見た目とのギャップを思い出し「なるほど」と思わせる広告
2011/04/03 06:57
現実の視覚的にはありえない状況だが、「もののたとえ」「特徴的要素」をオーバーにビジュアル化することで、状況を瞬時に理解させる手法が広告ではよく使われる。【食べ過ぎた時の気持ちがよみがえる広告】のように食品をふくらませて「お腹一杯」の情景を想像させたり、【「比類無き大きさ」がひと目で分かるプロモーション】のように対象商品を極大化して大きさをアピールするのが好例だ。今回紹介する広告もその類で、料理をした経験がある人なら、あるいは冷蔵庫をよく使う人なら「なるほど、確かに」と思わせてくれる広告である(【ADS of the world】)。
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↑ ぱっと見はスイカ、なのだが……
↑ よく見ると実の部分が肉になっている
これは調理用ラップフィルム(世間一般でよく使われる「サランラップ」は商品名。ただし「ウォークマン」「iPod」のように、類似他社商品までも含めた汎用的な使われ方もされる)のメーカーGLAD社がUAEで展開した広告。
見た目はごく普通の、切り分けられたスイカ。しかし良く見ると、赤い実の部分がスイカでは無く、肉の塊に代わっているのが分かる。つまりこれは、冷蔵庫の中に入っていた肉の香りが、スイカの実の部分に移ってしまったことを表している。何もせずにそのまま冷蔵庫に納めれば、そのような事態になることは容易に想像がつく。
香りは味わいに大きな影響を与えるため、「肉の香り」を多分に吸い込んだスイカは、本当に上の写真のような味わい(しかも火が通っていない生肉だ)を覚えさせることになるかもしれない。少なくともスイカ本来の美味しさは楽しめない。
そして右下には宣伝したいGLAD社のラップフィルムに「食品を本来の味のままに。新鮮さを保ちましょう(Let it taste the way it should. Keep it Fresh.)」とのキャッチコピー。逆説的に「当社のラップフィルムを使えば、このような生肉味になってしまうスイカを味わうこともないですよ」と訴えている次第。実際には100%生肉をかじるような味・香りまではしない、匂いは移らないものの、それをオーバーにビジュアル的に・ものの例えとして表現することで、ぱっと見で訴えたい主張を理解させてくれる。
今件広告には同類の複数パターンが存在する。
↑ サーモンの香りがついたショートケーキ
↑ 卵の香りがついたキュウリ
最後の「卵の香りがついたキュウリ」は「これはこれで食べてみたいかも」と思わせる出来栄えだが、いずれにせよ好ましい状況ではない。
現実には存在し得ないが、特徴を視覚化することで主張を一瞬のうちに理解させる。その手法としては分かりやすく、そして目を引く広告として評価できよう。
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