テレビの視聴時間は平日3時間強・休日3時間半、お年寄りほど長い傾向(最新)
2021/06/05 04:45
テレビ(番組)の視聴はメディアの多様化とともに減退していく一方で、その手軽さを背景に高齢者からは相変わらず高い支持を集めている。その実情は年齢階層別に区分した上での平均視聴時間にも表れている。今回はNHK放送文化研究所が2021年5月21日に発表した2020年国民生活時間調査の報告書をベースに、その実態を確認していくことにする(【発表リリース:「2020年 国民生活時間調査」結果概要】)。
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今調査の調査要項は先行記事【大きく減ったテレビを見る人、しかし高齢者は相変わらずほとんどの人が見ている(最新)】を参照のこと。また今件ではテレビを見ている人をテレビ行為者と呼んでいるが、これは1日15分以上連続してテレビ(据置型テレビの他にワンセグによる視聴も組む。録画視聴や購入・レンタルソフトの視聴は除く)を見ている人を意味する。要は実質的に回答者が「テレビを見ている」と自認できるほどの視聴をしている人のことを指す。
今調査ではテレビ行為者率は2020年においても8割近くとの結果が出ている。
↑ テレビ行為者率(全体)(再録)
「それではテレビの一日あたりの視聴時間はどれくらいなのか」との疑問へのアプローチが、今記事での主題。公開値は「全回答者における平均」であり、視聴していない人(上記にもあるように2割強)も含めた平均値。視聴している人に限れば、当然値はかさ上げされることを念頭に各値を見てほしい。今件ではあくまでも「全体としての平均視聴時間」を考察対象としているので、そのあたりはあまり気にしなくてもよい。もっとも気になる人もいるであろうことから、テレビ行為者に限定した視聴時間の試算も、別の機会で行うことにする(予定)。
まずは全体的な平均時間。当然平日よりも土曜・日曜の方が長い。
↑ テレビの平均視聴時間(テレビ非視聴者も含めた全体、時間:分)(2020年)
平日の昼間は学生・生徒は授業に出ており、勤め人は会社で就業しているのでテレビを見ることはできない。しかし土曜、日曜ともなれば、視聴できる機会を得られる人は格段に増える。行為者率が上がれば、全体における平均時間が上昇するのも当然の話。
これを年齢階層別に見ると、当然ながら高齢者の方が長い傾向が確認できる。こちらもテレビ非視聴者も含めた全体の平均。
↑ テレビの平均視聴時間(男性、時間:分)(2020年)
↑ テレビの平均視聴時間(女性、時間:分)(2020年)
・男性は50代以降、特に60代以降は急激に視聴時間が長くなる(定年退職で自宅にいる時間が増える)
・男女とも高齢層、特に50代以降は長時間をテレビ視聴に費やしている
・男性は高齢層でも平日と土日に差異が生じるが、女性は60歳以上ではほとんど違いが出なくなる
興味深いのは男性の動きで、特に60代以降に視聴時間が急増している。これは定年退職(、さらには時短による再就職)で在宅時間が増え、時間を費やす娯楽としてテレビを頼る動きの結果であることが容易に想像できる。
男女の差異を確認するため、平日と日曜に関して数字を再編集し、グラフにしたのが次の図。
↑ テレビの平均視聴時間(平日、時間:分)(2020年)
↑ テレビの平均視聴時間(日曜、時間:分)(2020年)
平日は男性が会社勤めの人の比率が高いため、自然と女性の方が視聴時間が長くなる(未行為者も含めた平均値であることも影響している)。しかし退職者が多分となる70歳以降になると、男性と女性の時間はほぼ同じとなり、差はほとんど無くなる。元々会社勤めでも自宅にいる機会が多い日曜ともなれば、30代以降においては男性の方が視聴時間は長くなるという結果が出ている。
これは【お年寄りの日常生活での楽しみ、トップは「テレビ・ラジオ」だが……】などで解説しているように、年を経るに連れて男性が内向的な時間の楽しみ方に傾注するのに対し、女性は外交的な娯楽も積極的に行うことによるものと考えることができる。
テレビは「ながら視聴」の視聴スタイルに代表されるように、受け手の娯楽として楽しむ際のハードルが極めて低いメディアであることが特徴であり長所の一つ。入院などにより体の身動きが取りにくい環境下では、その特性を大いに体感できる。その点ではラジオも同じだが、多様な情報が得られる点で、テレビはラジオをはるかに凌駕する。
心身ともに色々と無理がきかなくなる高齢者ほど、手軽な娯楽としてテレビを選択して楽しむ。結果として視聴時間が長くなるのも、納得のいく結果に違いない。
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