大人が認識する少年非行、トップは「いじめ」
2011/01/31 19:30
内閣府は2011年1月31日、少年非行に関する世論調査の結果を発表した。それによると「社会的に見て問題だと思う少年非行」(複数回答)について、過半数の53.0%が「いじめ」と答えていることが分かった。前回調査の2005年当時と比べると20.1ポイント増加している。今回も含めて過去4回の調査では、前回まで減少傾向にあった「いじめ」問題が、再び多くの人に認知されつつある傾向を示す結果となっている(【発表リリース】)。
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今調査は2010年11月25日から12月5日にかけて、層化2段無作為抽出法によって選ばれた20歳以上の男女3000人を対象に、調査員による個別面接聴取方式で行われたもので、有効回答数は1886人。男女比は858対1028。
具体的に「社会的に見て問題」のように思われる具体的な14項目を挙げ、その中から回答者が「この項目は社会的に見て問題だと思う少年非行」だと思うものを複数回答で選んでもらったところ、トップには「いじめ」がついた。回答者の過半数が「いじめは社会的にみて問題だと思う少年非行だ」と認識している、言い換えれば「いじめが少年非行問題としてクローズアップされている、大きな問題になっていると多くの大人たちが思っている」ことになる。
↑ 社会的にみて問題だと思う少年非行
注意してほしいのは、この回答率の大小がそのまま各問題の件数の大小を意味しないこと。あくまでも回答者が「問題だ」と認識している割合に過ぎない。回答者自身やその身内、周辺で実際に起きている場合もあれば、テレビや雑誌で騒がれているのでそのように判断した場合も多分にありうる。例えば「いじめ」の場合は件数そのものは「文部科学省の発表上は」減少しているものの(【平成21年度「児童生徒の問題行動等生徒指導上の諸問題に関する調査」の確定値及び訂正値の公表について】)、報告されない事例や、そもそも論としての「いじめ」の定義、そして各ケースの程度なども考えると、一概に「鎮静化している」とも「悪化している」とも言えないのが現状。
今回発表された最新のデータを見る限りでは、いじめ問題が大人の視点ではもっとも問題視されている少年非行ということになる。翻って、例えばかつて大きな社会問題となった「校内暴力」は2割にも満たず、実際の件数が減少しているかのような誤解を受ける。しかし上記の「児童生徒の問題行動等生徒指導上の諸問題に関する調査」を見る限り、直近4年間に限っても高校以外は漸増する傾向が確認できる。「いじめ」問題同様、大人の認識が実態以上に報道姿勢・頻度に左右されていることがうかがえる。
元リリースには今件も含め、過去4回分の計測データが収録されている。各調査時期毎に項目内容に微妙な差異があるため、一概に比較するのはやや難があるのだが、大勢を推し量るためにあえて併記したのが次のグラフ。回答項目が無いものは空欄にしてある。
↑ 社会的にみて問題だと思う少年非行(複数回答)(2010年11月における上位10項目)
1998年4月の調査は選択肢がやや少なめではあったものの、複数回答形式には違いない。また2001年11月の値と比較しても、「いじめ」の項目が今回調査ではじめて突出したわけではなく、むしろ前回の調査結果が少なかっただけの話であることが分かる。
繰り返しになるが、これはあくまでも「大人が感じている、思っている、社会的な少年非行問題」の回答率であり、「大人の認識率」。実際の問題数とは異なる。上記に具体例を示した「校内暴力」のように、数字が低いからといってその問題が鎮静化しているわけではないことにくれぐれも注意してほしい。
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