首都圏新築分譲マンション購入者の住宅ローン動向(2010年分データ反映版)
2011/04/29 12:00
先に【2011年3月の新設住宅戸数、前年同月比2.4%減】で国土交通省が発表した新設住宅戸数の推移を記事にした際に、以前リクルートの発表を元に、首都圏の新築分譲マンション購入契約動向を記した、首都圏住宅ローン総額動向を記した記事(2009年分)を作成していたことを思い出した。こちらもすでに最新のものが【2011年3月15日付で発表されている(リリース、PDF)】のが確認できたので、今回はこちらの記事もデータを更新しておくことにした。
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今調査は2010年1月から12月にかけて協力意向者に対し郵送法で行われたもので、対象は2010年中に首都圏(東京・神奈川・埼玉・千葉)で新築分譲マンションを購入契約した人。回答者数は4035人。
調査母体、つまり新築分譲マンションを購入した人のうちローン借入をした人3789人に対し、その借入額を尋ねたところ、最多層は3000-3500万円となった。これは2008年から変わらないが、その前後の層で比率が減少する一方、5000万円以上の層が0.9ポイント増加しており、平均域と最高域の増加という、二極化傾向が確認できる。
↑ ローン借入総額(借入者全体)
2005年以降、ローン借入の総額は増加傾向を見せ、2010年にはデータが確認できるもっとも古い年の2003年と比べて10ポイント強ほどの増加が確認できる。増加率こそ違えど、この時期における住宅ローンの負担増傾向は【年齢階層別の収入や負債の推移(2009年分データ反映版)】で提示した総務省統計局のデータでも明らかにされており(2010年分はまだ未公開)、住宅ローン借入者の負担が(金額的に)増加していることを裏付けている。
↑ ローン借入総額平均(万円)(折れ線は2003年を100%とした時の割合)
他方、自己資金(頭金)は逆に減少する傾向があったものの、最新の2010年では増加に転じている。また、頭金のうち贈与を受けられた人においては、その贈与額も増えているのが分かる。
↑ 自己資金平均額と贈与平均額(贈与は受けた人のみ)(万円)
さらにローンで購入した人は「頭金」+「ローン総額」の合計、一括購入した人はその金額を意味する「平均購入価格」だか、2001年-2005年、2006年-2009年まで横ばいの動きを示していたものの、2010年では再び増加し、この10年間で最高値を示している。
↑ 平均購入価格の推移(万円)
つまり2010年は「頭金増やして親からの贈与も積み増してローン額も増やし、高額の分譲マンションを首都圏で購入する人が増えている」という動きが推測できる。昨年までの「少々背伸びをしてでもローンを組んで、値上がりする住宅を手に入れる」傾向はほぼ継続しているものの、手持ち資金のやりくりが上手に出来た人が多少増えている感はある。
やや余談となるが。今調査では「自己資金額」の回答者は調査母体全員。一方で「ローン借入者」の数は調査母体全体数と一致しない(少ない)。つまり調査母体の中に「新築分譲マンションを全納で即金にて購入した人」がいることを示している。借入総額のデータが用意されているのは2003年以降だが、2003年度のデータは二次調査項目となっているため、2003年と2004年(2004年の1月-3月分)は比較参考値にはならないので除外。2005年以降のデータでのみ「即金購入者」を計算したのが次のグラフ。
↑ 調査母体数とローン借入者数から推測できる「即金購入者」の割合
具体的にどれくらいの額の分譲マンションを購入したかまでは分からないが、ここ数年で即金購入者は漸減傾向を見せていること、一方で少なくとも2010年でも6.1%の人は新築分譲マンションを即金で購入したことになる。
さらに推測の材料を積み重ねるために、2010年の自己資金額で、2000万円以上の区分におけるライフステージ別の比率を示したのが次の図。例えば「3000万円以上」の「シニアカップル(世帯主年齢が50歳以上の夫婦のみ世帯)」は49.4%とあるので、今回調査母体内のシニアカップの半数近くが3000万円以上の自己資金額を有していることになる。
↑ 自己資金(2000万円以上区分のみ、ライフステージ別)(それぞれのライフステージ所属人数の何%か)
多くのシニアカップルが、即金で分譲マンションを購入している様子が目に浮かぶようである。もっとも高齢になるとローンもおりにくい。この傾向は、即金で無ければ購入できない事情の結果によるものとも言えよう。
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