【更新】電通総研、アメリカにおけるiPadと電子書籍の利用動向に関する調査結果を発表
2011/02/04 07:21
電通総研は2011年1月28日、iPad保有者を対象にしたタブレット端末のアメリカでの利用実態に関するレポート『米国iPad利用実態調査』の発売を発表すると共に、そのごく一部をダイジェスト版として公表した。その中には電子書籍リーダーなどとしてどのように使われているかも含めた、現在におけるアメリカでのさまざまなiPadの利用状況をかいま見ることができるデータが盛り込まれている。今回はその中から特に気になる項目をいくつかかいつまんで紹介していくことにしよう([発表リリース、PDF])。
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今調査は2010年10月21日から27日にかけてインターネット経由でアメリカにて行われたもので、有効回答数は413人。調査対象はiPadを所有する20代から60代の男女。男女比は51.3対48.7、年齢階層比は20代26.6%・30代38.0%・40代16.5%・50代11.1%・60代7.7%。基本調査では「iPadを毎日1回以上利用する人が9割以上」「1日あたりの平均利用時間は83分」となっている。
まずはiPadの利用目的。iPadでも電子メールの利用は欠かせないようで、2/3がiPad経由でメールをやりとりしている。そして続くのは「ウェブの閲覧」「ソーシャルネットワークの利用」となり、パソコンやスマートフォンなど他の端末とあまり変わるところが無い。
↑ 現在のiPadの利用目的(複数回答、iPad保有者)
電子書籍関連の項目をオレンジで着色したが、書籍に比べれば新聞や雑誌は電子化されたものにおいては関心度が低く、いずれも4割近くに留まっている。むしろ「4割近くにも達している」と表現した方が良いのかもしれないが、他の項目と比べればやはり「低め」と評した方が適切といえる。
【ニュースメディアはテレビ・新聞からインターネットへ…アメリカの10年来動向】や【若年層は新聞よりもネットでニュースを…米ニュース取得事情】にもあるが、ニュースの取得ツールは新聞からデジタルメディアへ移行する動きを見せている。iPad所有者ではその傾向が顕著だと思われるが、それでは具体的には主にどのようなデジタルツールを使ってニュースを見ているのだろうか。
↑ 新聞社のデジタルニュース配信へのアクセス方法(多いもの順に2つまで)
iPadを利用しているにも関わらず、iPadを電子新聞の取得ツールとして活用している人は「さほど」多くは無い。パソコン経由の半分程度でしかない。便利さ、これまで使ってきた手法の継続という観点で見れば、納得もできるのだが(新しいデジタルツールを購入しても、あらゆる場面でそれを用いるわけではない)。また、iPadにしても携帯電話にしても、専用のアプリでは無くブラウザ経由でアクセスする人が多いのも注目に値する(注目といえば、iPad保有者という前提はあるものの「ソーシャルメディア経由でニュースを取得する」人が少なからずいるのが確認できるのも要注目)。
最後に、もっとも目に留まったデータを。これはiPad購入前後の書籍・雑誌の購入頻度の変化だが、少なくとも今調査母体においては「iPadの購入・導入で電子書籍や電子雑誌を購入するようになっても、既存の紙媒体での書籍や雑誌が『食われる』ことはない」という結果を意味している。
↑ 書籍・雑誌購読数(1か月あたり)の変化(雑誌購読数は同一誌を1か月に2号以上購読した場合も1誌)
今調査母体はiPad所有者であり、別項目の結果では電子書籍端末保有率も33.4%に達していることから、電子機器や書籍そのものに対する認知度・親睦度も高いことが想定される。そのような人たちを対象にしている、そして利用からまだ数年単位しか経過していないこと、電子書籍に対応した書籍は今だ普及半ばという前提はあるが、世間一般で不安視されている「電子書籍が広まったら既存の紙媒体のセールスが落ち込むのではないか」とする疑問に対しては「ほとんど影響は与えない」とする結果が出ている。検証事例の一つとして注目すべき結果といえよう。
今件はあくまでも概要のさらにごく一部でしかなく、その上アメリカでの話であり、日本の事情とは異なる。その前提を考慮した上でなら、電子書籍やそのツールに関する考察をする上で、有益なデータといえよう。
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