読者をテストドライバーにするAR(拡張現実)の広告
2011/05/03 12:00
先日掲載した【シンプルなAR(拡張現実)に「ナルホド」な雑誌広告】では仕組みのシンプルさとコロンブスの卵的な発想から、賛否両論合わせて多種多様なご意見をいただくことができた。その反応多さから、「これは効果のある広告手法という証拠。クリエイター側も知っているはずだから、似たような手法が他にも色々と考えだされているのかもしれない」と考えて探してみたところ、早速自動車関連で類似手法のものを見つけることができた。今回はそれを紹介することにしよう(I Believe in Advertising)。
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↑ Mercedes Interactive Print Ad 。
これは南アフリカで展開されたメルセデス・ベンツの広告。新車種の【Mercedes Benz CL 63 AMG】のダイナミックな走りっぷりを「紙媒体」でどのようにアピールすべきか、考え出された末に導かれた結論は「読者にテストドライブをしてもらえばよい」。そして使われたのがいわゆるAR(拡張現実)の手法。
広告にはCL 63 AMGの運転席、そして高速で走っているために流れるような景色が見えるフロントガラスが描かれている。これだけでも十分高速性を感じさせるが、それだけではありきたりな広告でしかなく、「体感」が足りない。
↑ 運転席を描写した広告。ごく普通のものに見えるが……
よく見るとバックミラー部分に違和感が。そして目を凝らして見ると何かが書いてある。
↑ バックミラーには「スマートフォンをここにおいて指定されたURLをアクセスしてみてネ」との表記
そこには「400kWのパワーがどのようなものか興味あるよね? スマートフォンをここにおいて指定されたURLをアクセスしてみてネ」とある。ちなみに400kW(544PS)とは最高出力の値のこと。同社は従来同社車種と比べてエンジンサイズを小型化しつつ、出力のアップに成功したとのこと。
そこで指示通りにスマートフォンを置いて、指定のURLにアクセスすると動画が立ちあがり……
↑ スマートフォンがバックミラーに早変わり
スマートフォンがバックミラーに早変わり。そして爆音と共に、自分が乗っている自動車のあまりにもの速さに、後続車があっという間に引き離されていく姿を見ることができる。
その後いくつかの具体的なスペックと共に「テストドライブはいかがでしたか?」とのメッセージ、そして会社のロゴマークなどが表示され、スマートフォンでの動画再生は終了。全部合わせても30秒も無いものだが、後続車の引き離されっぷりに、「テストドライブ」をしている自動車の高速性を十分に疑似体験出来た自分の姿を見出せる(ちなみに動画上のURLは、現在もアクセスが可能で動画を視聴できる)。
今件はバックミラーとスマートフォンが似たような形をしていること、そしてバックミラーを見る時にはそこに視線を集中することから、読者を容易に疑似体験の世界に送りこむことに成功している。「フロントガラス全体をスマートフォンで表すのは面積的に無理だけど、バックミラーなら」という発想の転換も素晴らしい。
先日の「口パクアプリ」同様、シンプルで分かりやすいAR(拡張現実)の活用方法として、覚えておいても損は無い広告といえよう。
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