使う必要性を痛いほど理解できる風邪薬の広告
2011/04/05 12:10
ポスターや野外広告にはいくつかのパターンがある。アピールしたい機能を大げさに表現したり、逆にその機能が無いと生じ得る事態をオーバーに表し、瞬時に観た人を理解させるというものだ。例えば前者は【「比類無き大きさ」がひと目で分かるプロモーション】が良い例だ。今回はどちらかといえば後者に属するものだが、ひと目でその効用が理解でき、「このような状況には陥りたくないな」とばかりに該当商品へ手が伸びてしまいそうな広告である(【ADS of the World】)。
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↑ 一見普通の映画館のように見えるが、席の並びが……
これはフィリピンで展開されたPharex Carbocisteineというシロップ状の風邪薬の広告。シロップ以外に錠剤、液体状のものも存在するが、効用としては同じで、咳をはじめとした各種風邪に効き目がある、としている。
舞台は映画館。スクリーンには何も映っておらず、観客席にも人っ子一人いない。しかし良く見ると、客席の向きが微妙にずれており、ある一点を向いているのが分かる。
↑ 中心にある席は通常のポジション。周囲の椅子は皆、その中心の席を向いている
映画館内でこのような「人の向き」が生じるのはどのような場面か。皆が静かに映画へ集中している際に、何らかの大きな音を立ててしまった場面に他ならない。そしてそれは、画面右上の「Pharex Carbocisteine」という風邪薬の名前を目にするに、咳やくしゃみなどの風邪の症状によるものという連想がすぐに頭にイメージされる。
もうお分かりだろう。誰もいない場にも関わらず、椅子の向きを巧みに変えるだけで、「映画を放映中の映画館の中で、大きくクシャミや咳を出してしまい、他の観客皆から痛い視線を浴びる情景」を再現しているわけだ。そして「このような事態が起きないよう、弊社のPharex Carbocisteineを服用してせきを押さえましょう」とアピールしていることになる。
実際に映画放映中に咳をしても、このような場面のように全員が席を向けて非難の視線を向けることは(多分)無い。しかし咳をした本人の方が、それくらいに恥ずかしい、もうしわけない想いをしてしまうことは明らか。その考え方でいえば、客観的な情景そのものだけでなく、風邪を引き咳をしてしまった本人の心理描写としても良くできている。
静かにしなければならない場面での「やっかいな咳」という情景は、他にも色々と想定が出来る。今件広告でも数パターンが用意されている。
↑ オペラハウス
↑ 講習会
オペラハウスと講習会、いずれもありそうなパターンで、しかも咳をしてしまった時の情景が手に取るように頭に思い浮かぶ。風邪薬の重要性、必要性をアピールするという点では、極めて優れたアイディア、切り口といえよう。
これはやや余談になるが、このポスターのデザイン、ほぼ同じスタイルで「携帯電話のマナーモード」の啓蒙ポスターにも使える感がある。やはり「極力静かにしていなければならない場」で、携帯の着信音を鳴らしてしまった時の気恥かしさは、非常に大きなものがあるからだ。ましてや着うた・着メロがあまり他人に自慢できないような類のものだったとしたら……。想像するだけで背筋が凍るというものである。
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