身構えていたが、周囲の動向を見て、あるいは他人に急かされる形で避難を始めた人も、この「30分以上経過」の項目に含まれるに違いない。
↑ 津波到達までの余裕時間の見通し(再録)
なお気象庁のデータ(【「平成23年(2011年)東北地方太平洋沖地震」について(第14報)】)をもとに、第一波、そして最大の津波が本震発生時から何分で到着したのかをグラフ化したのが次の図。第一波は数分-数十分で到達している。
↑ 主な観測点の本震における津波観測値(2011年3月11日、気象庁発表)(本震の14時46分からの経過時間)(第一波の一部は引き波のため本震発生以前に観測)
第一波の波は大洗の1.8メートルをのぞけばいずれも0.1-0.3メートルでしかない。一方最大波は30分-数時間後に到達しているが、観測地点内でも最低高度で2.7メートル、最大高度で7.3メートル以上(相馬)が確認されている。避難のタイミングを一歩誤ると(特に第一波のようすを見て誤った判断を下すと)、取り返しのつかない事態に陥った可能性も否定できない。
「いざ」という時に適切で素早い判断を下すためには、日頃からの訓練や情報の取得が欠かせない。これは津波に限らず、さまざまな自然災害、さらには人為的な事故においても共通する、「備え」「保険」的な考え方である。くれぐれも留意し、正しい情報のもとで備えてほしいものだ。
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