大きく減ったテレビを見る人、しかし高齢者は相変わらずほとんどの人が見ている(最新)

2021/06/04 04:38

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2021-0524NHK放送文化研究所は2021年5月21日、2020年国民生活時間調査の報告書を発表した。それによると平日にテレビを見る人の割合は、この25年間で全体比率では12.6%ポイント減少していることが分かった。男性・女性ともに40代までの年齢階層で減少度合いが大きいが、一方60歳以上は男女ともにほぼ全員がテレビを視聴しているとの結果が出ている(【発表リリース:「2020年 国民生活時間調査」結果概要】)。


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2020年ではテレビを見ている人の割合は8割近く


今調査の直近分は住民基本台帳から層化無作為二段抽出法によって選ばれた10歳以上の日本国民7200人を対象に、2020年10月13日から18日にかけて郵送法によるプリコード方式で行われたもので、有効回答数は4247人分。過去の調査もほぼ同様に行われているが、2015年以前は配布回収法によって実施されている。

テレビ(番組)の視聴時間は国内外を問わず減少傾向にある一方、高齢者の間ではむしろ増加し、彼ら・彼女らが寄せる信頼を高める動きをも見せている(放送内容そのものが本当に信頼できるものか否かは別問題)。

今調査ではテレビを見る人の割合(テレビ行為者率、1日15分以上連続してテレビ(据置型テレビの他にワンセグによる視聴も含む。録画視聴や購入・レンタルソフトの視聴は除く)を見ている人。実質的に回答者が「テレビを見ている」と自覚できるほどの視聴をしている)を調べている。結果としては2020年では平日・休日を問わず8割近くが該当する結果が出ている。なお今件では単に「テレビを見ているか」との問いであり、その熱中度に関しては言及は無い。いわゆる「ながら視聴」でも本人が視聴していると自覚していれば該当する。

↑ テレビ行為者率(全体)
↑ テレビ行為者率(全体)

テレビが現在でも多数の人に視聴されている媒体であることに違いはない。しかしこの25年の経過の中で、少しずつだが確実に「テレビを見ない(厳密にはまったく見ない以外に、1日に15分未満しか見ない人、細切れでしか見ない人、テレビ受信器のスイッチは入っているが「見ている」との自覚が無い人も含む)」人が増加し、いわゆるテレビ離れが起きているのが分かる。しかもそれは平日・土日を問わずの動き。とりわけ2015年以降は行為者率の減少度合いが大きくなっている。

これを年齢階層別に見ると、冒頭でも触れたように年齢階層別に異なる動きが確認できる。

↑ テレビ行為者率(2020年、平日、年齢階層別・男女別)
↑ テレビ行為者率(2020年、平日、年齢階層別・男女別)

↑ テレビ行為者率(平日、男性、年齢階層別)
↑ テレビ行為者率(平日、男性、年齢階層別)

↑ テレビ行為者率(平日、女性、年齢階層別)
↑ テレビ行為者率(平日、女性、年齢階層別)

直近となる2020年ではおおよその年齢階層で、男性よりも女性の方が平日のテレビ視聴行為者率は高い(男性の方が高いのは10代と60代のみ)。自宅に居る機会が多いのがその理由だが、同時にテレビ好きの度合いも小さからぬ要因だろう。また10代は学校における話題作り、情報共有のネタとしてのテレビの立場もあるため高めの値が出ているが、20代では下がり、特に男性では半数割れの値を示している。「20代男性は半数以上が平日においてテレビを見ていない」という実情に、驚きを覚える人もいるはずだ。

経年動向を見ると、男女とも若年から中年層は漸減、高齢層は横ばいを示している。特に60歳以上の高齢者のテレビ行為者率は高い値が維持されており、男女ともに95%前後となっている。つまり20人のうち19人が「毎日15分以上連続してテレビを見ている」計算。

他方、男女とも若年層のテレビ離れは顕著な状態。2015年以降は若年から中年層までの減少の加速化が進んでおり、2020年では男性は(2015年の動きが継続する形で)10-40代、女性では10-20代で大きな減少が生じた。年齢が上の年齢階層との違いは明らかで、値の乖離が大きくなった感はある。また男性は50代、女性は30-50代が、減少する年齢階層と60代以降の高い値維持層の間に挟まれている状態で、今後どちらに属することになるのか、注目に値する。

テレビ離れは「世代」か「年齢階層」か


若者のテレビ離れ、見方を変えれば高齢層のテレビへの強い執着とも読める行動性向は、世代によるものか、それとも年齢階層によるものか、議論となることがある。世代によるものならば現在テレビを敬遠している若年層は歳を取って中年層、そして高齢層に至ってもテレビを見ないライフスタイルを継続するだろう。年齢階層によるものならば、今はテレビと距離を置く若年層も、歳を重ねるに連れて他メディアとの接触に難儀を覚えるなどの理由で、テレビをより近いものと認識していくに違いない。

今調査は1995年以降5年間隔で実施されているため、世代における経年変化の流れを一部ではあるが知ることができる。例えば2020年時点で30代の人は、2010年時点では20代、2000年時点では10代となる。当然、同じ人を追跡調査しているわけではないので、あくまでも「各時点での同一世代の代表値」でしかないが、歳を取り、年齢階層がシフトした際に、テレビ行為者率もそのままシフトしたか否かを確認できる。

↑ 直近年の各年齢階層における過去のテレビ行為者率との比較(2020年時点、10年単位、男性、平日)
↑ 直近年の各年齢階層における過去のテレビ行為者率との比較(2020年時点、10年単位、男性、平日)

↑ 直近年の各年齢階層における過去のテレビ行為者率との比較(2020年時点、10年単位、女性、平日)
↑ 直近年の各年齢階層における過去のテレビ行為者率との比較(2020年時点、10年単位、女性、平日)

例えば男性で2020年時点では50代の人は82.6%、10年前はその世代は40代だったが、その時の値は86.0%、20年前は30代だったが86.0%と読む。20代は20年前では回答のしようがないので空欄となっている。10代の10年前・20年前も同様。

それぞれの動向を見るに、男女ともに現在における50代までは歳を重ねるに連れてテレビ行為者率が減少していく。特に2020年における減少ぶりが顕著。一方で60代以降はほぼ変わらない、男性ではむしろ増加する傾向すら見られる。

また現時点における男性は40代まで、女性は20代までの世代において、大きなテレビ離れが起きている感はある。新型コロナウイルス流行による巣ごもり化という社会現象が生じている中での調査にもかかわらず、2020年で生じた大幅な減少は注目に値する動きに違いない。

現在はまだ50代までで確認できる「テレビ離れ世代」だが、今後時間の流れと共に各世代が歳を取るに連れ、さらにメディア技術の進歩やコンテンツの質の変化に伴い、少しずつ領域を拡大していく。それとともに各世代のテレビ離れの度合いも加速していくかもしれない。


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