東京電力の最大電力需要時における主要発電種類別電力

2011/05/01 08:16

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グラフ先日【東京電力管轄内の最大電力需要の推移(2011年2月分反映版)】【資源エネルギー庁 統計情報・電力調査統計】内「統計表一覧」から「2-(2)月間最大電力(一般電気事業者)」のデータを抽出し、東京電力管轄内における月次の最大電力需要推移をグラフ化した。そのデータは以前【東京電力管轄内の最大電力需要の推移(追補版)】で取得した【でんきの情報広場内情報ライブラリー内・電力統計情報】のものとは違い、各電力会社(一般電気事業者)毎に、主要の発電種類別の自社発電電力・他社受電・揚水用動力の区分も掲載されていた。せっかくよい機会でもあるし、今回はその区分に従った、東京電力管轄内の最大電力需要推移をグラフ化してみることにした。要は「電気がもっとも使われた時、水力や火力などの発電所種類別で、どれくらいずつの発電された電気が使われているのか」ということだ。



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データ取得元は先のと同じ「統計表一覧」から「2-(2)月間最大電力(一般電気事業者)」。年度別に一年単位で収録されている。グラフの生成上月数の都合がよいので直近の平成22年度分、そして一年前の平成21年度分まで取得する。収録されているデータは「自社発電」が「水力」「火力」「原子力」「新エネルギー等」、そして「他社受電」と「揚水用動力」。「揚水用動力」(揚水電力のための動力用)は今件範囲では確認が出来なかったので省略する。

さて「他社受電」について。世間一般に言われている「電力会社」は電気を起こす電気事業という区分(電気事業法に定められた様式)では「一般電気事業者」という区分に該当する。そして「他社受電」とは、電源開発や公益水力のような、一般電気事業者「以外」から「一般電気事業者」が受電した電力のことを意味する(他方、一般電気事業者間での電力の融通は「電力融通」と呼んでいる)。念のため、これらの電気事業者の区分を下記に記しておく。【「電気事業」とは(経済産業省)】から抜粋したものだ。

一般電気事業
 一般(不特定多数)の需要に応じ電気を供給する事業(者)。北海道電力、東北電力、東京電力、中部電力、北陸電力、関西電力、中国電力、四国電力、九州電力、沖縄電力の10電力会社が一般電気事業者に該当する。

卸電気事業(IPP)
一般電気事業者にその一般電気事業の用に供するための電気を供給する事業であって、その事業の用に供する電気工作物が経済産業省令で定める要件(発電出力合計200万kW超など)に該当するもの。現在、電源開発、日本原子力発電が卸電気事業者。

特定電気事業
特定の供給地点(限定された区域)における需要に応じ電気を供給する事業。六本木エネルギーサービス、諏訪エネルギーサービス等が特定電気事業者に該当。
 なお[東京ガス内特集ページ]にもあるが、六本木エネルギーサービスはガスによる発電を行い、六本木ヒルズで使われるエネルギーのすべてを供給していることで知られている。

特定規模電気事業
電気の使用者の一定規模の需要であって経済産業省令で定める要件に該当するもの(契約電力50kW以上 等。以下「特定規模需要」)に応ずる電気の供給を行う事業であって、一般電気事業者がその供給区域以外の地域における特定規模需要に応じ他の一般電気事業者が維持し、及び運用する電線路を介して行うもの並びに一般電気事業者以外の者が行うもの(俗にいうPPS)。

また、各主要発電種類によっても特性がある。「原子力」、そして「新エネルギー(太陽光、風力)」は止めても動かしてもランニングコストにさほど変わりがないので、常に稼働が優先される。水力はダムに水があれば上限値まですぐに稼働できるが、調整も容易なので後回し。火力も調整が容易だがランニングコストがややかかるため、他の発電種類の動きや需要を見極めて、補完する形でコントロールを行うという具合。卸電気事業からの購入は一般電気事業にとって保険の意味もあるし、電力供給源の多様化という国策的なところもあるので、長期間契約で買い取っており、これも優先的受電区分に入る。

要は「火力」の部分が一番柔軟性が高いわけだが、同時に電力供給の割合でも一番大きな割合を示している。次のグラフは現時点で一番新しい2011年2月における東京電力管轄内での月間最大電力需要時での、主要発電種区分。火力発電によるものが過半数、水力が5%足らず、そして原発が2割強。

↑ 東京電力管轄月間最大電力(2011年2月、万kW)
↑ 東京電力管轄月間最大電力(2011年2月、万kW)

「他社受電」の部分だが、日本原電経由での「原子力」や電源開発経由の「水力」などもあるものの、大部分は容易かつ調整の効く「火力」によるものと見て問題は無い。またその「火力」の大部分は石炭によるもの。特定規模電気事業者の一部には大王製紙・王子製紙のようにバイオマス発電が盛んなところも確認できるし、上記六本木エネルギーサービスのようにガスを用いているところもあるが、少数派でしかない。

さて次に、この上記グラフ区分を昨年度・今年度分について併記したのが次のグラフ。水力発電が少数派でしかないこと、火力発電の調整で需要に対応すべく供給側が四苦八苦している様子がうかがえる。

↑ 東京電力の月間最大電力(万kW)
↑ 東京電力の月間最大電力(万kW)

特に豪暑となった去年の7月-9月は、他社受電の部分も合わせ、フルスロットル状態で稼働しているようすがうかがえよう。



やや蛇足ではあるが、「1-(1)発電所認可出力表」から東京電力分を抽出し、グラフ化しておく。これは「その出力までは出せる可能性がありますよ、出しても良いですよ」とするもの。自動車における最大速度のようなものだ。卸電気事業者の分は、他の電力会社向けのも合わせてあるので、ここでは省略しておく。

↑ 発電所認可出力(東京電力分、2011年2月、万Kw)
↑ 発電所認可出力(東京電力分、2011年2月、万Kw)

全部合わせると約6500万kW。原発をのぞいても4700万kW強。これだけを見て「何だ、全然余裕じゃないか」「卸電気事業者の分も合わせれば原発など要らないだろ」とする論調が一部で見られるが、それは「100メートル走の選手に全速力で42.195キロのフルマラソンを走れ」と命じているのと同じ位の暴論でしかないと断じておく。

水力発電はダムに溜まっている水の量で発電力が大きく変わってくる。原子力発電は一定期間毎のメンテナンスが欠かせない。火力発電所は多少はタフだが、365日24時間稼働させたままではすぐに壊れてしまう。「最大限の力で常に全力で運用しろ」という考えは、どこぞの大臣が機材の許容稼働時間以上の放水を強要させ、特殊消防車を台無しにしてしまったのと同レベルの愚行・愚論と評することができる。

また常に安定した電力を供給する、インフラとしての立場を最優先し、それを果たすためには、常に「保険」のための予備を考えておかねばならないことは言うまでも無い。



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