命を守るものは中途半端ではダメなのが良く分かる広告
2011/05/08 06:47
【シートベルトとエアバッグのデータ-「戦後の交通事故・負傷者・死亡者」後日談】や【一般道での後部座席のシートベルト着用率、33.1%に留まる】にもあるように、シートベルトとエアバッグの普及により、自動車事故が万一発生した場合でも、搭乗者の死亡・重症化リスクは大いに減ることとなった。しかしそれらがすべて作動しても、リスクがゼロになったわけではない。自動車業界ではさらなる安全性の確保のため、さまざまな技術を開発・提供し続けている。今回紹介するのはその新技術の一つの効用、そしてそれを搭載した新車種の優位性を示す広告。色々な教訓も示唆されている、奥深い内容のものである(【ADS of thw World】)。
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↑ 騎士の甲冑(かっちゅう)。だが、下半身部分が装備されていない
これは三菱自動車が提供している新型のコンパクト多目的自動車「ASX(エーエスエックス)」(ヨーロッパ仕様のもので、日本では【RVR】)の機能の一つ「運転席SRSニーエアバッグ」(ひざ用のエアバッグ)を紹介する広告。具体的には【三菱自動車の技術ライブラリー】に説明があるが、自動車が万一前面衝突をした際に、運転席エアバッグとともに乗員の保護効果を高めるというもの。
↑ ニーエアバッグとその仕組み
ニーエアバッグが運転手の脚部を受け止めることで姿勢を制御し、衝突時の身体全体の保護効果を高める仕組みを有している。
そこでASX搭載のニーエアバッグの重要性をアピールするため、創られたのがこの広告。通常のエアバッグでは半分しか守ったことになりません、脚部、下半身のリスクを考えれば、ニーエアバッグ(、さらには着用が前提とされているシートベルト)と合わせて使うことで、はじめて全体を守ることができるとしている(コピーとして書かれている「半分防御は防御無し。三菱の新ASXにはニーエアバッグを搭載しています」が痛いほどよく分かる)。
つまり逆説的に「中途半端な防護は実態としてあまり意味がありませんよ」ということをビジュアル化して分かりやすく表現し、ニーエアバッグの重要性をアピールしているわけだ。「半分」で鎧が無い部分を右半分や上半分では無く下半分とすることで、ニーエアバッグを装備していない状態を暗示しているあたりも芸が細かい。
「上半分だけでは効果は半減どころか無きに等しい」ことがもっとよく分かるのは、こちらのパターンかもしれない。
↑ 金庫の扉の下半分が欠けている。これでは……
甲冑ならば見た目が非常に間抜けだが、上半身の防御は何とか可能。しかし金庫の場合は下の開いた部分から中身をすべて奪われてしまい、金庫の存在意義そのものが無くなってしまう。
実は人体を守るエアバッグ・ニーエアバッグにしても、この金庫の考えに近い。例え上半身を守れても、下半身部分に大きなダメージを受けて、命を失うリスクは十分にありうる。「頭隠して尻隠さず」という言葉にあるように、中途半端な守りは守っていないのとさほど変わりが無いということだ。
同広告では他にもハリネズミの針部分、カメの甲羅部分、機動隊のシールドで似たような表現手法を用いているが、訴えかけていることに変わりは無い。「守るには、一部で無くて全体を」の願いを逆説的に表している。
やや余談になるが、甲冑やカメ、ハリネズミなら防御している部分だけは守ることができるが、二番目の金庫の場合はセキュリティ上の防御そのものの意味が無くなってしまう。全般的な防犯の考え方、あるいはインターネット上のセキュリティ対策もこの金庫のものに近い。ちょっとしたスキ間、油断していた場所から侵入されたら、それでアウトというわけだ。
「ニーエアバッグ」の重要性という点では直接膝(ニー)の部分が露出している甲冑の絵の方が分かりやすい。しかし「人の命を守れるか否か」、さらにはニーエアバッグに限らず防犯対策全体の啓蒙としては、この金庫のポスターが抜きんでて優れているように思えてならない。
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