テレビの視聴時間は若年層から中年層で減少中、高齢者はほとんど変わらず(最新)
2021/06/06 04:52
時代の変遷とともにメディアの技術進歩や多様化、さらには社会生活様式の移り変わりが生じ、それに連れてテレビ(番組)の視聴動向も大きな変化を示している。今回はNHK放送文化研究所が2021年5月21日に発表した2020年国民生活時間調査の報告書をベースに、25年にわたるテレビ視聴の時間の変化を、年齢階層別に見ていくことにする(【発表リリース:「2020年 国民生活時間調査」結果概要】)。
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じわりと減る若年・中年、高値を維持する高齢層
今調査の調査要項は先行記事【大きく減ったテレビを見る人、しかし高齢者は相変わらずほとんどの人が見ている(最新)】を参照のこと。また今件ではテレビを見ている人をテレビ行為者と呼んでいる、これは具体的には1日15分以上連続してテレビ(据置型テレビだけでなく、ワンセグによる視聴も組む。録画視聴や購入・レンタルソフトの視聴は除く)を見ている人を意味する。実質的に回答者が「テレビを見ている」と自認できる視聴をしている人のことを意味する。また、各グラフ上では時間を「時間:分」で表記する。例えば3時間54分は「3:54」となる。
テレビを見る人の割合(テレビ行為者率)は最新の調査でも8割近くに達している。
↑ テレビ行為者率(全体)(再録)
それでは視聴時間はどのように変化しているのだろうか。男女別で平日の視聴時間の変移をグラフ化したのが次の図。各年齢階層全体における平均値であり、行為者に限定したものではないことに注意。当然、非行為者の視聴時間はゼロとして平均値の算出の際にカウントされるため、行為者率が下がれば平均値も減少する傾向を示す。
↑ テレビの平均視聴時間(男性、調査年別・年齢階層別、時間:分)
↑ テレビの平均視聴時間(女性、調査年別・年齢階層別、時間:分)
男性は40代までは一律に減少、50代と60代は2010年までは横ばいでむしろ増加する動きさえ見せたが、2015年以降は値を減らしている。70歳以上は実質的に変化なし。
女性は男性より若い年齢階層の30代までが漸減で、40代以降は横ばいの動きだったが、2015年以降は40代から60代にかけて一様に減少する動きに転じている。70歳以上に関しては事実上横ばいなのは男性と同じ。これら若年層から中年層までの漸減傾向が、全体としての平日の視聴時間の減少を導いたものと考えられる。
↑ テレビの平均視聴時間(調査年別・曜日別、時間:分)
もっとも、その減少度合いは劇的なものではない。これはひとえに長時間視聴する・減少度合いが少ない高年齢層の数、全員に対する比率が増加しているからに他ならない。テレビ番組を運営する側にとって、高齢者はますます大切なお客様になっている次第である。
普通のサービスなら「高齢者が抜けてその分若年層の割合が増え総量が維持される」新陳代謝が起きるのだが、テレビの視聴に関しては「若年層が減り高齢者が増え総量が維持される」逆新陳代謝が起きていることになる。
男女で異なる土日のテレビ視聴時間の差異
テレビ視聴時間の経年変化を確認する今記事としてはやや蛇足になるが、興味深い動きが見受けられたので、合わせてチェックを入れておく。次に示すのは直近年における男女・年齢階層別の平日と日曜の、テレビ視聴時間の実態。10代は就学のため男女とも平日は短く、日曜は長い、そして男性はおおよそ就業世代では平日は日曜と比べて短く、女性はあまり差が出ないのだが。
↑ テレビの平均視聴時間(男性、曜日別・年齢階層別、時間:分)(2020年)
↑ テレビの平均視聴時間(女性、曜日別・年齢階層別、時間:分)(2020年)
女性はおおよそ20代以降は平日と日曜であまり変わりはないが、男性は定年退職をしているはずの60代以降でも差が生じている。無論、それより若い年齢階層と比べて視聴時間そのものは伸びているので、テレビに割ける時間は増えているのだが、女性と同じように平日・日曜で似たような値にはならない。
これは、公開値の限りでは細かい値の確認はできないものの、60代以降もなお何らかの形で就業している人が相当数いる結果によるものと考えられる。若年時代と比べれば時間に余裕ができたものの、それでも日曜と比べると平日は就業に時間を拘束される人が少なからずおり、その分テレビを見る機会・時間が減っているというものである。恐らくはそれほど的外れなものではないだろう。
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