【更新】夏の電力消費ピーク時の動向を知るために…2008年の経産省「節電通達」を探る

2011/05/06 07:31

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折れ線グラフの一部【東電、今夏の電力需給予想を更新発表・ピーク時で5500万kWの需要に対し供給は5200万kW】でもお伝えしているように、東日本大地震に伴う震災で発電所が損害を受けた東京電力管轄内では、現時点で2011年夏期における電力供給力は5070万kW-5200万kWと試算されており、ピーク時で300万kW-430万kWもの電力不足が懸念されている。もっともこの電力とは【電力供給の仕組みを図にしてみる】にもある通り、全体的な電力「量」ではなく、瞬間最大風速的な供給力を意味している。そのため、食事の準備や冷房、工場の稼働などで電気が多く使われる昼間の電力消費にスポットライトを当てる必要がある。それでは夏期における一日の電力需要はどのような推移を見せるのか。色々と調べていたところ、2008年の初夏に経済産業省が各種業界団体に向けて発した節電関連の通達に、良い資料を見つけることができた。今回はそれにチェックを入れてみることにする(トリガー記事:【2008年時の「節電通達」と真夏の電力消費ピーク時間帯】)。



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今件通達は、2007年に発生した新潟県中越沖地震に端を発する。この地震の影響を受けて柏崎刈羽原子力発電所が点検、さらには復旧作業のために運転を停止。この停止により2008年の夏において電力供給に「やや」不安を生じる状態となったため(それでも最大で6600万kWまでは確保できている)、電力需給のバランスが崩れないように、経済産業省では2008年7月初頭に各商工業の業界団体に対して節電への協力通達を発している(業界向けの通達のため、一般への公知リリースは無い)。

一般消費者向けではないので
経産省の報道資料には無いが
各種業界団体のサイトから
間接的に公知されており、
取得は可能な状態に。
それらの通達が一部の業界団体で、所属社員(企業)に周知するべく業界内のサイトで公知が行われており、それを介して一般でもその内容を知ることができる。例えば[日本電線工業会における「大幅な電力需要の増加が見込まれる日における節電へのご協力」]がそれだ(このような手法は特に珍しいものではなく、例えば【日本医師会における新型インフルエンザ関連情報】でも同様の措置が行われている)。

この資料によると、2008年夏期における電力需要ピーク時に備えて「昨年2007年の最大電力需要を記録した2007年8月22日(6147万kW、東京の最高気温37.0度)における1時間単位の電力需要推移グラフ」を掲載すると共に、今般では【東京電力、現在の電力使用状況グラフを公開】にもあるように3月22日にスタートした「東京電力管轄内の電力使用状況グラフ」の公開を伝えている。

↑ 資料内で確認できる、2007年8月22日(2007年の電力需要ピーク日)における一日の電力需要推移
↑ 資料内で確認できる、2007年8月22日(2007年の電力需要ピーク日)における一日の電力需要推移

↑ 公開されていたURL(現在の電力使用状況グラフのものと同じ)を基に取得した、当時の電力状況(WaybackMachineより)
↑ 公開されていたURL(現在の電力使用状況グラフのものと同じ)を基に取得した、当時の電力状況(WaybackMachineより)

↑ 東京電力の月単位最大電力需要と東京の月次平均気温(11年来の平均気温との差異)(2007年)
↑ 東京電力の月単位最大電力需要と東京の月次平均気温(11年来の平均気温との差異)(2007年)(再録)

概要的には折れ線グラフの形で【日本の電力消費(でんきの情報広場)】でも似たような図を拾うことができるが、東京電力管轄内だけのものを、しかもこのような棒グラフ(かつ、現在逐次公開されているのとほぼ同じ形)で確認できるのは珍しい。

↑ 日本の電力消費(でんきの情報広場)で確認できる、主要年における最大電力発生日での電力需要推移。ただし10電力会社の合計値によるもの
↑ 日本の電力消費(でんきの情報広場)で確認できる、主要年における最大電力発生日での電力需要推移。ただし10電力会社の合計値によるもの

【東電、計画停電は6月3日まで「原則不実施」】にもあるように、政府案では電力ピーク期間におけるピーク時間帯は「7-9月の平日10時-21時」としているが、18時-21時は企業の多くが終業しており、ピークからは外しても良い感はある(保険という意味でなら残すべきだが、この時間帯の電力消費のメインは家庭内でのエアコン利用ということになるから、【夏の節電とテレビのピークタイム】でも触れているようにテレビ周りの規制をかけた方が効果は高い気がする)。

なお同資料では業界向けということもあり、主に店舗・製造業向けではあるが、各種節電対策の手法が箇条書きで記されている。「8月22日のみ」云々というのはジンクスをあまりにも重視しがちだが(8月22日が特異日だったというより、その日が最高気温を示していたことと、お盆休み明けで暑い最中でも企業稼働率が高かったという条件が重なったと見るべき)、参考になる話が多く書かれている。一度は目を通しておくべきだろう。

ちなみに今夏の節電対策に関する業界向け資料としては[夏期の電力需給対策に関する説明会について]で確認することができる。こちらも要チェックな内容といえよう。



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